Book ブック 本(短編)

□VS人工知能
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「お前ら〜、全員このバスに乗ってるか〜?」

クラスの担任、設楽統はバスの中で出席確認をしていた。

「全員このバスにいま〜す!」

クラスの学級委員の桜井玲香が全員いる事を確認し設楽に報告する。
バスの運転手はそれを合図に車体を動かした。

「にしても、日村先生の知り合いが世に名だ高い“田中知念“とはね…俺知らなかったよ」

田中知念…世界で人工知能と言うすんごい物を作った偉い科学者で、性格は温厚、幼い頃から《人の為に役立てる物を作りたい》を信条に勉学を努力してきたらしい(日村先生曰く)。

「いやね、俺もTV観た時には驚いたよ…家に帰って気分でニュース点けたらいきなり【若き日本のエース 田中知念に迫る】って見出しが出てきてさ〜」

バスの後ろでは先生達が盛り上がっていた。

「にしても、副担の日村先生の知り合いが今有名な田中知念さんだなんてね〜」

俺のバスの隣の席には伊藤かりんが座っていた。

伊藤かりんは俺の幼馴染みで小さい頃からの付き合いだ。恋愛的な意味じゃない。昔ながらの縁…みたいな?

「高橋くんは人工知能とかに興味ってあるの?」

俺の前の座席から一人の女の子が顔をひょこ。と顔を覗かせる。

彼女の名前は寺田蘭世。俺が小学校高学年からの幼馴染みで、高校でも同じクラスになれた。かりんとは仲良くやってはいるが俺絡みになると何故かよく喧嘩しだす。そんな仲だ。

『興味あるかないかで聞かれるとないかな…人工知能が人間にとってどれだけのキブアンドテイクするか分からないし』

「へぇ〜大海が機械に興味持たないだなんて珍しいね」

かりんが食い気味に反応した。

『大した理由(わけ)もないけど、なんでか小さい頃から人工知能に関してはあまり良い捉え方ができないんだ』

小さい頃は親父の影響でよくガンダムとかマジンガーZとか古い漫画とかを読んでたからだろう、人工知能=人間の敵。そう言った捉え方しか頭に執着しなくなった。

『人工知能を発明した人は凄いと思うよ…けど、発明することだけに没頭し過ぎて対策を練れてないってのがオチだろ』

「それは漫画の読みすぎだと思うよ…」

蘭世が少し控え目にツッコム。

『そうかも…しれない』

俺の頭には《人工知能の暴走》その言葉が脳内を永遠と巡り回っていた。

『(ま…俺の妄想だろうな)』

そう納得させて、俺は突然襲い掛かってきた睡魔に敗れて眠りに堕ちた。



「ーきて、起きて大海」

俺は体を揺さぶられ、目を覚ますとバスは停まっていて生徒達が外に出ていく姿があった。

「もう着いたよ」

かりんの上目遣いに一瞬ドキッと心臓が跳ね上がったのを覚えたが、冷静さを装ってすぐに外にでた。

『ここが人工知能を発明した研究所か…』

白を素体とした頑丈な建物が目の前に聳え建っていた。

「凄い大きい建物…」

あまりにも大きすぎるスケールに生徒達は口を開けて呆然と立ちすくんでいた。

「さすが人工知能を収めてるだけはあるな」

設楽は建物に呆気をとられていると建物から人が出てきた。

『日村先生、あの人じゃないですか?』

俺が指さす方向に一人の男性が歩み寄ってきた。

「皆さん、お待ちしていました。私、田中知念、と言います。よろしく」

「かっこいい…」

「日村先生より素敵…」

「おい、今俺の事バカにした奴は誰だ?名乗りでなきゃ後で特別講習だぞ!」

生徒達は日村のツッコミで笑う。

「私は田中さんより大海の方が素敵だと思うけどね…」

「かりんさん?なに然り気無く呟いておらっしゃるんですか?この寺田蘭世が黙っていませんよ?」

かりんと蘭世が俺の目の前で激しく火花を散らす。

『ほら、かりんに蘭世。他の皆は先に行ってるよ?置いてかれる前に着いていかないと…って聞いてる?』

まったく話を聞いてくれない。馬の耳に念仏だったかな?
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