約束

□日常編
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食堂前につくと中からは楽しそうな話し声が聞こえてくる
…大丈夫、解斗くんも言ってくれた。仲間だって言ってくれたんだから
昔とは違うんだから
ゆっくりと扉を開いて音を立てないように扉を閉める

「ねぇ、そんなに落ち込まないでよ
後で動かなくなったテレビを持ってきてあげるから」
「いりません…ボクは廃品回収じゃないので」
「にゃはははっ、キーボと小吉って仲良しこよしだねー。」

…何の話だろう?あ、ご飯のことかな?
ロボットだから飲食はできないのか

「お!黒沢来たか」
『うん…遅くなってごめんね』
「今ご飯を準備するわ
和食も洋食もあるけど、どちらがいい?」
『あ、自分でやるよ』
「…いいのよ、私はメイドだものやらせて頂戴」

少し驚いた顔をされた。私が敬語で話さなかったからかな?
もしかしたら不愉快にさせたかもと、つい解斗くんの方を見ると笑顔を返された
…これは大丈夫ってこと?

『えっと…じゃあ、お茶だけお願いしていい?
朝はあまりご飯は喉を通らなくて…』
「わかったわ。座って待っていて」

台所に向かう斬美ちゃんを見送る
椅子はほとんど埋まっていて、残念ながら小吉くんの隣は空いていなかった
すると終一くんが声をかけてくれた

「良かったら、隣どうぞ」
『ありがとう…』
「迷ちゃん!」

声がした方を見ると、小吉くんが笑顔でおいでおいでと手を振る
私は椅子に座ろうとした体制を戻して、終一くんに少し行ってくると伝えてから小吉くんに近づく
なんとなくだけど…不機嫌?
小吉くんに近づいたら腕を引かれ、足の間に座らされて後ろから抱きしめられた。まるでこの間、本を読み聞かせした時みたいな体制になる
腰周りに腕を回されてるから立ち上がれない

『小吉くん?』
「オレはもう食べ終えたからここで食べなよ!」
『え、でも』
「ほらほら、このパン美味しいよ!」
『んっ』

小吉くんのお皿に乗っていたパンを口に突っ込まれてしまう
嘔吐かないように、一口大に千切ってくれたパンをゆっくりと頬張る
朝はあまりお腹空かないんだけどな…

「男死ィ!黒沢さんが困ってるじゃないですか!」
「え?そんなことないよ、ね?」
『うん…別に小吉くんが大丈夫なら、私はここでいいけど
お腹は空いてないからパンはいらなむっ』

また口にパンを突っ込まれたからゆっくりと頬張る
斬美ちゃんが持ってきてくれたお茶を少し流し込んで、また小吉くんが口元に持ってくるパンを頬張る
それに満足したように後ろからにししと楽しそうに笑う声が聞こえる

「ところで…さっきの獄原の話はどうするんだ?
確認しに行かなくてもいいのか?」

落書き?竜馬くんの言葉に頭をかしげる
どうやら、今朝ゴン太くんが中庭の草むらの中に隠れたコンクリートに《いは うま》と文字が書かれていたらしい
いは うま…うまは馬?午?。いはってなんだろう…みんなも頭を悩ませているみたい
アンジーちゃんがゴン太くんを褒め始める。ゴン太くん曰く、小さな虫を見かけて探していたら落書きを見つけたらしい
見間違えかもしれないとも言ってたけど、もしも見つけていたならその虫はどこから来たんだろう?

「で、その虫さんを追っている最中に、そのメッセージを見つけたって訳だね
いやー、ゴン太は大活躍だね!
さすがオレが最初から頼りにしてただけあるよ!」
「…えっ、ホントに?」
「…ホントだよ
だから、オレの手下になってよ」
「わかった!なるよ!」

私はその間も小吉くんが口元に持ってくるパンを頬張った
みんなが小吉くんは嘘つきだからあまり信じるなとゴン太くんに呼びかけるも、小吉くんの嘘に騙されるゴン太くんに苦笑いが零れる
でも、小吉くんの次の言葉に空気が一気に冷えた

「そんなにチョロいと…簡単に”殺され”ちゃうよ?」

その一言で昨日の光景を思い出す
頭から血を流して倒れている蘭太郎くん
おしおきで首を絞めあげられ最後には潰された楓ちゃん
思いだしただけで、気持ちが悪くなり、小吉くんが口元に持ってくるパンを拒むように口をきつく閉じた
押し付けられたけど首を降ると諦めたのかパンを自分の口に投げ入れて食べた
みんなが話し出すけど聞いても頭に入ってこない。頭に浮かぶのは…二人の死体で…

「−−!−−ちゃん!迷ちゃんてばー!」
『っ!!
…小吉くん』

まわりを見渡すと私と小吉くんしか残っていなかった
どうやら、モノクマ達が現れてようわからへんアイテムを渡されたらしい
それをどこで使うのか探し回っているみたい
モノクマが現れた事すら気づかなかったなんて致命的だったな…気持ちを切り替えないと…
ボロボロになったネイルを見て手を握る
とりあえず、小吉くんが立つのに邪魔になっているから椅子から立ち上がる

「んじゃ、行こっか」
『…ごめん、私やりたい事があるから』
「え…もしかしたら出口が見つかるかもしれないって
みんなで力合わせようとしてるのに、それを乱すなんて…迷ちゃんは最低だね!」
『…』
「…嘘だよ!そんな悲しそうな顔しないでよ
オレが悪者みたいじゃん!」
『そんなつもりは無いよ!
でも、ごめん。少し一人にして…』

そう言うと無表情で私を見る小吉くん
負けじと見つめ返すと、あからさまなため息をつかれた

「わかったよ…
あーあ、せっかく面白くなってきたのにつまんないのー」

私に背を向けて歩き出す小吉くんを見送ったあと
意を決して、倉庫に向かった

倉庫から持ってきた。除光液でネイルをとる
独特の匂いが充満しないように、中庭の自分の研究室の前に椅子を出してせっせととっていく
ネイルってなかなかとれないんだ…
無心になりながらとっていく。やっと最後までとり終えた時だった

「やっはー!迷ー」
『…アンジーちゃん?』
「今から体育館に集合だってさー
じゃあ、ぐっばいならー」
『え?あ、アンジーちゃん!?』

走り去るアンジーちゃんに頭をかしげる
とりあえず体育館に行けばいいんだよね…?
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