政府の狐始めるってさ
□ろくじゅーよんわ
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あの日、ネコくん改め蛍丸こと、ほたるんと出会ったその日のことを思い出しながら意識を失った私が次に目を覚ましたのはあの病室みたいな部屋ではなかった。
「あるじさまー!おしごとおわったなら、ぼくたちとあそんでくださーい」
「はーい。今行くから庭に出て待っててねぇ…?」
そう。私が過去一年余りの時間暮らしてきた本丸に帰ってきていたのだ。
しかも、あの血だらけだった着物は寝間着用の浴衣に着せ替えられた上で私室の布団に寝かされていたと気がついた時にはさすがに固まった。
だってご丁寧に襦袢まで取り替えられているんですもん…。
え…?贅肉だらけの肌を見せたの…?誰に…?なんて言葉は未だ怖くて聞けてません←
そんな私が目を覚ましたのは医務室で気を失った翌日の夜中。といっても、その時点で日付が変わっていたから24時間以上は経っていたのだが…。
いつもだったら隣に敷いた布団で寝ている筈の薬研が私のとこに潜り込んでいたことにも驚いた。何の心境の変化か知らないがまったくもって心臓に悪い。
早くなる鼓動を抑えつつ薬研を起こさない様、十分気をつけながらそっと月明かりが差し込む障子を開いて導かれるままに足を進めれば、そこにいたのはコタちゃんだった。
あの黒丸で起きたことを多分知っていると解っていながらも、コタちゃんの主であった先生を奪ってしまったことを含めて説明をし謝ったのもその時のこと…。そして、先生が言ったことを聞いていたかの様に、今度は私と契を交わす様にと告げてきた。
勿論、先生の最後の道導を断るつもりなどなかった。だけど正式な主従の契約を果たした時、コタちゃんへの影響を想像した私は直前になって躊躇ってしまったのだ。
結局そんな様子を見かねてか、また時を見てそれを行えばいいと言ってくれたその言葉に気が抜けた私は、たぶんそのまま寝てしまったんだろう。
気がついたら日が高く登っていて、隣で静かに本を読んでいた薬研に随分と寝坊助になったモンだと軽く笑われてしまった。
それから私が目を覚ましたことが本丸中に知れ渡り、私の私室は定員オーバー。隣の薬研の部屋へと続く襖を開けても入りきらず、広間に移るからと苦笑した私がその後揉みくちゃにされたのは言うまでもないだろう…。
その流れで保護者組+むっちゃんから叱りを受ければ一日が経つなんて早いもんで…。気がついた時には日が暮れ満月が天高く登っていたのだった。
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そんな一日も明け今朝方、熊谷さんと本家の御当主さんが本丸にやってきた。これまた言わずもがな役人に対してトラウマを持ってしまった奴らによる一騒動が起きて静めた…。否、沈めたのは朝食前のことだ。
あの黒丸にいた男士達は無事本霊の元に行き着いたと知らされると共に、一月程療養の為書類仕事以外が回ってこないと明かされた。当然、その間、朝の戦場散歩も免除…。
ついでに言えば、今回の騒動に関してのお咎めは悪質な役人のボランティア清掃と過去最悪規模の黒丸復興成功が効いたのかほぼ無しと言ってもいい状態だった。騒動の一週間前に送ってあった手紙つきボイスレコーダーのおかげ…とも言えるが、今更説教の数を増やしたくもないのでご当主さんにはこっそり捨てといてくれとお願いしたのも忘れない。
まぁ、そんなこんなで形だけの罰ってことで療養休暇が終わり次第、何故か審神者候補生達に混じり一週間程そこに通うハメとなった。それも薬研と一緒に……。
(人混み嫌い…。香水嫌い…。キャッキャ五月蝿い連中、大ッ嫌い…!!)
二人との対談が終わってからというもの私の思考を占拠しているのは勿論先ほどの“補習”に関する不満だ。漏れ出している霊力に気がつき、話し相手にと来てくれていた子達には悪いがそれから暫く書類をやるからと言い訳をして執務室に一人籠ったのは今から二時間程前のこと。
書類はとっくに終えてあるし、気持ちも幾分か落ち着いてきたのを確認した上で外に出た途端にちびっ子達から声をかけられ…。そのままの足で彼らが呼ぶ方へと向かっていくのだった。