中編
□8日目
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「んあ？どうして榎が王馬のストールをつけてるんじゃ？」
『んー？貰った…から？』
「なぜ疑問形なんです！？」
AVルームで某闇金映画のDVDを観ていたら夢野と茶柱に話かけられた
とりあえず、テレビを止めて2人の方に体を向ける
『あげるとは言われてないんだよね
でも、首周りが寂しいからつけとこーと思ってさ』
本当は首周りの跡が消えなかったからつけているだけなんだけどね
結構強めの力で締めてきたんだな…もしも死んだら枕元にたってやろー
夢野と茶柱に手を振りながらAVルームから出ると丁度王馬がゲームルームに入ってきた
「あれー？榎ちゃんオレとお揃いじゃん！
急にどうしたの？そういえばオレの部屋からストールが一つ減ってたんだけど…まさかこっそり盗んだの！？
人の部屋に勝手に入って物盗むなんて榎ちゃん、最低だよ！」
『王馬じゃないんだから、そんなことしないよ』
「え…？オ、オレがそんなことすると思ってるんだ…
うわぁぁぁぁぁあああああん！酷いよぉおおおおおおおおお！
まぁ、オレの制服って実は他の人と取っ変えたやつなんだよね！だから本当はオレの制服って骸骨柄がある服なんだよ！ホントだよ！」
今日も今日とて、元気だな…
まるで昨日のことなんてなかったかのように話しかけてくる王馬に呆れる
『じゃあ、私はこれで』
「あ、待ってよ！まだ今日の運試しをしてないじゃん！」
『やっぱりやるんだ…
それで、教は何するの？』
「今日はね。宝探し」
宝探し…？ってあの宝探し？
それって運関係ないよね
「もちろん！普通の宝探しじゃないよ！
榎ちゃん専用に特別ルールにした宝探しなんだよ！」
『特別ルール？』
「そう！まぁ、そんな難しくはないよ！
探していい場所は1箇所だけってだけ」
『は？』
「ちなみに、範囲はこの学園全体だよ！」
『はぁ！？』
「さぁ、探してみてよ！ほらほら！」
『待って！まず、何が宝なの？』
「それも当てるのが榎ちゃんの仕事だろ！ほら、本気で這いつくばって探してみろよ！」
んな無茶な…ハードじゃないレベル、幻のナイトメアモードぐらい無理ゲー
ていうか最後はなんで上から目線なの？いじめ？ねぇ、これいじめ？訴えたら勝てる？
「早くしないとー
その年で死んだりなんかしたくないでしょ？」
『っ…わかったよ』
薄気味悪い顔で言われてじゃっかん引いた
いや、本当に悪魔かよ…って顔をこちらに向けないで欲しい。恐怖でしかない
あーでも1番ビビったのはスライム顔の時だな。陰ではスライム吉と呼んでるけど
初めて見た時は夢に出た。マジで
まぁ、現実逃避はこの当たりにして…どこを探そうか
『あっ』
「うわっ」
とりあえず、移動しようと足を進めようとしたら足がもつれて王馬を押し倒してしまった
危ない危ないあと少しでキスをしてしまうとこだったぜ
と1人心の中で思いつつ、王馬の上からどこうとすると手の中に違和感…
右手が王馬のスカーフの下に入ってしまってはいたけど、その拍子に何かを掴んでいたみたいだ
制服壊しちゃったかなと恐る恐る手を引くと
『…ヘアピン？』
「たはー、榎ちゃんには適わないなー」
王馬のスカーフと同じ市松模様がついたヘアピンが手の中にあった
とりあえず、あらぬ誤解をされたら面倒だからさっさと王馬の上からどく
『これが、宝探しの宝物？』
「せいかーい！
いやー、本当に運が良いね！まさかこんなに早く見つけるなんて思わなかったよ
嘘だけど！」
『はいはい、ほら、返すよ』
「ん？いらないよ」
ヘアピンを差し出すと、キョトン顔をされた
く…無駄に整った顔してるから可愛いと感じてしまうのが悔しい…
私の手からヘアピンを抜き取ると自然な流れのように私の髪につけられた
「にしし、洒落っ気がない榎ちゃんでもヘアピンつけただけでほんの少しは可愛くなったね！
ヘアピンをあげたオレのお陰なんだから感謝しろよな！」
『なんで、上から目線？
てか、あんまヘアピンなんてしないから違和感しかないんだけど…』
「また、首絞められたくなかったら大人しくヘアピンもスカーフつけときなよ
ほら！飼い主の義務でしょ？飼い犬に首輪をつけとくのはさ」
『人権を重んじて！』
一瞬、真顔になるもんだからビビった
いつもは笑顔だったり、表情がコロコロ変わるヤツのいきなりの真顔は正直怖い…
できることならいつも笑顔でいて欲しい。いや良い意味でじゃないけど
「ま、外すかは榎ちゃんの好きにしなよ！
早死したいならさ…」
『不穏な空気を出さないでよ…
外さないからさ』
「うんうん！素直なのは良い事だよ！」
よしよしと犬を撫でるように頭を撫でられた
絶対に髪はぐちゃぐちゃだ
結衣は(内心で)激怒した。必ず、かの邪智暴虐の総統を除かねばならぬと決意した。
とまぁ、某小説の見出しを心の中で唱えても意味はなさないんだけど
頭を撫でるのに飽きたらしい王馬はほかの遊び相手を探しにゲームルームから出ていった
【8日目】
(本当に嵐みたいなやつだな…)