secret修正入ります!2

□楽しい日々を過ごす方法
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放課後、探偵団たち五人が教室の掃除をしていると、光彦が歩美の様子を気にかけた。




「歩美ちゃん?どうしたんですか?最近元気ないみたいですけど」




光彦の問い掛けに歩美は意を決したように話し始めた。





「お姉さんが消えたあっ!?」

「そうなの!よく遊んでくれるお姉さんなんだけどね、二週間前から姿が見えなくて」

「二週間も前からですか?」

「旅行にでも行ってるんじゃねーのか?」





コナンがそう言うと、歩美は首を振った。




「お姉さん結婚しててね、旦那さんと二人で住んでいるんだけど…、旦那さんが言うにはお姉さん具合が悪いって、、、」




そこまで言うと歩美の目には涙が溜まった。





「具合が悪いんでしたら家で寝ているか、何処かの病院に入院しているのではないでしょうか?」




光彦がそう言うと、歩美は声を上げて言った。




「違うの!歩美見たの!三日前旦那さんがぐったりしたお姉さんを抱えて車に乗せる所」





そこまで言うと歩美の目から涙が零れた。




「吉田さん?」

「お姉さん、殺されちゃったのかも」

「殺人ですか!」

「マジかよ!」

「歩美ちゃん、まだ断定するのは早いんじゃねーか?」

「でもっ…」

「吉田さん、大丈夫よ。江戸川君が必ず見つけてくれるわ!」

「はあ?」

「ありがとう、哀ちゃん、コナン君」

「僕たちも協力します!」

「歩美の頼みだもんな!」

「俺はちょっと」

「協力するわよね!」




灰原の睨みにコナンは怯んだ。




「わーったよ」





_
_


「ここだよ」

「でっかい家だなぁ」

「ええ、お金持ちなんですかね?」




一度家に帰り、自転車に乗って歩美の案内で探偵団は一軒の家の前にやって来た。




「旦那さんはバイオリンの演奏者なの」

「成程。バイオリンに似合う庭だこと」




コナンはポケットに手を突っ込みながら辺りを観察した。




「(これといって変わった様子はねーな)」




コナンが家の周りを観察していると、遠くから見慣れた人物が向かって来た。




「あ、名前だ」

「本当だーっ!名前ちゃむぐっ」




歩美が名前を呼ぼうと声を上げた時、コナンが歩美の口を手で塞いだ。




「コナン!何してんだよ!」

「そうですよ!女の子にそんなこと!」

「しゃーねーだろ!こうでもしないとこの家の人に気付かれちまうだろうが!」

「あ、そうでした」

「すっかり忘れてたぜ」

「わりーな歩美ちゃん」

「ううん、歩美こそごめんなさい」




コナンは灰原に服を引っ張られ三人から少し遠ざかった。




「な、何だよ」

「今度あんな真似したら殴るから」

「何でだよ」







二人がこそこそ話している内にスーパーの袋を持った名前が合流した。




『皆で何をしているのですか?』

「あのね」




歩美は名前に事の詳細を話した。




『そうなのですか』

「名前ちゃんにも協力してほしいの!名前ちゃんがいると心強いもん!駄目かなぁ?」

『いいですよ。昴さんに遅くなるって連絡しますね』

「よかったぁ」

「それで?何か策はあるのかしら?」




灰原は腕を組みコナンを見た。




「チャイム鳴らして、奥さんがいれば解散だ」

「えー!それだけですか?」

「それだけって、後何があればいいんだよ!」




コナンはブーイングする歩美、光彦、元太を無視してチャイムを鳴らした。





「はい…えーと、君たちは?」




中から出て来たのは三十代くらいの男一人。




「僕、江戸川コナン。お兄さんはこの家の旦那さん?」

「そうだよ」

「奥さんはっ!…居ないんですか?」

「君は…確か歩美ちゃん?」




歩美が聞くと、男はしゃがんで歩美の頭を撫でた。



『江戸川さん、あれ』

「あれは!」




名前はコナンに耳打ちした。





「お姉さん…、病気なんですか?」

「具合は悪いけど病気じゃないよ。だから安心して帰りな、ね?」

「でもっ」

「歩美ちゃん、帰ろう」

「コナン君」

「お兄さんさようなら」





コナンは歩美の手を引っ張り無理やり歩かせた。





「ああ、さようなら。気を付けて帰るんだよ」

「はーい。……オメーら行くぞ!」

「おいっ!コナン!」

「待って下さーい」




ただ事ではない様子のコナンを追いかけ、近くの公園までやって来た。





「おい、待てよコナン!」

「どうしたのコナン君?」

「……廊下に血を拭きとった痕があった」

「うそーっ!」

「どういうことですかコナン君!」

「やっぱり事件かよ!」

「いや、それはまだ分からない」

「奥さんが転んで頭を打ったりしたんじゃないの?言ってたじゃない、具合が悪いって」

「いや、あれはつい最近のものだ。それにガレージにも転々と血が付いていた」

「だったら怪我した奥さんを病院に連れて行っても可笑しくないわよ?」

「歩美ちゃん言ってたよなあ?二週間前から奥さんの姿が見えなくなったって」

「うん」

「そして三日前に旦那さんがぐったりした奥さんを車に乗せようとしている所を見た」

「そうだよ、だから歩美旦那さんが奥さんを殺して埋めに行こうとしてるのかなって」

「二週間前から姿が見えなかったってことは、恐らく奥さんは旦那さんに家の何処かに監禁させられていたんだ」

「監禁!」

「でもどうして?」

「さーな。夫婦の間に何かあったんだろう」

「さっきの様子からして、吉田さんはあの旦那さんとは余り親しくないみたいだったけど」

「うん、旦那さんは仕事で長期出張が多いんだって。だから歩美、旦那さんとは二回位しか会ったことがないの」

「探しに行きましょう!」

「どうやって?」




元太に聞かれ光彦は肩を落とした。




するとそこへ、一台の車が猛スピードで横を通り過ぎて行った。




「危ねーな」

「あの家に入りましたよ」





急いで家に戻り、塀からこっそりと中の様子を窺った。





「奥さんは?大丈夫なの?」

「ああ、今は山の中に居るよ」

「そう」





女と男は少し話した後、家の中へと消えていった。





「奥さん殺して不倫ですかね?」

「それはどうか知らねーが」

「言いましたよね?山の中って」

「言ったな」

「お姉さん…」

「吉田さん」




歩美は灰原に抱きしめられ涙を流した。









_
_

あれから10分程して二人は出て来た。




二人で車に乗り込むとそのまま路上へと出て行った。




「追うぞ!歩美ちゃんは光彦の後ろ、名前は歩美ちゃんの自転車に乗ってくれ!灰原は警察に電話だ!」

『はい』

「分かった」






住宅街を抜け、幾度もの曲がりくねった道を進み、坂を上った所にある大きな建物の前で車が止まった。





コナンは自転車をこぎながらベルトからサッカーボールを出し、車から降りようとした男目掛けて力一杯蹴った。




「喰らえっ!」





見事にボールを顔面で受け止めた男はその場にぶっ倒れた。




「兄さんっ!」

「大丈夫ですか?」

「あなたしっかりして!」

「(兄さん?あなた?)」




建物の中から白衣の男と一人の女性が出て来て倒れた男に駆け寄った。





「お姉さん!」

「歩美ちゃん!?」

「え、え?…えええーっ!」





コナンは女性に駆け寄る歩美を見て、ゆっくりと建物を見上げた。





「山の中って…マジかよ」










_
_


「「「「「「ごめんなさい」」」」」」




奥さんの病室でコナンを筆頭にそれぞれが頭を下げていた。




「もういいよ。君たちには心配かけちゃったね。まあ、君のキック力は中々だったよ」

「あはは、ごめんなさい」




歩美はベッドに座る奥さんに尋ねた。




「お姉さん、どうして本当のこと言ってくれなかったの?お姉さん病気なんでしょ?血がいっぱいあったよ」

「あの血を見たのか」

「ねえ、お姉さん、歩美のこと嫌いになっちゃったの?」

「違うわ!歩美ちゃんのこと大好きよ」

「だったら、本当のこと吉田さんに言ったらどうなの?」




灰原が奥さんの目を見て言った。




『何か訳があるのですね?』




その言葉に旦那さんと奥さんはお互い目を合わせ頷いた。




「実はね、子供が出来たの」

「本当!おめでとう!」

「ありがとう」

「起きてて大丈夫なの?」

「ええ、今は安定してるから」

「でも、おめでたい事なのにどうして隠したりしたの?」




コナンがそう言うと、奥さんはお腹をさすって話し出した。




「実を言うとね、この子は二人目なの…もう一人いたんだけどね…駄目だった」




奥さんは静かに涙を流した。





「だから僕達この子が出来た時に決めたんだ。ちゃんと生まれてから皆に報告しようって。それがまさかこんな事になるなんてな」




旦那さんが奥さんのお腹をさすった。




「あの血痕はな、陣痛が酷くなった彼女を病院に運んだ時のなんだ」

「じゃあ、歩美ちゃんが見たのは」

「旦那さんが必死にお姉さんを病院に連れて行こうとしてた時だったんだ…」




歩美の目に涙が浮かんだ。




「ごめんなさい!歩美、旦那さんがお姉さんを殺しちゃったんじゃないかって…酷い事…そんなことないのに…絶対ないって思ってたけど…歩美…お姉さんのこと大好きだから、、、悲しくて、、だから」




嫌いにならないで、と、歩美は灰原にしがみ付いた。




「歩美ちゃん」

「吉田さん」




目からボロボロと涙を零す歩美を灰原は優しく抱きしめた。





『歩美ちゃんは悪くないんです。歩美ちゃんは奥さんのことが大好きで、心配で、ただ助けたかっただけなんです。

考えたくもない事でしたけど、もしも本当に奥さんが殺されていて、埋められでもしていたら、一人で寂しいんじゃないかって、

それはあまりにも悲しすぎることだからって、歩美ちゃんはただ奥さんを見つけてあげたくて…

だから旦那さんの後を付けてここまで来たんです!』





歩美は灰原の腕にギュッとしがみ付いた。





『歩美ちゃんは本当に優しい子なんです。だから、…だから、…歩美ちゃんを嫌いにならないで下さい』





名前は頭を下げた。




「「「「お願いします」」」」




続くように歩美以外の四人も頭を下げた。




「馬鹿ねえ。そんなことで嫌いになるわけないでしょう?」

「…っ、お姉さん」

「歩美ちゃんは優しい子だって、これでも私は十分知ってるつもりだけど?」

「っ、お姉さんっ!」




歩美は奥さんに抱き付いた。




「歩美ちゃん、お腹さすってごらん?」

「え、いいの?」

「ふふふ、どうぞ」




歩美はそっと撫でた。




「うわー、動いた!」

「歩美ちゃんにこんにちはって言ってるのよ」

「歩美に?」

「ええ。だからこの子が産まれたら家に会いに来てくれる?」

「…いいの?」

「もちろんよ!」

「…でも歩美…」




俯く歩美に奥さんは頭を撫でながら言った。




「歩美ちゃんはこの子のお姉ちゃんでしょ?」

「っ、、!」




名前はコナンに指で扉を指した。




その意図が分かったコナンと灰原、旦那さんは元太、光彦を連れてそっと病室から出て行った。




それに気付かず涙を流しながら奥さんに抱きつく歩美に、コナンは後ろ手で扉を閉めながら密かに微笑んだ。



20170803
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