secret修正入ります!2

□迷宮なしの名探偵、ジッチャンの名にかけて!
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- PM3:10 -



安室はふらふらとした足取りでカウンター、テーブル、レジを行き来していた。




諸伏が速水玲香を知っていた事になのか、アイドルオタク化した彼を想像してしまった後遺症なのか定かではないが、とにかく安室は疲れ切っていた。




『おにーさん?忙しそうだから手伝うよ』

「本当か!?」

『あ、ああ、うん』

「助かった!あー女神だ」

『じゃ、レジやるね』

「え、」





見て分かるくらいに疲れ切った安室を心配して声を掛けた名前に、溜まった疲労のせいで変なテンションで答えてしまった。





そんな安室に名前は目を合わせることなく、さっさとレジへと行ってしまった。




その事に安室は酷く後悔し、諸伏を恨んだ。







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-PM4:00-




無事ティータイムをやり過ごし、再び店内は名前達と安室だけになった。




『疲れたー!』

「これもいい経験だな」

『おじさんは何もしてなかったよねー』

「俺が接客なんてするわけないだろ」

『それもそうだね。その顔じゃ』

「何か言ったか?」

『うーうーふぁひほー』




剣持は名前の頬を引っ張った。




「名前さん、お疲れ様」




オレンジジュースを持ってやって来た安室はふざけ合う二人を見て、忙しくなる一時間前のことが酷く昔の出来事のように感じた。




「本当に仲が良いですよね」

『「良くない!」』

「でもとても息ぴったりですよ?」

『仲は良くないけど、何て言うの?つーかーの仲?』

「自分でも不思議なんだが否定できん」

『おにーさんは?いないの?』




そういう人、と言う名前の質問に安室はふと考えた。




「……居るよ」

『どんな人?』

「さあ、どんな人だろうね」




安室は最後の客がいたテーブルから食器を片づけた。




『教えてよー』

「んー、秘密」

『ケチー』




安室は食器を洗いながらこう言った。




「人間誰でも1つ位秘密があった方が魅力的だとは思わないかい?」

「そうか?」

「ええ、特に女性は秘密で美しくなるそうですから」





安室の脳裏に唇に人差し指を当てながらそう囁く女の姿が浮かんだ。





『でも気になるなー。安室さんのお友達』

「そんなに?」

『うん、アイドルオタク?』

「違うよ!」




いつまでもそのネタを引っ張る名前に苦笑いを浮かべた。





「じゃ、真面目なエリートマンだな」

『それか、教師』

「医者」

『パイロット』

「坊主」

『庭師』

「庭師はねーだろう」

『そうかな?』

「(ははは)」

『やっぱり隠れオタク居るでしょ?』

「いない!」




二人の前ではそう答えたが、後になって安室は少々不安になった。







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-PM5:15-




空が赤く染まっていく。




ここまできたら夕飯も食べてしまおうという事になったのだ。




名前は本日最後の注文を安室に頼み、萩原にメールを送った。




剣持は名前の向かいで事件の書類を整理していた。




『それ、高遠の事件?』

「ああ、脱獄前のやつだ」




名前の目の前でひらひらと一枚の紙をちらつかせた。




『ちょっと見せて!』

「あ、おい!」




そこには高遠の起こした殺人事件の詳細と被害者の名前等々が記されている。




『高遠ってさ、自分では手を下さないんだよね』

「ああ、奴は人を操るのが得意だからな。今まで奴が関わった事件の犯人は全員奴に操られていたな」




名前はテーブルに頬杖をついて考えた。




「それがどうした?」

『いや、今さ、萩原さんからメールで高遠についての情報が送られてきてさ、米花駅前で目撃情報があったんだって』




名前は剣持に萩原からのメールを見せた。





「米花駅?ここから近いじゃないか」

『だからさ、食べたら行ってみようかと思うんだ』

「一人でか?」




剣持は怪訝そうな表情で聞いた。





『おじさんも行く?』

「悪いが俺はこの後署に行かなければならなくなってな。お前一人で行ってくれ」




丁度そこに計ったかのように安室が出来たての食事を運んできた。




「もしよろしければ僕が一緒に行きましょうか?」

『…一人で行けます』

「ですが、女性の一人歩きは危険ですよ」




特に夜で歩くのはと、テーブルに置きながら続ける。




「それに万が一高遠にでも遭遇してしまったらどうするのですか?男の僕が一緒の方が安全ですよ」









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名前と安室は米花駅をゆっくり見回しながら歩いていた。




”お前一人よりは安心だな”と言う剣持の言葉と、安室の”僕これでもボクシングが趣味なんです”の言葉に名前は渋々頷くしかなかったのだ。




『勝手に店仕舞いして良かったんですか?』

「大丈夫だよ。これでもマスターから信頼されているから」

『そうじゃなくて』

「携帯鳴ってるよ」




名前が携帯の画面を見ると、萩原からの着信だった。




『はい?』

「”名前ちゃん、今何処?”」

『米花駅ですけど』

「”やっぱり!危険だから行っちゃ駄目って言ったじゃん!”」




萩原の後ろの方で松田や伊達の、やっぱりか、行くと思ったと言う会話が聞こえる。




『大丈夫ですよ、一人じゃないんで』

「”剣持警部?”」

『いーえ、違います。喫茶探偵です』

「”は?”」

『それじゃ』






名前は萩原を無視して一方的に電話を切った。







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「え?嘘、、切られたんですけど」

「お前がしつこいからだろ?そのうち嫌われても知らねーからな」




松田は腕を組み、萩原を横目で見た。




「あの子なら大丈夫だろ」




伊達は萩原の肩に手を置き慰めた。




「名前ちゃん、喫茶探偵と一緒だって」

「誰だそいつ」




松田が伊達に聞いた。




「そーいやあ、高木に聞いたことあるな。確か毛利探偵事務所の下にある喫茶ポアロの従業員らしい」

「喫茶探偵ねえ」




松田は咥えた煙草にライターを当てながら言った。




「はっ、そんな胡散臭い奴に名前ちゃんを任せられっか!お前ら行くぞ!」

「おい!萩原っ!……ったく」




松田はやれやれと、机から車のキーを引っ掴んだ。





「こりゃ行くしかねーな」




伊達は萩原と松田、自分の分の書類をまとめて上司の机に提出し二人を追いかけた。


20171008
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