政府の狐始めるってさ

□ろくじゅーにわ
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はい。途中事件が起きた気がしなくもないですが、無事にゴミ出しが完了した遥陽です。


そうそう!ついさっき知ったことですが、あのホワイトタイガーくんはまさかの五虎退のトラくんでした。何を食べればあんなにおっきくなるんでしょう…。きっと後藤あたりが知りたがります←


「オイ。話聞いてんのか、お前は…」

「え?何だって…?」


言い忘れましたが、只今説教を受けている最中なんです。池に落ちかけて助けてもらって以降、あの役人を引き摺りたがる子が急増しましてですね…?

もう正門まで目と鼻の先ってのもありそこまで引き摺ったんだからもう気が済んだだろと言いたげな皆さんに最後の仕上げを奪われた挙句、薬研によって広間迄連れ戻された私を待っていたのは興奮気味な熊さん基、激怒な熊谷さんでした←


とはいえ、微塵も反省なんかしてませんけどね?



「あ、そうだ。まだ政府ン中にさっきの奴みたいな外道いるの?」



私のあのメールで大分清掃された筈なんだけど…と思いつつ、お説教を受けていることすら忘れて尋ねてみれば至るところから溜息が聞こえてきた。


「もういいや…。で、なんだって?外道?

まぁ、あれで大騒ぎにはなったがまだ潜んでる奴なんかはいてもおかしくないんじゃないか…?」


悪い奴ほどよく眠るなんて言うしななんて言う熊谷さん。



「おい、アンタはバカなのか?そんなこと言えばこのおヒトは……

「薬研、私お掃除してくるね!」

ちょっと待て、コラ!!」




粛清しきれていなかったなんて…!と軽くショックを受けつつも、それならば今度は人数も少ないだろうし真っ向勝負と行きませうと意気込んだところで薬研に押さえつけられました。横のおっきなリボンをチラつかせて脅すのは止して頂きたい。


にっこり笑顔が何とも言えませんな。勿論恐怖でですが……!!←




「俺は今日何度神力が馴染むまで大人しくしていろと言えばアンタに理解してもらえるんだ、一体…?」

「あ、あははは…」



もうこれこそ、乾いた笑いしか出てこないや。何でこんなに大事なこと忘れるんでしょうね、私って…。ボケでも始まってるんでしょうか…?




「冗談はこの辺にしておきですね…。

一回政府内も大掃除しなきゃダメだと思うんですわ、私。

じゃないと延々と増え続けるよ?犠牲者」


「「……」」



今だったら確実に大将首狙えるんだ。この機を逃す必要なんざ無いだろ?と問えば目の前にいた熊谷さんと薬研だけでなく、同じく室内にいた子達まで静まり返ってしまった。

たぶん、皆だって解ってる筈だ。審神者の無法地帯を正すのと同じくして、役人どもの総取っ替えを行わなければ私が今言った様に減るどころか、増える一方だということを…。

刀剣男士の被害者も、審神者の被害者も増え続けた挙句に残るのは一体何なのだろうか…。




「私の予想では、きっとこの問題は0になることはないんだと思う。だって、欲に溺れるのが人間だもん。それは今までだってずっと変わらなかった筈…。


だけど、いつの世だってそれに異を唱える人もいた。



ならば、私はそちら側に立つよ。少なくとも現状を間違ってると思う以上、そのままにしておくことなんて私には出来ない」



薬研の言ってることが理解出来ない訳じゃない。現時点で色々と身体にガタが来てるのも自覚してる。だけど……


「まだ私に出来ることがあるんだ。

ここで立ち止まる訳にはいかないよ」




あの人に怒られちゃうからね…。そう言いながら胸元に差していた短刀を刀袋に入れた上で袖の袂に落とし、外してあったポシェットと刀を身につけた上で一人部屋を出た。


皆をこれ以上ゴタゴタに巻き込む必要はあるまい。幼かった頃に譲られた銀の棒簪を光に翳して確認をした上で髪を纏めればこれで準備は整った。そのままの足で私は転送装置を起動させつつ、政府の庁内。それも最奥部へと侵入を果たすのだった。





-*-*-


薬研side




「お前さんは行かなくて良かったのか?」


大将がこの部屋を出て行った直後誰ともなく長い息を吐き出した。別に大将がいつもの様に殺気立っていた訳でもない。寧ろそれを知っている俺としては不気味な程平静時と同じく落ち着いて話していた彼女に驚いたのも事実。だが、それ以上に瞳の中の陰りが一気に膨れ上がったことに一番驚いた。

タイミングとしては誰かのことを思い浮かべながら怒られちゃうと言っていた時だったか…。

恐らくは俺と同じモノを見た奴の誰かが息を吐いた。それが全振だったのかも知れないし、一振・二振だったのかもしれない…。



そんな中、俺のすぐ近くにいた熊谷は俺に尋ねてきたのだが…。


「いや、行くぞ。こっちも準備を整えてからだがな…」


そう返事を返しながらも、毎度思うがコイツは本当に政府の奴なのだろうか…。大将にしろ、俺にしろこれから政府に乗り込みに行くと言っているにも関わらず止める素振りすら見せないのが信じられない。



「別に不真面目な訳じゃないぞ。

単純に言ったところで止まらねぇんだ。嬢ちゃんも…。勿論、お前さん含む嬢ちゃんとこの男士達も、な」


そう言った熊谷は俺に何かを投げ渡してきたのだが……。


受け取ったそれを見れば大将が持っているのと同じ、すまほと呼ばれる奴なのだろう。不思議に思って持ち主の顔を見れば耳に当ててみろと言うので言われるまま片耳にあてれば、聞き覚えのある奴らの騒がしい声が聞こえてきた。
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