中編

□9日目
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いきなり目の前に置かれたのは大量のシュークリームだった

『は、え?』
「今日はコレだよ!榎ちゃん!」

たまには一日部屋でゆっくりしようと思っていたら、ピッキングをして入ってきた悪の総統は楽しそうに笑った
ピッキングとか…え…
何故、この悪魔にそんなスキルを与えたんだ!今すぐ他のスキルに変更しろ!

『てか、え?何?シュークリーム?』
「そ!当たりにはあっまーいいちごクリーム!ハズレは激辛ハバネロ入りだよー!」
『…ん?つまりはこれの大半は激辛なの?』
「そうだよ!一個だけあまいやつなんだよ!」

これの後始末どうする気で作ってもらったの?
流石に捨てたりしないよね?誰を犠牲にする気なの…私が犠牲者にされたら逃げよう

「あ、安心して!
見た目とか匂いでバレないように東条ちゃんが上手いこと作ってくれたからさ!嘘だけどね!ホントだよ!」
『安心要素は一体どこ…っ!?』

ええい!儘よ!
と意気込み一つを口に入れるとイチゴの甘い香りが口に広がる
中身を見ると可愛らしいピンクのクリームが所狭しと入っていた。これがもしもハバネロだったらと考えると恐怖でしかないけど…
にしても、この食感や見た目は…いや気の所為だよね

「ちぇー、当たりかー」
『なんで悔しそうなの…
良かった。ハバネロじゃなくて』
「ハバネロ?なんのこと?」

王馬がシュークリームの山から一つ適当なものを取り口に含む
ん?当たりは一つで、その当たりは私の手元にある…

『ちょ、王馬?』
「うわっすっぱ…
ほらー榎ちゃんも食べてみなよ!」

無理矢理、食べかけのシュークリームを口に突っ込まれて恐る恐る食べてみると
口に広がったのはからさではなく…レモンのようなすっぱさだった

『すっぱい…』
「でしょ!ハバネロなんて入ってないんだよ
そんなことしたら後処理するのが大変だからね!榎ちゃんが」
『私がかよ!』

甘いイチゴの後に食べたからかすっぱさは増しているけど、これはこれで美味しい
これならまだ…まぁ、食べれなくはないけど

『…でも、食べ切るのは無理でしょ
みんなにも手伝って貰おうよ』

とりあえずシュークリームを食堂にでも運ぼうと立ち上がると腕を引かれた
腕を掴む王馬を見ると無表情でこちらを見ている

『え、なに?無表情やめてよ、怖いんだけど』
「…あのさ、オレは榎ちゃんに食べてほしいんだけど」
『なんで?』
「理由なんて榎ちゃんを虐めたからに決まってるじゃん!」
『やめて!』

嘘?嘘だよね?
にしても、少し焦った様子を見せる王馬に違和感がある
いや…でも、これも演技?

「せっかく、俺が愛を込めて作ってあげたのに…」
『王馬が作ったの?まじで?』
「嘘だよ!嘘だけどね!」
『どっち?』

でも、本当に王馬が作ったなら合点がいく
シュークリームの形や味が、確かに上手に出来てるし味も美味しいんだけど…東条が作ったにしてはお粗末な点がある
食感が特に…東条ならもっとサクッふわっとしたできにするところを、していなかったりとかね
と考えると本当に王馬が作ったのだろう…マジか、料理とかできちゃうんだ

『…王馬も手伝ってよ』
「っ!しっかたないなー!」

上機嫌になりながら一緒にシュークリームを頬張る王馬を見てなんとなく心が満たされるあたり
大分この嘘つきに絆されてるなと思った

【9日目】
(甘いもの好きの私でも当分は甘いものはいいやと感じる量でした。)

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