名探偵コナン・短編夢

□ララバイ
1ページ/4ページ





ガチャ…


無機質なドアの音


「ただいま」


そう言って入り、リビングへ行く
視界に入るのはソファーに腰掛けている彼女





『お仕事お疲れ様、
……久々だね、透!』


ぱっと立ち上がったかと思えば
突然抱きついてくる

そんな彼女が愛おしい


「うん、ただいま……やっと会えたね
……れい」

抱きしめ返すと耳元で
『えへへ…』
と、照れた声が聞こえた


僕の大切な彼女


「いつぶりだったかな?」

『えっとね…2、3週間ぶりかな?』


いつも仕事で多忙と言って
なかなか会うことの出来ない毎日

何の仕事かは教えてない

彼女を危険に巻き込みたくないから


しかし
そんな理由すらも教えていないわけだから
大抵の人なら愛想を尽かして僕から離れていく

でも、
そんな僕でも必要としてくれる
れいの真っ直ぐな優しさに
僕は惚れてしまったのかもしれない


「寂しかったよね?本当にごめん……」


…チュッ…


『んっ…へへ、大丈夫だよ』


唇に優しくキスを落とすと
いつもみたいに顔を赤くしながら
また笑っていた


君は僕の前でいつも笑ってくれる


でも、
君は僕のいないとこでいつもは泣いている


何かあった時のためにと思い、
部屋につけている盗聴器をたまに聞く


…すると数日に1度
彼女の微かな泣き声と、"寂しい"と呟く声が
僅かながらにも聞こえる


でも彼女は一切、
僕に対して不満や愚痴は言わない

いつも笑顔だ


そんなれいの優しさに触れた
僕の心は暖かく


『透…好きよ、大好き…』

抱きしめてくる力が強くなる


こんな僕を必要としてくれる
れいはやはり愛しい


「僕も、愛してるよ」


チュッ…チュッ……


『透…』

ゆっくりとれいを抱き上げて
ベッドへと移動させた









−−−−−−−−−−−−−−−−−






『んっ……』

目を覚ますと
見慣れた部屋で寝ていたことがわかる


『……透…?』


情事が終わり
すっかり寝てしまった私の横に彼はいない
こうして去っていくのはいつものこと

上半身を起こし辺りを見る


『……仕事…だよね…』


……もう慣れた


彼が何の仕事をしているかは知らない

気にならないことはない
1度聞いたことだってある
でも、彼は教えてくれなかった

真面目で誠実な彼が言いたくないことならば
私は我慢しようと思った


だけど…

なかなか会えないのは寂しい


それでもやっぱり
私の我儘を押しつけるわけにはいかない

大変な仕事をする日々
私が甘えてしまって我儘を言えば
彼を困らせるだけだとわかっている


『大丈夫…大丈夫…』


私は彼にいつも言う
笑いながらそう言う



ツゥ…と頬を伝ったものは私だけの秘密




次はいつ会えるの?

そんなことを聞く勇気すらないわけで

いつも彼が会いたいと言った時に
私が時間を空ける



いつ彼が私の元から離れていくかわからない
不安


誰かに打ち明けることが出来たなら
どれほど楽になるだろう


ぎゅっと脚を抱き抱えて
今日もダブルベッドで一人


『……いかないで』


そんな我儘が言えたなら…












「大丈夫、今日はどこにも行かない」


『………ぇっ…』


俯いていた顔を上げると
溢れる涙で歪んで見えたが
ドアから入ってきた彼がいた

『ぁっ』

急いで目を擦る
こんな情けない顔見せられない


『……仕事に行ったのかと思った』

笑いながらそう言うと
彼は困った顔でこちらへ来た


「冷蔵庫の中にあまり食べ物がなかったから
コンビニで朝食買ってきたんだけど…
ごめんね、またれいを不安にさせた」


抱きしめられる感覚に
胸が痛む

『大丈夫、大丈夫!
これくらい慣れてるし
仕事なら仕方ないってわかってるからね』

聞き分けのいい女を演じるのもつらい


『コンビニで何買ったの?』

先程までの自分に触れられたく無くて
話題を変えようとし、
彼の腕の中から抜け出して
コンビニの袋を覗く


「ねぇ、れい」

低いトーンで言い
こちらを見ている様子の彼


『あ、これ美味しいやつ!
ねぇ透、一緒に食べよう?』


パンを取り出して見せ
笑顔で振り返る


「うん、わかったよ
でもその前に少し話たいことがある
…聞いてくれる?」


どうしてそんな真剣な顔で言うの?
見透かされていそうで怖くなる


『うーん…それよりもやっぱり先に食べよ?
もーお腹ぺこぺこでさー』


誤魔化し通さなきゃ
スグにでも脆い自分が出そうで怖い





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ