ナイルの雫

□第4章
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「これは義母上、この度はおめでとうございます。
 産後の肥立ちもよろしいようで安心いたしました」

「まぁ…ほほほ。
 本当はこの子、あなたのお腹に宿ればよかったのですけれど…。
 娘が嫁ぐような年になってからなんて、恥ずかしいわ」

「そんな、とんでもない。
 親子とはいえ私達は義理の親子。
 義母上はまだお若うございますよ」


二人の女(?)がヒッタイト帝国の都、ハットゥシャにある皇城の後宮の庭でにこやかに話している。


一人は、茶色の柔らかく豊かな髪に神秘的な光を宿す紫の目の、年の頃は二十歳くらいの女(?)。

しなやかな白い亜麻布のチュニックに、華やかな襟飾り。
頭上には、エジプトの貴人の証である鷲の頭飾りを戴いている。
目元には、緑色の濃いアイシャドウ。

言わずと知れた、エジプト王妃アイリその人である。


対するもう一人の女は、年の頃は30を少し過ぎたくらい。
しかし、赤子を抱くその白い腕はまだ瑞々しさを失っていない。

その白い肌によく映える黒髪の上では、繊細な造りのタワナアンナ冠が輝いている。

そんな彼女の名は、シェンナ。
ヒッタイト帝国のタワナアンナ、つまり皇妃である。
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