中編

□4日目
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「どっちかに飴がありまーす!
どっちだと思う?」
『…春川はどっちだと思う?』
「は?榎が聞かれたんでしょ
自分で答えなよ」

春川と食堂でお茶をしていると、王馬がいきなり握った両手を私に突き出してきた
てか、昨日のこともあって今は王馬と会いたくな…いのはいつも通りだな
ならいつも通り運試しに付き合って、帰って頂こう

『右』
「え、本当に?本当にそっちでいいの?」
『…左』
「えーそっちなの?」
「…私行くね」
『あ、春川。話し相手になってくれてありがとね』

王馬のウザさに苛立ったのか、春川は食堂を出ていってしまった
私は視線を王馬に戻す。こいつは今日も楽しげだな…

『右でいいよ右で』
「ファイナルアンサー?」
『なついっ、ファイナルアンサーファイナルアンサー』
「デデンデンデデン!デデンデンデデン!トゥルー」

まさかの効果音まで言い出すかと呆れていると
王馬は右手を俺の片手に押し付けるように乗せてくる。まるでお手をしているみたいだ
まぁ、王馬はするよりされる側の方が似合ってるけど…
それはさておき、焦らすようにゆっくり手を開く王馬。くすぐったい
急に手のひらに小さいものが当たる衝撃があった

「ちぇー、また正解かー」
『もう用は終わったっしょ
ゴン太でもからかっといで』

手のひらにある飴を包から取り出して王馬の口に突っ込んでやる
そうすると、不服そうな顔をされた

「せっかく、オレがあげた飴なのに」
『それ、舐めるとシュワシュワするやつでしょ
辛いのは大丈夫だけどシュワシュワした刺激物苦手なんだよね。炭酸とかは特に』
「えぇ!それ、人生の半分損してるよ!」

飴舐めながら喋るなんて器用だな…私には真似出来ないわー
今日の運試しはおわったんだし、もうほかの人のところに行けばいいのに私の前に立ったまま炭酸の素晴らしさを語る王馬
いや、味がダメじゃなくて刺激がダメだから気持ちだけで直せるものじゃないから

「じゃあ、慣れちゃばいいんだよ」
『えー、無理だよ』

次の瞬間、何故か目の前には王馬の顔が至近距離にあり、口を塞がれていた
離れようとする前に頭を手で固定され、手で王馬の肩を押してもビクともしなかった
虚弱体質とか言ってなかったけ!?この嘘つき…っ

「ふ、ぁ」
『ん?んんっ!』

いきなり口の中に固形物が入ってきたと思えば、案の定飴玉で…あのシュワシュワとした独特の刺激が舌にくる
口の中から出したい一心で舌で押し返すも、王馬の舌に押し返された
そして開放されたのは飴がほとんど無くなってからだった
途中で鼻で息すればいい事に気づかなかったら窒息してた…死因が飴とか笑えない

「ね、慣れた?」
『…ざけんなよ
あぁ、口にまだ刺激が残ってる気がする…』
「えー、せっかくオレのファーストキスも添えてあげたのに…そんな言い方は酷いなー」
『嘘だぁ…慣れてたじゃん
てか、ファーストキスなら舌いれるなよ
ファーストキスがディープとか嫌すぎるわ!
実際私は嫌な気分に陥ってるわ!』

口直しにお茶を飲むと少し落ち着いた
てか、私のファーストキス…こうもっと学生らしく初々しく恥じらいながらしたかった
王馬にそんなの求めても意味無いけど…
…ん?なんで、私は今ファーストキスは王馬っていう前提で考えた?
ないわーマジないわー

『は、ははっ
頭の中整理してくるわ…』
「そうだね
整理できないぐらいグチャグチャだろうけど、頑張ってね!」
『うるっせぇ!』

【4日目】
(本当になんでだ…?)

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