名探偵コナン・短編夢

□願い
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夜のとあるホテルの中

次の仕事の話をしていた



「…いいわね、バーボン
しくじるんじゃないわよ?」

「えぇ、わかっていますよ」


ベルモットに返事をして
酒を呑みながらちらっと横を見ると
ジンと目が合った


「…なんだ」

「…いえ、何でもないですよ」


視線をジンの横の人物へと移すと
大人しくしている女性が目に入る





ロゼ…



「いい、ロゼ?
少し危険な仕事だけど…あなただから任せるの

…わかってちょうだいね」


『…うん、わかってる
いつもありがとう…ベルモット』


優しく目を細めながらそう言う彼女は
本当にキレイで
本当に組織の人間なのかと疑うくらいだ


「…じゃあもうここから出ましょう
話も終わったし、長居は不要よ」


ベルモットが立ち上がると
僕とジンも立ち上がり
奥の方にいたウォッカと
それに続いてロゼも立った


「…ロゼ、てめぇ今から暇だろ?」

『…暇だけど…何か用事?』


「俺と来い」


妖しい笑みを浮かべ
ロゼの顔を覗き込んでいるジン


「ちょっと、ジン
あなたこれから仕事でしょ!
…それに貴方みたいな狼と
一緒に行かせるわけにはいかないわ」

「そうっすよ兄貴
俺らこれから仕事が…」


ジンの誘いをベルモットとウォッカが
必死に止めようとするが
ジンが素直に言うことを聞く訳がない


「…ゴタゴタうるせぇな
おいロゼ、どうなんだ」


ジンの言うことに逆らうヤツなんてほぼいない


…しかし


ロゼはその数少ない一人だったようだ




『…お断りしておく
仕事はちゃんとすべきだし…
…また今度誘って?』


チュッと音を立ててジンの頬にキスを落とし

その場にいた誰もが冷や汗をかいたが
ジンはそのまま動かず、何も言わなかった


そして彼女はそのまま扉の前へと移動する



『じゃあみんな、またね
…今度はよろしく、バーボン』





キィ……バタン




立ち去っていった彼女の姿が
しばらくの間、僕を立ち止まらせていた













−−−−−−−−−−−−−






『…疲れました…』

「あぁ、お疲れ様」


今、私の隣にいるのはライ


…いや、赤井さん



私は組織の人たちと集まった後
赤井さんに相談を受けてもらっていた



『私…赤井さんみたいに
上手く馴染めているんでしょうか…?』

俯いてグラスに入ったワインを見つめた


「お前なら大丈夫だ
…俺以上に溶け込めてるくらいだからな
心配する必要はない
お前はよくやってる、れい」


私の肩に手を置き、優しく笑う赤井さん

赤井さんに認めてもらえるのが
何よりも嬉しいかもしれない


『…ありがとうございます』


…でも


『…赤井さんは…最近どうですか?』


「…まぁ…ぼちぼちだな
宮野明美とも一応上手くいっている」


『…そうですか、それは…よかったです』



上手くいってる…か、墓穴を掘った気分で
胸が痛くなった



ゴクッ…ゴクッゴクッ…


グラスに入っていたワインを一度に呑み
私は席を立った



『…今日もありがとうございました
私、明日早いんでもう帰りますね』


財布を取り出そうとすると
赤井さんに止められたので
大人しく奢ってもらうことにする


『ありがとうございます…』


「いや、気にするな
…それよりも…こんな遅くに女一人は危ないぞ
…俺が送ろう」


そう言って立ち上がろうとする赤井さんを
私は首を横に振りながら止めた


『私は大丈夫ですから
赤井さんはもう少しゆっくりしてってください
…ほら、お酒もまだ残ってるし!』


そう言うと、赤井さんは渋々座ってくれた


『…じゃあ、私はこれで…また連絡しますね』


そう告げて私は赤井さんに背を向ける







「れい」


『……?』



振り返ると
赤井さんはこちらを真っ直ぐ見つめていた



「……気をつけろ
ベルモットもジンも
お前のことを気に入っているが…
…油断だけはするな」


真剣な瞳にドキッとした


『…はい』



「…まぁ、お前に至って
そんなことはないとは思うがな

…何かあったら俺に言ってこい、いいな?」


『…わかりました

…………では』



赤井さんの優しさに触れて
涙で目を潤ませ
私はその場を後にした








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