政府の狐始めるってさ

□ろくじゅーはちわ
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おはこんばんにちは。只今、執務室にて漂う絶賛重苦しい空気に耐え切れずにいる当本丸の審神者(臨時)の遥陽です。


現在、部屋の中にいる人物。否、神様は隣に座った私の保護者様である薬研の他…。

私達の対面に座した左から順にいまつるちゃん、乱ちゃん、五虎ちゃん、厚、後藤である。


何でこの可愛らしい面子で重苦しい空気になったかって…?

よくぞ聞いてくれましたッ…!(泣)


それは遡ること30分程前のことーー……




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突如現世で約一週間過ごすことになってしまった私達が本丸へと帰ってはや三日目となる今日。

毎日朝食前と終礼前にむっちゃんと鯰尾へ連絡を入れていた為か、大きな問題もお互いなく過ごせたのは良かったことの一つ。

ついでに言えば、現世で行った術がこちらに戻った今解けてしまっていないかとコタちゃんにお願いして確認してきてもらえば、問題なく結界がなされていたと報告を受けた。


案の定、先生があの家にかけていた術は私が思い出したそれであっていたのだと内心安堵したのは戻ってすぐのこと。これが二つ目の良かった点である。



それからも大きな問題等は起こらず、新たにこの本丸にやってきた蛍とみっちーに遅くなってしまったが改めて挨拶をし…。

書類仕事に費やしている時間意外は、他の子の様子と併せて、まだ此処に不慣れである彼らに気をつけて過ごしていたのだ。



此処までは何の問題もないでしょ…?それなのに……。


どうやら何の問題も無いと思いこんでいたのは私だけだったようでして……。現在進行形で突きつけられた新たな問題に若干の現実逃避を交えつつ頭を悩ませている次第であります。




「で、いい加減返事でも聞かせてやっちゃくれないか?」


コイツらだって大将の返事を待ってると私の思考がどこか遠くへ出かけていたことに気がついた薬研が、痺れ始めていた足の裏に手にしていたボールペンで刺激を与えてくるもんだからこちとら返事どころでは無くなってしまった。


「ちょっと!!何すんの?!」

「大事な話の途中に意識を飛ばすアンタが悪い」



正座している体勢は崩せずとも前のめりに倒れこみ一人悶絶する私が顔だけを隣に向けて文句を言えば、自業自得だと素っ気無く返された挙句にもう一度さっさと返事をしろと急かされることとなる。


(いや、返事…って言ってもねぇ……)




向かいに座る5人の要求を端的に言えば“修行に出たいから、暇をくれ”とのこと。


ぶっちゃけ、大きな怪我さえ負わずに済むならお好きにどうぞって感じなんだが……。

私には審神者の許可を取る必要性が解らない。



(あれか…?よく聞く、寮生活につきものな外泊届け的な奴か…?)



「あー…、うん。修行ね、修行…。いいよ?何時から行きたい?何か手続きに必要な書類とかあるのかな、これ…」

外泊届出書みたいなの政府からのフォームにあったっけ?なんて思い返すも、審神者が現世に行く時用のそれ意外に無かった筈だ。

ならば不要ってことでいいのかな…なんて自己完結した私は、許可を出したつもりだったんだけど……。


「え゛…、何?これ断るが正解だったの?!」


要求に答えて泣かれるなんて普通思わないでしょーがッ…!!取り敢えず嗚咽を漏らしている五虎ちゃんと乱ちゃん。いまつるちゃんを抱きしめていれば、後ろにクンと小さく引かれる左右それぞれの袂。


気になって視線だけをそちらに向ければ、普段はちびっ子達の良いお兄ちゃん的存在な厚と後藤までもが静かに涙を溢し始めてしまったではないか…。


一人慌てている私とは裏腹に、一切動じることなく座ったままの薬研へと黙って見てないで、このカオスな状況何とかしてくださいよッ!と後ろにいる厚と後藤越しに彼へと視線で訴えれば、これまた物凄く深い溜息を吐かれることとなった。


マジで意味が解りませぬ…(´・ω・`)



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乱side


主さんがボク達と一緒に帰ってきてからというもの、どこか様子がおかしかったのは皆が知っていたことだった。


最初は主さんの先生が亡くなったことのショックがそれだけ大きかったんだと皆が信じて疑わなかったんだけど…。どうやらそれだけじゃないみたいなんだ。


ハッキリ言ってしまえば、主さんが黒丸に行ったあの日を境にボク達に対する態度がよそよそしく感じるんだよね…。


ボク達が遊んで欲しいと言えば二つ返事で遊んでくれるし、今までみたいに何気ないことで笑って過ごせて、兄弟達を交えて一緒にお風呂に入って、美味しいご飯を食べて…って日が繰り返されるだけでも十分嬉しいことなんだけど…。


ボクは…。ううん、ボクだけじゃない。他の皆もそれ以上の日々を知っているからこそ、自分達でも気がつかない内に貪欲にそれを求めてしまっていたんだ。そのことに気が付けたのは昨夜のこと…。
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