cat the ripper

□存在の必要について
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「わぁーっ本当に猫ちゃんみたいだ!」



サングラスの男の背後からもう一人ひょっこり顔を出してきた。
どうやらこの男が先程ドアの前から聞こえた声の主らしい。 
体つきや引き締まった筋肉が、スーツの上からでもよく分かる。
身長はサングラスの男よりも少し高いくらい。
黒い髪は短く、上に向かってツンツンと立っている。
片方だけ生やした顎髯が、とても印象的である。
一見、それだけを聞くと随分怖い印象なのだけど、
今のこの男に関しては、まるで違う。
新しい遊び相手に会ったような、欲しかったオモチャを目にしたような、そんな輝きに満ちた目。


けれどもそんな子供のような瞳と対照的な低い声が、なんともギャップというか。


短髪の男はサングラスの男を脇に退かしてズンズンこっちにやってくる。
割りと興奮気味に。
両手を広げてそのまま拐うつもりだろうか。

何をされるか分からない。
背中に伸びる"モノ"がビビっと立ち、警戒の体勢を取る。
それと同時にベッドに腰掛けた体も起こし、部屋の端、ベッドの端へと逃げた。


それを見たサングラスの男から渇いた笑いが聞こえた。


「おいビビってんじゃねーか」

「えぇー...」

「んな急に大男が来たら誰でもビビる」



「そんなぁ」大男が残念そうに眉を下げてしょんぼりしている。
サングラスの男の声に2歩足を引き距離を取ってくれた。自分の警戒は取らない。
大男の目が悲しそうに自分を見つめる。よっぽど残念だったのだろう。


ここで自分は初めて口を開いた。



「だれ」



声が震えた。
喉が、口のなかが乾ききっていたらしい。全然気付かなかった。
体は頭よりも正直で素直だった。
自分の質問に二人は顔を見合せ、パッと振り返る。その顔は、太陽みたいで...。
大男はニッと歯を見せ笑い、サングラスの男は口角を上げニヒルに笑う。




「《何でも屋"2bro"》、ただいま参上!ってな♪」


「ふっ、どうも。」





その言葉に自分の眼前に、まるで花が舞ったような感覚に陥った。
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