約束

□プロローグ
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頭が痛い、ここはどこ?。…ダメだ、思い出せない
とにかく今は探さないと…何を?

−彼と約束したんです。

そうだ。約束したんだ、あの人と
あの人って誰だっけ?
とても、大切な人だった気がする
忘れちゃいけない、私の、わたしの…

『頭…痛い…』
「大丈夫っすか?」

聞き覚えのない声が頭上からした
男性の声だろうか?…頭が痛すぎて顔が上げられない、立つことさえもままならない
目の前にすっと手が差し伸べられた
何か言ってる気がしたけれど、頭に入っては来なかった
私はただただ、差し伸べられた手を縋るように掴んで

また意識を手放した


−−−−−…

『ん…』
「あ、起きたっすか」

目が覚めると、見知らぬ男性に膝枕をされていた
女性の膝枕と違い、少し固い…
私はゆっくりと状態を起こす。ここはどこかの廃墟だろうか、草がそこら中に自由に生えている

「大丈夫っすか?」
『あ、はい。いくらか楽になりました
ありがとうございます』
「どういたしまして
急に倒れたから驚いたっす」
『すみません
頭痛がして…記憶が混合していたみたいで今は大丈夫です』

まだ少しの痛みが残るけど、さっきよりはマシにはなったから倒れたりはもうしないと思う
ということも、伝えると目の前の男性は安心した顔をした

「なら、自己紹介はしとこうっす
俺の名前は天海蘭太郎っす
今のところ、どんな超高校級の才能があるのか思い出せないんっすけど…
ま、怪しいヤツじゃないんでよろしくっす」
『蘭太郎くんは怪しさはないので安心して下さい
チャラいとは思いますけど』
「それは貶してるんっすか?」
『褒めてますよ
話しやすいって意味で』

淡々と返す私に苦笑いを返す蘭太郎くん
私は正直に思ったことを言っただけなんだけどな…

「儚げ見た目と性格のギャップが著しいっすね」
『よく言われます
あ、自己紹介でしたね。黒沢迷です
超高校級の絵本作家です』
「絵本作家っすか?」
『まぁ、そう呼ばれているだけですけどね
自宅で描いた絵本を高く評価されて、先生の勧めで出版社に持ち込んだらいつの間にか受賞してました』
「充分すごいっすよ」

そう言って頭を撫でながら、褒めてくれる蘭太郎くんはまるで兄さんみたいだった
私の唯一血の繋がりがある兄。でも、違う。私の探してる大切な人は兄みたいな人ではなかったハズだ

「あ、いきなり悪かったす
妹みたいで、つい」
『同い年の方に妹と言われるのは初めてですが、嫌な気分はしないので大丈夫ですよ
蘭太郎くんには妹さんがいるんですか?』
「…まぁ、いるっすよ」

あ、これ以上は踏み込めない。そう感じた
まぁ、今日あったばかりの人に深くは話したくないのは当たり前か
私は話をそらすように立ち上がる

『…大分気分も治ってきましたし、探索して来ます』
「あ、じゃあ一緒に行くっすよ」
『大丈夫ですよ。お互いに調べたい場所が違うと言い出しにくいでしょうし
別行動の方が気楽だと思います
また、後でお会いしましょう』

蘭太郎くんに会釈をして、歩き出す。
とりあえず、他に人がいないか探してみよっかな
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