政府の狐始めるってさ

□ろくじゅーいちわ
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「クシュンッ……」


小さくくしゃみをすれば私の周り……。特に頭上からの無言の重圧という名の視線が一等深く突き刺さることとなった私、遥陽ですが…

こんなことになった原因は遡ること数十分前ーー…


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無事あの狭間から生還出来た私は薬研だけに留まらず急遽駆けつけてくれたミカちゃんとたけっちの二神からも説教を受けた後、再び薬研のお膝の上で寝かされていたんです。

今度こそ、大人しく。間違っても術の使用なんかしない様に…とそれはもう、これ以上無いんじゃないかってくらい念入りに釘を刺された上で…。



とはいえ、私は相変わらず蚊帳の外…。いや、単純に頭上で交わされている皆の会話についていけていれば何の問題もなかったんですけどね…?


既に皆様もご存知かと思いますが、聞いていても何のこと言っているのかすら解んないような話を延々と聞いていられる程殊勝な性格は持ち合わせて無いんですよ、私…。


つまり絶賛暇を持て余している最中なんです!(`・ω・´)キリ


既に一度死んで再生してから一時間以上経っているせいか、あの死後硬直からくる筋肉痛で動けないといった様なこともなく…。強いて言えば先程内側で暴れまくっていた力を何とかするついでに皆の怪我を治して此処に来た時よりもさらに霊力が枯渇しているくらいか…。
でもこれに関しては私の身体は既にその症状に慣れ始めた…否、たぶん麻痺しただけなんだろうけど…。昔程、完全に動けなくなる…ってことは無いんですよね、何故か…。まぁ、悪化している訳じゃないから大して気にも止めませんが…←


そんなこんなで何か面白いことはないかと、取り敢えず視線だけ移せば開け放しなままであった障子が見えた。

(あぁー…、暇。たいくつ…)

どんなに心の内で言葉を並べてみても、それは絶対に口にしちゃいけない奴だと今までの経験から心得てるものの、心の内で愚痴を零すくらい大目に見て欲しい。というのもここに来た時とは打って変わって、晴天を見せる空が何とも憎たらしく思えるからだ。

これが曇天や雨天であれば、まだ室内で遊べる様なことを考えただろう。だが実際はどうだ…。雲ひとつ残さず消え去ってしまい、部屋に籠っていることが勿体無く感じるくらいの秋晴れを見せているではないか。

このまま外を見つめていてもストレスが溜まりそうなので今度は室内…。余りそちらを気にすることは無かったものの、ここへきてやっとこの本丸にいた男士が並ぶ方を見る。まじまじと見つめても悪いだろうから盗み見る様な形とはなってしまったが、見知った顔の方が少ないとは一体どういったことなんだろうか…。


そんなことを思いつつ視界の端で何かが動いたことに気がつき、やはりこれまた視線だけそちらに移せば……。




(何だあれ…。カメ……?)


現世で仕事の関係上、偶に川で流れていたそいつらを見たことはあったが何故ここに…?

色がとてつもなく怪しい気がしなくもないが、誰かのペットなのだろうか等と興味を惹かれたそいつに暇を持て余した私の視線が釘付けとなったのはこの際言うまでもないだろう…。



一人…ってか一匹?で勝手に部屋を出て行ってしまったその子に誰も気がついた素振りもなく、視線だけで私も追っていった筈だったんだけど…。



私の近くで大人しく座っていた二神が話していた声が聞こえてそちらを見れば、瞳を輝かせた彼らと視線があった。…うん、物珍しさが優ったのは私だけじゃなかったんですね。わかります←


そのまま彼らを見上げたまま、口パクで“私も!”とダメもとで伝えてみれば……。



「あ゛?!おい、お前らッ…!!」



私の左右を抱えて走る二神の楽しげな笑い声と後ろから聞こえてきた薬研の怒鳴り声から一瞬にしてあの場から抜け出せたことを知る。これぞ神業…。ふわりと身体が浮いた感覚があったと思えば、次の瞬間には今の状態だ。思考どころか目でさえ追いつけなかった。


「さっきの、亀って言うんだよね…!?」

「ぼく、はじめて見た…!」

既に薬研達といた広間から遠ざかった辺りで一度縁側に座らされた私は先程見かけたあの子を思い出してはキャッキャとはしゃぐ二神に癒されております。



「うーん。亀って干上がっていいもんだったっけ…?」


飼ったことなど無いから解らないが、基本水辺にいる生き物だから長時間濡れないのは拙いんじゃなかろうか…。河童みたいに…。


そんな疑問を二神に言ってみたのだが、彼らも詳しく知るところではないらしい。神使の中には巨大亀の姿をした奴はいるものの、所謂普通の亀は今見たのがはじめてなのだとか…。


「「「探してみよっか…(・ω・)💡!」」」





誰からともなく視線を交わせばやはり思ったことは同じらしく…。綺麗にハモった声にさらに笑い声をあげた二神によって再び左右を抱えられた私は来た道を戻りながらあの亀を探してみることとなった。






それから、すぐに見つけることが出来たカメ君ですが…。思ったとおり元気がなく取り敢えず水に濡らせば元気になってくれるかも…!と何とも安直な考えに行き着いた私は二神に頼んで庭にあるだろう池の元へと連れて行ってもらったのだ。
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