この的も貴方の心も射抜いてあげましょう。
□TODAY IS
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その後、曲のスタッフから他のアーティストの到着が遅れ、インディーズで調整するしかなく、IDOLiSH7の出演が早まったと言われた。
これが、命取りになってしまった。
陸は一人の時にトラブルに遭ったらしく、発作を起こしかけていた。
それに一番に気が付いたのは一織で、でも、陸のフォローの事に意識が行ってしまったのか、一織は、歌い出しを忘れてしまっていた。
それから、連鎖反応のように崩れていくようだった。
陸と壮五、三月がフォローに入ろうとするもかぶってしまい、3人とも引いてしまう。その動揺が環にも伝わってダンスもグダグダに。
大和とナギはなんとか持ちこたえていたのにかえって二人が浮いて見えて。
空気を戻せる可能性のあった陸の歌声も、いつもの半分も出ていなくて。
もう、ダメだ。結実は耳を塞ぎたくなった。
終わった後は全員、お通夜のような雰囲気で結実も紡も口を開けなかった。
ふとした瞬間に、一織がいないことに気が付いて全員で探しに出た。
三月がゼロアリーナにいるんじゃないかと向かってみると一織はそこにいた。
そのあと、ナギのおかげで皆は立ち直れた。
紡がナギと踊るのは少しばかり気に食わなかったが、今回は特別に目をつむった。
「お前、マネージャーがナギに取られていいのかよ。」
「普通なら間に入ってやりたいくらいだけどね。今回は特別。紡も元気になるならそれでいいよ。」
まあ、変なことしたら例えナギでも心臓射抜くけどなー。と物騒なことをもらす結実に大和はあきれた息を吐き出した。
「ここで…皆がダメになっちまわなくて本当によかったよ…」
涙をこらえるように言う結実の手を大和は握った。
「大和…………何、柄にもないことしてんの?」
「お前なぁ…」
「…ありがとね、びっくりして涙引っ込んだよ。」
結実は涙と一緒に芽生えてしまったこの気持ちも引っ込めた。
(馬鹿でもわかる…これだけは絶対に越えちゃならねえよ。)