口の悪い人魚姫

□第四章 うなれ体育祭
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前回のあらすじ
え、あいつら付き合ってないの?


放課後―――

「うおおおお……何事だあ!!!?」
教室の外に人だかり。普通科や他の科の人もいるんだろうか、これは…

「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」
「敵情視察だろ、雑魚」

勝己に暴言を吐かれた峰田。

「ごめん、峰田…」

ナチュラルに毒吐くのがこいつの常だからな…

「敵の襲撃耐え抜いた連中だもんな」
「体育祭前に見ときてえんだろ」
「意味ねえからどけモブ共」
「知らない人の事取り敢えずモブって言うのやめなよ!」

あー…ほんっと悪い癖だよ…

「どんなもんかと見に来たが、随分偉そうだなぁ。ヒーロー科に在席する奴は皆こんななのかい?」
「いや、コイツだけ。コイツ、クソを下水で煮込んだ性格してっから」
「オイ!!」

人垣の中から紫髪の凄い髪型の人が出てきた。

「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ。普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴結構いるんだ。知ってた?」
「?」

あー何か聞いた事あるようなないような……

「体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ……
敵情視察?少なくとも普通科は調子のってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり」

大胆不敵だね〜この人。
またもう一人人垣からの中から声を上げた。

「隣のB組のもんだけどよぅ!敵と戦ったっつうから話聞こうと思ってんだがよぅ!!えらく調子づいちゃってんなオイ!!!本番で恥ずかしい事なんぞ!!」

あーあー…勝己の所為だ〜

「奏、帰んぞ」
「へ?」

勝己が私の手を掴む。

「待てコラどうしてくれんだ。おめーの所為でヘイト集まりまくってんじゃねえか!リア充するな!」
「関係ねぇよ……」
「はあーー!?」
「上に上がりゃ関係ねえ」
「く…!シンプルで男らしいじゃねぇか」
「上か……一理ある」

騙されてんぞ、二人とも。

「騙されんな!無駄に敵増やしただけだぞ!」
「おら、帰んぞ」
「はいはい……―—―勝己、今日うちでご飯食べてく?」
「クソ兄貴がいなかったらな」
「いないから来なって」
「ん」




私は今世紀最大に葛藤していた。

「お兄っ……兄……クソっ……雪っ……スノーマン……っ………」
「(俺の妹、マジカワイイ)…どうした、奏」
「……た、体育祭までの2週間……仕事とか暇なときでいいから……っ……私に修行……つけてください………」
「(ああ、天使。いや、奏に修行か…)…………」
「だ、ダメ?」
「(おねだりキター!!!!)」
「……ダメなら、いいよ。勝己に付き合ってもらうから」
「それはダメだ!!!!俺がつけよう!!!安心しろ!我が妹!!!!!!」

人選間違えたかな……


『魚住雪斗の奏専用練習メニュー♡』
1、体力強化!
2、歌声の使用範囲増大
3、歌声の使用対象増加
4、バリエーションを増やせ!!


何か、無駄にファンシーで紙を引裂きたくなったけど、抑えた私は凄いと思う。



あっという間に体育祭までの2週間は過ぎていった。
え、修行の成果?人外で歌声が効くようになったよ!
犠牲になったのは近所の犬!



そして、体育祭当日―—―

「皆準備は出来ているか!?もうじき入場だ!!」
「コスチューム着たかったなー」
「公平を期す為に着用不可なんだよ」
「奏ちゃんは飛び道具使用OKなんだね」
「学校に許可貰ったし……青山のベルトと同じ感じだよ」
「それにしても浮かない顔ね。寝られなかったの?」
「……いや、寝たには寝たんだけど……朝からお兄ちゃんがうるさくって……それにホラ」

私は携帯の履歴を見せた。

「一分に1回でLINEが……」
「しつこいお兄さんね」
「かなりウザいな、あの野郎」

携帯の電源を落した後、控え室の隅で話していた轟君と出久の声が聞こえた。

「おまえには勝つぞ」
「おお!?クラス最強が宣戦布告!!?」
「急に喧嘩腰でどうした!?直前にやめろって…」

切島君が二人の間に入る。

「仲良しごっこじゃねえんだ。何だっていいだろ」
「轟君て、よくわからない人だよね。あんまし喋らないし」
「奏ちゃんは爆豪ちゃん以外男子とは話してないけどね」
「うぐぅっ!!」

痛い所をつくねぇ、梅雨ちゃん…!

「―—―皆…他の科の人も本気でトップ狙ってるんだ。僕だって…遅れを取るわけにはいかないんだ。僕も本気で獲りに行く!」
「………おお」
「出久も成長したなぁ……」

ホロリと涙が出そうになった。昔の出久なら絶対こんな風に言い返さなかったよな〜
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