中編

□卒業
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結局、昨日は王馬を避け続けてしまった。そして私は恋人なんて作れていない
詰んだ。終わった。どうしよう…
部屋にいてもしょうがないし、モノクマから指示があるだろうから外に出てみるしかないか
寄宿舎の部屋から出るといつからいたのだろうか、暇そうに立つここ数日で見慣れた白い制服の彼がいた

『…王馬?』
「あ、おっそーい!オレ待ちくたびれちゃったよ!」

そういいながらため息をつく王馬に苛立ちを覚え文句を言おうとしたら、手を繋がれた
所謂、恋人繋ぎとかいう繋ぎ方で

「じゃ、行こうか」
『行くって…どこに?』
「外に決まってんじゃん!!
カップルの二人が揃ってからじゃないと出られないんだってさ
榎ちゃんが遅いせいで一番乗りだったのに一番最後になっちゃったよ!!」

口でぷんぷんとか言いながら怒るふりをする王馬…言っとくけど可愛くないからな
というか、手の繋ぎ方とか色々おかしいし、まるで私と出て行くみたいな会話もおかしい

『王馬、お前は』
「最初は組織に入れる予定だったんだ」
『は?』
「悪の組織に幸運なんてついたら箔が付くでしょ
だから部下にしようと思ったんだけど…その場合嫌でも裏の社会にはいるしかないんだよねー
でも、榎ちゃんは強運なだけで悪の組織になんかに入ってもすぐ死んじゃいそうだからさ
昨日のゲームが終わったら恋人のふりして欲しいって言おうと思ってたし、ここから無事出たら手放すつもりだったんだよね」

マシンガンのように珍しく淡々と話す王馬の言葉に目を白黒させる
まるで、手放す気はないみたいに握る手に力を込められる。痛くない程度ではあるけど逃げられない力加減で

「まぁ、まさか告白されるとは思わなかったよ!!
ムードもロマンもセンスもないなんて榎ちゃんは運以外なにも持ってない可哀想な子だったんだね!!」
『わ、悪かったな!!』
「そーんな榎ちゃんのことを好きになる物好きなんてオレぐらいだね!!
まず、ここから出たらハネムーンに行かないとだね!!どこがいい?マレーシア?グアム?」
『は?ちょ、ちょっと待って、え?今なんて…』
「…だーかーら!オレも榎ちゃんのことが好きだよー…これは、本当だから」

頬を少し染めながら言う王馬は、なんだからしくなくて…
ああ、コイツも人間らしく照れたりするんだとか、今手汗やばくないかなとか見当違いなことばかりが頭に思い浮かんで
何も返さない私を覗き込むようにしてくる王馬はやっぱりカッコよくて…ああ、頭がパンクしそうだ

『い、いつから』
「うんうん、積もる話もあるとは思うけど
それを話すのは外に出てからにしようよ
まぁ、外に出てからも一緒にいるとは言ってないけどね!嘘だけど」

言いながら私の手を引く王馬の手は痛くないけど力強くて、それがここから出ても一緒にいてくれる意味のような感じがして
私はその手を握り返して…
この言葉が嘘かもしれないとも思ったけど、私には才能がある。運なんていう才能なんて呼んでもいいのかわからない不確かなものだけど

『一緒にいてくれるのが嘘でもいいよ
でもさ、私は王馬が好きだ。一緒にいたい
だからもしも私を置いてこうとか考えてるなら覚悟してよ
私には超高校級の強運がついてるんだから
王馬がどこにいたって見つける』
「…言うようになったじゃん
まぁ、みすみす手放す気は無いからさ
そっちこそ、超高校級の悪の総統であるオレに気に入られたこと…覚悟しとかないと痛い目見るよ」

二人して強気な目で見つめあって笑う出して、外に出る為にモノクマへと向かう足を早めた


【卒業】
(繋がれた手が離さないようにとお互いに握る力が強まっているのに気づくのは少しあとの話)

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