中編

□7日目
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たまにはあまり近寄らない場所に行こうとモノモノマシーンがある購買に来てみた
まぁ、特に目的物はないんだけど…せっかくだらやっていこうかな
コインを入れて回すと、秋色ストールが出てきた。色が可愛らしい色をしているから、誰か女子にあげようかな

「榎ちゃん、なにしてんのー?」
『ちょっとモノモノマシーンを…
って、いつからいたの?』

振り返るとだいぶ近くに顔があって驚いた。下手したら、唇が当たる近さだ
すぐさま身を引く。あからさまだったかな
王馬はニヤニヤした顔でこちらを見てくるもんだから苦笑いを返す

「なに?オレのこと意識しちゃった?
意外と初だねー」
『…普通に異性の顔が近くにあったら意識するっしょ』

王馬の言葉を気にしないように、少し距離を取る
ストールをたたみ直して購買から出ようとすると、私の前に立ちはだかるように立つ王馬に顔を顰める
何がしたいんだ…

『どうかしたの?』
「良いモノ持ってるね!」

良いモノ?私が持ってるのは可愛らしいストールのみだ
意外にもこういうのが好きなのだろうか?
期待した目で見てくる王馬に、差し出してみると嬉しそうに受け取った

「にししっ、榎ちゃん
特別にオレにつけさせてあげるから、感謝しろよな!」
『何故、上から目線?
まぁいいけど…貸してみ』

楽しそうに笑う王馬から秋色ストールを受け取り、いつもつけてる市松模様のストールを外す王馬の姿に驚く
ストールの下は襟がないんだ…鎖骨が見えて少し色気がある。てか、高校生なのに色気ってなに…
早く早く、と言ってくる王馬に仕方なく秋色ストールを巻いてやる
こんな感じでいいんだろうか?顔が童顔で可愛らしいから、意外と似合うな…ピンクも

「似合う?」
『まぁ…いいんじゃない?』
「ま!榎ちゃんと違って顔が良いからなんでも似合っちゃうんだよねー!」
『殺すぞ』
「冗談だってー
ほら、榎ちゃん後ろ向いて!」

言いながら無理やり後ろを向かされる
拒否権ないんかーい。まぁ、いつもの事だからいいけどさ
すぐに首になにかあたる感触…少し暖かい布地だ。首元を見ると、見覚えがある市松模様が目に入り次の瞬間
首を絞められた

『は…っ!?』
「もっと、警戒心もたなきゃ…
こんな風に急に首絞められちゃうよ?」
『…お、うま』

睨むように後ろに視線を向けると嬉しそうに微笑まれる
…わけわかんない、サイコかよ。まじ笑えないって

『っ、はぁ、ゲホッゲホッ』
「色気ないなー」
『ざけ…んな…』

咳き込みながらその場にしゃがみ込む
辛い…喉が…本当にわけわかんない
ゆっくり息を整えていると、後ろから腕を回されて抱きしめられた
また首を絞める気かと咄嗟に王馬の腕を掴むとうなじを舐められ、声が漏れた

「あ、今のは結構エロかったね」
『…っふざけんのも大概にしなよ
本当に笑えないから』
「笑えない…ねぇ
そうだね!笑えないことは辞めようか!」

後ろにいるから表情が良く見えないけど、声色的にいつもみたいな笑顔を浮かべているのだろう
ひとつ深呼吸をして、王馬の腕を離そうとしたら強く抱きしめられた
まだ、この冗談を続ける気かと声をかけようとしたら

「好き…」
『は?』
「なんて、嘘だよ!バーカ」
『はぁ!?』
「いやー、本当は命懸けのゲームをしようと思ってたんだけど…
オレの機嫌が良くなるアイテムを持ってるなんて
榎ちゃんは運が良いね!」

早口で言葉を紡ぐ王馬。後ろから抱きしめられてるせいで顔は見えないけど
とりあえず、今日の運試しはモノモノマシーンってことでいいのか?
いつの間にか私から離れてじゃあね!と言いながら購買部から出ていく王馬を見送る
ふ、と首元に違和感があると思えば市松模様のストールが…まぁ、貰っておいてもいい、かな?

【7日目】
(そこまで酷くはないが、首周りが赤くなっていたのは寄宿舎に戻ってから気づいた)

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