ナイルの雫
□第3章
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「今年もこれで一安心だ。
もし氾濫しなかったらどうしようって思うと胃が痛くてさ」
ジェセルはそう言って笑った。
「神経細いなおまえ」
アイリも笑った。
ちなみに、二人が結婚してから今日で3ヶ月である。
といっても諸事情により男同士の結婚のため何もないが。
だが、3ヶ月も共に暮らしているとだんだんとお互いのことがよく分かってくる。
例えば、ジェセルは朝が弱いということとか、アイリは何だかんだいって面倒見のいい奴だということとか。
「なぁジェセル」
どれくらい、外の景色を見ていただろうか。
ジェセルは、アイリの声に、視線を彼へ戻した。
「何?」
「あー……えっと、その……だな」
アイリは視線を泳がせた。
アイリは、視線を泳がせたまま自身の長い髪をかきあげた。
「いや、ごめん。何でもねぇ。
……早く支度しねーと朝議に遅れるぞ」
いつものアイリらしくもなく、何だか歯切れが悪い。
そんな彼の様子が気にはなったが、
早く支度をしないと朝議に遅れることも事実なので、
ジェセルは朝の支度をすることにした。
朝議に遅れでもしたら、絶対セヌウにどやされる。
普段穏やかな人に限って、キレたら怖いのだ。