約束

□バレンタイン
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紅鮭団軸
もう、付き合ってる設定です。


『小吉くん、はい』
「何コレ?」

私の部屋のソファに座っている小吉くんに液体が入った透明な小瓶を渡すと、目を丸くしてそれを受け取ってくれた
ニヤけそうなのを我慢して隣に腰掛ける

『なんだと思う?』
「んー、紫の液体?
いや、小瓶が紫の色だから色は紫じゃないのか」
『そう、色は透明な液体だよ』
「じゃあプァンタじゃないのかー残念だよ」

振ったり、匂いを嗅いだりして予想をする小吉くん
無臭だから分からないだろうけど

『それを、飲んだら甘い物あげる』
「なになにー?もしかして、チョコだったりして?」
『秘密。それ飲んだらあげるよ
大丈夫だよ。変な薬とかじゃないから』
「そっか、変な薬じゃないんだ〜」

そう言いながら一気に飲み干す小吉くん
喉仏が動くのを見てちゃんと飲んだのだと確信する
そのまま手に持っていた小瓶が、床に転がり落ちる。小瓶と言ってもプラスチック製だから割れたり音が響くことはない
だけど

「うげぇぇぇぇええええええええええええええええええ!!」

悲鳴に近いぐらい高く、大袈裟なぐらい大きな声で小吉くんの声が響いた
私は笑いを堪えながらその姿を見る
小瓶の中身は本当に害はない。中身も小吉君が好きな炭酸水だ
でも、プァンタやサイダーのような炭酸水って甘く作られてるけど
普通の炭酸水、お酒とかを割る為に使う炭酸水って甘くなくて苦い作りになっていて
それの苦味を足したものを小瓶に入れといたのだ

「な、にこれ、オレが知ってる炭酸じゃないよぉおお!
こんなことをするなんて酷すぎるよぉおおおおおおおお!」

コレは嘘泣きであろう。大袈裟に泣く小吉くんを見て
半分はいつもイタズラをしてくる彼への意趣返しだったのだが、少し可愛そうだったかなと思った
でも、これも仕方が無いのだ
私がカバンから同じ小瓶を出すと、少し顔が引き攣った小吉くんを横目に
今度は私がそれを飲み干す

『〜〜〜〜〜っ、にっがぁ!』
「は?え、迷ちゃん?」

カバンからいくつかチョコが入った箱を取り出し適当な一つを口に含む
チョコの甘さで幾分かマシになった口で、すぐさま小吉くんの口を塞ぐと驚いた顔で珍しく固まる小吉くんに口移しでチョコを渡す

「んっ!?は…」
『ちょっと、マシになるでしょ?
ってことで!はい、ハッピーバレンタイン!』

カバンから可愛くラッピングしたチョコを今度はちゃんと手渡す
背後にいたずら大成功と書かれてるような気分なのに、彼も感ずいているであろう

「本当に、意外と大胆だよね〜迷ちゃんは」
『小吉くんにだけね
でも、私は昔から夢だったの!
いつか好きな人ができたら、若者に恋した魔女にちなんだチョコの渡し方をしたいな〜って!』
「なるほどね!その物語は知らないけどね!」

やっぱり、知らないのか…
簡単に内容を説明すると
若い男に恋をした老婆が若返りの薬を作ったけど、その薬は凄く苦いから、大好きなチョコで味を紛らわした
っていう内容があることを説明した

『落ちとかはぜひ読んでほしいから教えないけど、面白いよ
今度、読み聞かせてあげるね』
「そうだね、今度楽しみにしとくね!
でも、今はさ…」

腕を掴まれ押し倒される。頭にはクッションがあるから痛くはない
どちらかが、動けば当たるぐらい近い距離で小吉くんは悪魔みたいな笑顔でこちらを見る
流石に苦い炭酸水は怒らせたかな?

「せっかくのバレンタインっていうイベントなんだから、イチャイチャしちゃおっか?」
『疑問にしてるけど、決定事項なんでしょ』
「まぁね」

そう笑って顔を近づけられる中
チョコが溶けないといいなと頭の端で考えるも、すぐに頭の中は小吉くんでいっぱいになるあたり
まだ、小吉くんには勝てそうにないなと思うのでした


【ハッピーバレンタイン!】
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