小話集

□冥界の迷い人
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女「もうこんなに暗くなっちゃった…早く帰らないと」



山を越えた先にある隣の村へ買い出しに行ったら思いのほか時間がかかってしまった。



この時期は日が落ちるのが早いからと急いで村を出てしまったのが悪かった。



こんなに暗くなるなら提灯を借りたほうがよかったな。



山の中を歩いていたら霧が出てきた。



少し心配になったがこの山は道もある。



一本道だし迷うことは…



女「…あれ?」



周りをみるとさっきまでとは景色が変わっていた。



先程までは木々がたくさん立ち並んでいたのに、今は少し丈のある草が生えている草原になっていた。



一本道だったはずだから迷うことはないと思うのだがさっきの霧で道を外してしまったのか。



霧はもう晴れていて草原の向こうの方まで見える、山中ではありえない真一文字の地平線が見える。



女「こ、ここどこ?」



私は焦るというより混乱していた。



誰かに助けを求めたいが近くに家などない。



私はいつの間にか歩き始めていた。



幸か不幸か草原には道があった。



とりあえず道なりに進んで行くしか方法がない。



しばらくすると灯りのついた家が見えた。



走って近くで見るとそれは家ではなく食事屋だった。



こんな所でこんな時間に営業している事に疑問を持ったが今はそんなことよりも助けが欲しかったので戸に手をかけた。



中を覗けるくらいに戸を開けた。



店長らしき人は見当たらないが奥の座敷があるらしい部屋では複数の話し声や笑い声が聞こえる。



人はいるらしいと安心し、とりあえず中に入って声をかけた。



女「すいません…」



声が小さかったのか忙しいのか店の人は出てこない。



私は誰か来るまでここで待つことにした。
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