政府の狐始めるってさ
□ろくじゅーななわ
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「で……?せっかく朝帰りまでしてきたにも関わらず、正式な契も結ばずに帰ってきおったと…」
定位置に置かれた座布団の上に座ったコタちゃんが“腑抜け”と指したのは、その目の前で並んで座り説教を受けている私と薬研のどちらに対してのものだったのでしょうか……。
こうなった原因はほかでもない。
調べごとに行き詰まった私が行ったあの部屋で寝落ちしたが為だ。
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目が覚めれば日が変わったどころか、既にお日様が空に顔を出していて…。
状況が飲み込めずにいた私に追い打ちをかけるように、頭上から聞こえた柔らかな声。
「おはよ、大将…。昨夜は可愛かったなぁ…?」
「……(゚д゚)」
(イヤイヤイヤ…。
ナイって、絶対。だってこれNOT年齢制限だし?)
きっと彼の発言が何ともいかがわしい風に聞こえたのは決して私の頭が可笑しい訳では無い筈だ。何せ、抱きしめられた体勢から見上げた彼の顔は満面の笑みの癖に妖しさ満点。
妖艶100%と替え歌が出来てしまえそうだと現実逃避しかけた私は、取り敢えず何かまた粗相をやらかしたであろう相手に何があったのかと問うたのだが……。
「なんだ?俺の口から言わせたいのか?なら、おのz…」
「やっぱり無しで!!!!」
先程からニヤニヤとした笑みを崩すことのない彼には言いたいことは山程あるんだが、それよりも先に口を塞ごうとそこを目掛けて手を伸ばせば…。
Chu...
「〜〜〜ッ……?!/////」
撃沈しました。それも高熱を出したかの様に顔を真っ赤にして…。
掴まれた方の手はその後も離されることはなく…。私の気持ちが落ち着くのは、手の甲に触れた柔らかな感触が引いてから数時間後のことだった。
そして元芦花先生宅に帰ってきてすぐ、連絡も入れずに悪かったと子猫の姿の癖にやたら威圧感が半端ないコタちゃんに事情を説明しつつ謝り、冒頭に戻る訳だが……。
ん…?
ってか、ちょっと待て。
「薬研…?まさか、騙したッ…?!」
「「今更か…?」」
コタちゃんの言葉を思い返し叫べば綺麗にハモる声。だが、その後の反応は違った。
片や溜息を吐きながら。もう一方はと言えば…
「にしても、騙したとは人聞きが悪ぃな。
俺からは何も言ってないだろ…?」
「うぐ……。でも、でもだったら何であんな言い方ッ…!!」
ケラケラと笑いながら一体何を想像したんだろうなぁ?なんて冷やかすこの子に反省の色は欠片ほども見当たらず…。
正論で言い返され言葉に詰まる私だが、言い方が悪い!と指摘すれば今度は仕返しをしたまでに過ぎんと言い切られる。
(仕返しって……orz
マジで何したよ、自分……)
この子意外と根に持つからな…。暫く同じ理由で遊ばれる気配を早くも察しましたよ、私…。
いつになったら忘れてくれることやら…と若干遠い目をしかけていた私に、強制的に現実へ思考を戻させたのはコタちゃんでした。
「って、痛いからッ!!」
帰ってそのままの服装でいたのがいけなかったのか…。
普段着ている巫女服なり着物。はたまた袴姿だったりと、それらに共通しているのは脚を隠す為の布がある訳で…。
それがあってもきちんと手入れがされているその爪の鋭さは常にピカイチなんだけど、スカートを履いている今それをやられたら堪ったもんじゃないから…!!
しかも態々剥き出しになっている太腿に攻撃するモンだから尚性格が悪い。すぐに爪を立てちゃいけません…!と言いながら小さな前足を退ければ元の位置に黙って戻ると、振り向いてこう言った。
“答えは見つかったのか?”と…。
解ったか否かで言えば、たぶん答えだろうそれはお陰様で見つけることは出来た。っていうよりも、思い出せたと言った方が正しいかもしれないが…。札何かに関しても恐らくは問題ない。
ただ一つ問題があるとするならば、それは一向に霊力の回復の兆しが見えないことだろう…。
理由なんて勿論心当たりがあるはずもなく、その内勝手に元の量に戻ってんじゃね?と呑気なこと言ってる場合では無かったと今更に気が付く。
やり方としてはこの屋敷を外敵から護る為の【保護】・外から見た時のカモフラージュの役割を果たす【まやかし】・そして内側には現と切り離した【空間の維持】…。二種類の結界と別個で術を二つ。それら全てを同時に行わなければならないのだが、今までの経験上から見ると今残っている霊力ではほぼ確実にまた布団とお友達にならざるを得なくなるのだ。