名探偵コナン・短編夢

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『……はぁ……』






「………もう10回目ですよ、れいさん」

『え?何が…?』

「ため息!
来たかと思えば
ずーっと何か考え事してるようで
何度もため息ついてるから
無意識に数えちゃいましたよ」


はぁ…と、今度は彼がため息をついた


彼の名は安室透

彼は私の行きつけの喫茶店でバイトしていて
お互いにお店でしか会うことはないが
そこそこ仲がいい方だと思う


『いやぁ…なんだかね…
いろいろあるんだよ…うん…』

悟ったかのようにそう言うと
彼はサンドイッチを出してきた

『あれ?今日これ頼んだっけ?』

「いえ、僕の奢りです
…もうすぐお昼だし
これで元気でも出して頑張ってください」

『……安室…
あなたって実は優しかったのね…』

目をキラキラさせて言うと
ピシッとデコピンをくらった


『なっ、なんでっ!?褒めたのに!』

「なんだかムカッときたからですよ」

すると彼は私の隣へと座った




「…で、理由はなんですか?」

『え?』

「ため息の!理由!
…ここまできて"秘密"はダメですからね」

軽く私を小突きながらそう言ってきた
折角なので
奢ってもらったサンドイッチを
食べながら話すことに


『もし、私と安室が付き合ったとします
もうすぐ1年経ちます

しかし…安室は浮気をしました
さて、その理由は?』


「…彼氏に浮気されたんですか?」

答えるよりも先に
的確に質問の意図を当ててくる


『………………答えは?』

彼の質問には答えず
自分の質問の答えを問う


「…………そうですね…
よくある理由だったら…

お互いに都合が合わない日が続いたりして
自分の心を埋めるための暇つぶし、とか
好きという気持ちが薄れた、とか
……体の相性が合わない、とか…ですかね

…でもまぁ
浮気の理由なんていろいろあるし

一概に"これだ"というのは
本人にしかわからないですよ」

『………たしかに』

安室の意見は最もだと思った

「ですがまぁ…先程の前提条件なら
…僕は浮気なんてしませんけどね」


『…ん?前提条件?どういうこと?』





彼は頬杖をついてこちらを見る









「僕なら、れいさんと付き合ったら
浮気なんて絶対にしない、する理由がない

……ってことですよ」




口端をあげながら彼は笑った







『……………何言ってんのもー』


はぁ、と私は彼の言ったことに
また一つため息をついた


「あれ?信用してません?」

『意味わかんないし、
何が言いたいのかさっぱり』

「ははは、まぁいいですよ

……それで、
浮気された理由に心当たりないんですか?」


彼は乾いた笑いをした後に
また確信をついてきた




『…会えない日は…多いかも…』

俯いて呟く

「仕事の都合上ですか?」

『うーん…私はそうでもないんだけどね
…彼の方が忙しすぎて…
…今月はまだ一度も会えてない』

「…ということは、もう半月くらいですか…
……れいさんは寂しくないんですか?」


…ほんとにこの人は…
…痛いところばかりをついてくるな…


『ううん、私ね寂しくはないの
だって…仕事じゃ仕方ないでしょ?』


笑いながらサンドイッチを食べ続ける




「…僕には強がらなくていいのに」

彼は小さく呟いた


『強がってなんかないって〜
本当に大丈夫なんだからね!

…まぁでも…
浮気はちょっと…くるものあったけど』

「なんで浮気されてるってわかったんですか?」

『前に街中でね
彼が美人と歩いてるのを見かけて
…少し跡をつけていったら…
…仲良さげにジュエリーショップに
入っていくのが見えて…

…あー、なんだか私…
もうダメなのかなぁって、
いつか捨てられちゃうんだろうなぁ
…って思っちゃってさ

…バカだよね!自分で尾行したくせに
後悔するなんてさ!』


サンドイッチを食べ終わり
笑いながら彼の方を向くと
何故か真剣な眼差しで見られていた


「…笑って誤魔化したって
つらいのは自分自身ですよ
…僕にはもっと本音をぶつけてください」


…なんでも見透かされている気がして

目はそらさずに見つめあったままでいた





すると私の開いた口は
勝手に言葉を紡いでいた



『…捨てられたくないよ
でも、もう私…ダメなのかなぁ…』


笑いながら眉を寄せていると
頬に冷たいものが伝った


「……れいさん…」

『っ……ふ……』


私はいつの間にか彼に抱き寄せられていて

溢れ出した感情とともに
ぽろぽろと零れ落ちてくる涙は
なかなか止まらなかった










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