中編

□10日目
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今日で最終日。明日には卒業できる人は帰れるらしい
とりあえず、赤松からラブラブ度はモノクマが教えてくれるというのを今更ながら知ったので確かめに行くことにした
…そんなのあったのか。これで卒業できなかったらどうしようと心配しながらモノクマに尋ねると、表を映したモノクマパットを渡され見てみると

『…マジか』

半日はそれなりにクラスメイトと過ごしたからか、大体みんなとのラブラブ度は一緒だった
ただ1人、王馬を除いて…
他のみんなは5,6あたりで止まっている(意外にも好印象を持ってもらえていたのが気恥しい)
王馬だけは9だ。今日頑張れば王馬となら卒業できるかもしれない…問題は

『カップルが卒業できるんだよね?』
「そうだよ!ラブラブなカップルだけが卒業できます!」
『…』

詰んだ。王馬と恋人?むりむり、見向きもされない自信ある
確かに意味深な行動をされたりしたよ。でも相手は王馬だよ?ないない
てか、自分で言ってて悲しくなってきた…
ん?どうして、私はこんなにも落ち込むのだろう…卒業できないかもしれないから?いや、それだけじゃない
王馬に見向きもされない、かもしれないから?

『嘘だろ…』

なんで今このタイミングで自覚しちゃうかな…
いや、もっと前からわかってたのかも。それを気付かないようにしていた
そんな気がする
だって、相手は悪の総統様だよ?しかも超高校級がつく程の才能の持ち主
運が良いらしい…才能なんて呼べない曖昧な私なんて一時的に興味持たれてるだけあって
飽きられたら…って何重い女になってんだろ?私らしくない

『…ありがと、モノクマ』

とりあえず、頭を整理するためにも水を飲みに食堂にでも行こうと歩みを進めると、後ろから衝撃が
ここ数日で慣れてきたその衝撃に足を踏ん張り倒れないようにする
振り向くと藤色の瞳と合う

『…おはよ、王馬』
「おっはよー!榎ちゃん
今日で最終日だね!つまりラストステージだね」
『ゲームみたいな言い方だね』
「まぁ、命をかけたゲームだからね
今までは運良く大丈夫だったけど…最後の最後まで気を抜かない方がいいんじゃない?
だって、10回中1回も失敗なんてできないんだからさ!」

にししと笑いながら手にナイフをちらつかせる王馬に顔が青ざめる
離れようにも後ろから抱きしめられている為に、動くこともままならない
後ろからは愉快そうな笑い声が聞こえる。なんでこんな奴に恋をしているんだろう…

「じゃあ、早速ゲームを始めようか!」

王馬に手を引かれる。向かった先は私の研究教室だった
結局は自分では一度も入っていなかった教室
だって、幸運なんて持ってないんだから、才能なんてない…いや、運が良いのは気づいていた
昔から私は運が良かった。それが、幸せに繋がっていたかは別として

「すっげー!色んなやつがあるじゃん!」
『…最初からここで運試しすれば良かったかも
ほら、おみくじとかもあった』
「わかってないなー
手作りだからいいんじゃん!
作ってる間はオレといれて、つまらなくなかったでしょ」

自信気に笑う王馬の顔に少しときめいてしまったのは恋心を自覚したせいか…
さり気なく私の手に紙を載せてくるから見てみると、そこには大吉という文字にバッテンが書かれ小吉と書き直されていた
文字の横に「運がいいのに幸せじゃないって我儘な子にはこれがお似合いだよ」という文字と自画像だろう絵が添えてあった

『…っ、王馬、これ』
「さぁ!ラストステージだよ!」

まるで、ラスボスのように両手を広げ楽しそうに告げる王馬に呆気にとられる
手には二つのサイコロが握られていた

「最後はダイスゲームだよ!
今からオレがダイスを投げるから合わせていくつになるかを当ててね」
『…本当に運任せなゲームだね』
「当たり前だよー!
だって、榎ちゃんは超高校級の幸運なんかじゃないんだからさ!」
『は?』
「ほらほら!早く!数字を答えて!」

聞きずてならない言葉が聞こえた気がしたけど
ナイフを構え直す王馬に、今はそれどころじゃないなと口を開く

『…12』
「じゃあ、投げるよ!」

それ!という掛け声でサイコロを転がす
カツンっ、カツンっ、と音を立てながら動きを止めるサイコロは二つ共6だった

「最後まで、オレの負けかー…さすがだね!」
『…超高校級の幸運じゃないって言ったのに?』
「え?だってそうでしょ?
運は良いけど、それで幸せそうになんてしてないじゃん
強いて言うなら超高校級の幸運じゃなくて、超高校級の強運だね!」

サイコロを拾いながら言う王馬の言葉がストンと気持ちに収まった
超高校級の強運…確かにそれなら持っているかもしれない
まぁ、才能と呼べるかは別としてね

「…にしし、今の榎ちゃんブッサイクな顔してるよ」
『う、うっさい…っ』

止まらない涙を乱暴に拭うように服の袖でふくと、王馬に腕を掴まれて止められた
スカーフで優しく涙を拭ってくれる彼の手付きはなんとなくだけど王馬らしくないなと感じる程優しくて
勘違いしそうになるくらい優しくて

『王馬…』
「なに?」
『私、あんたのことが…好き』
「…」

だからつい口から出てしまったのかもしれない
言うつもりもなかった、たった二文字が

【10日目】
(王馬が何かを言う前に逃げるように教室から飛び出してしまった)

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