この的も貴方の心も射抜いてあげましょう。

□miss you...
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それからIDOLiSH7のweb番組が始まって、MEZZO″も順調にテレビに出演していた。

知名度も着実に上がってきた中、弓道の大会の合間に万理に聞いたのは、大和へのドラマのオファーだった。

「何で断ったんだよ。お前の表現力なら主役食うくらいだろうし。」

結実と大和は弓道場で話していた。

いつからは曖昧な所だったが、結実が道場に行くと自然と大和もついてくるようになっていた。
今回もその例に外れていなかった。

「何でっても…演技の仕事には興味がねえんだ。」
「ふーん…まあ、私も紡もあんたが嫌なら無理にとは言わないけど…才能があるのに使わないってのはもったいない気がするけど。」
「才能ねぇ…じゃあ、そんなに才能があるのに結実は弓道一本に決めねえんだよ。」
「別にここまで続けるとは思ってなかったんだよ、子供のころは。」

弓を下すと、大和の隣に座り込んだ。

「子供の頃は、母さんに褒めてほしくて続けてたんだよ、私。この結実って名前は母さんがつけてね、その名前の影響で弓道を始めたんだ。けど、紡が生まれてから、母さん、体を崩すことが多くなっちゃってね。」

元々からだが強くなかった母は、病院生活が増え、亡くなった当時、七歳だった結実も母親との記憶は薄い。

唯一鮮明に残っていたのが、妹とそっくりな笑顔。初めてど真ん中に矢を当てた時だった。

まるで自分の事のように喜んでくれていた。

「それ以来、練習しまくってここまで上達した。高校卒業したら就職して、その先も弓道を続けていくのかなって思ってた時に大学からスカウトが来たんだ。」

小鳥遊家は大手の事務所ではなくても、娘を大学に入れる蓄えはあった。

「色々苦労させてきた紡には大学に行かせてあげたかったから、断ろうと思ってたんだけど、この前の父さんみたいに言ったんだ。
やりたいことがあるならやり通せ。って。母さんのつけた名前で弓道が好きになったのなら。ってね。そんなことがあったから、大学でも弓道続けて、事務所の助けになるならって一応経営勉強して、アンタたちのマネージャーになった。」

まあ、紡の補佐だけど。結実は小声で付け足した。

「弓道は趣味で続けることにしようって決めてたんだけど、弁当代稼ぐために大会出たりして一本に決められないんだよね…決めたくないってのもあるんだろうけど。私にとっちゃ、弓道もあんた達も大切なんだよ。」

あの時の母の笑顔も、初めてのライブの7人の輝きも、結実にとってはかけがえのないものだ。

「いつか決めなきゃいけない時が来るんだろうけど、今はもう少しこのままでいたい。アンタ達が一生懸命だから私も一生懸命でいたいんだ。」
「…ミツにも同じようなこと言われた。」
「三月も私と同じ体育会系だからね。」

それにあの可愛い顔でメンバー1の男前だからな。
と結実が考えてる横で大和は2人の言葉を反芻していた。

その話から間のあかないうちに大和はオファーの来ていたドラマの出演を受けた。


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