銀魂・長編夢

□人のことを怪しんでいる時が実は一番怪しい
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ガンッ!

『っ…重た…』

「なかなか耐えますねィ…」

自分が言えた義理ではないが
こんな小柄な身体のどこから
そんな力が出るのかわからない

メリメリッ…と、木刀から軋む音がする

…バキッ!

『「ちっ…」』

カランッ…カラン…

「…引き分けだな」

転がり落ちた二つの折れた木刀を見て
土方さんがそう言った後、
沖田さんと私は距離をとった

「…今日はこのくらいにしといてやらァ」

『…ありがとうございました』

まだまだ強さが足りないんだな…
と再確認した

ペコリと頭を下げると
まわりの隊士達が拍手をしてくれた

…かと思ったら
すぐさま皆に囲まれて身動きが取れなくなった

『え、な、なに…?』

「お前強いのな!!」

「今度俺とも稽古してくれよ!」

「どこかの流派なのか?」

ガヤガヤと群がってきた隊士達に困惑する

『いや…強くないし、別に流派なんてないから
なにもかも自己流…だ………』






…と、言いかけてから私は口を塞いだ

「「「「……?」」」」



『………ゲロ吐いていいか…?』

「「「「狽ヲええええ!!」」」」

「せ、せめて厠行けよ!」

「そうだそうだ!」

『お、おう…んじゃ行ってく…うっぷ…』

ダダダダダッ

私は口を押さえたまま走り去り
後ろにいた皆は笑っていた






…しかし、そんな中
副長と沖田隊長のみ…真剣な顔をしていた

「…アイツ何者だ?」

「…さぁねィ…
俺の知ったこっちゃありませんぜ」

「…山崎にでも調べさせるか」

「…気にしすぎでさァ
別に詳しく調べなくったって…」

沖田は続きを言おうとしたが
土方が立ち去ろうと背を向けたので
それ以上は言わなかった

「テメェも暇なら調べあげとけよ」

「…ヘイヘイ」

そう言い残して土方はその場から去った








「……土方コノヤロー…」

そう呟いた沖田の声は
誰にも届いてはいなかった














−−−−−−−−−−−−−−−








タタタタッ

ガチャッ

バタン






『っ…ゲホッゲホッ…』

厠へ駆け込み
便器に向かって溜め込んでいたものを出した



『…ゔぇっ!……はぁ…はぁ』

吐き出したものを見て苦笑いが出る




『ゲロなんかより…よっぽどタチが悪いな…』

大量の血が目の前に広がっていて
これが現実なんだと知る


『俺にはやらなきないけない事があるんだ…

はやく強くなって…アイツらを……!』



ぎゅっと握りしめて



壁を殴ろうとした″醜い拳″は



行くあてもなく
そのまま重力によって下がって行った













−−−−−−−−−−−−−−−












───────時刻はただいま丑三つ時

『……誰もいない…』

……よし!



こんな時間に風呂場なんかに来る人も
そうそういないと思いつつも
周りをよく確認してから服を脱いで
すぐに浴室へ入った

女の身体である以上、
他の隊士にバレてはまずいため
こっそりとこんな時間に一人で入るのだ

髪を洗い、体を洗い
ようやく湯船に浸かる

『……あ゙ぁ〜…気持ちいい…』

皆が入った後だから少しぬるいが…
それでもお風呂はいいなと思う

『……って、のんびりしてる場合じゃないか
…もし誰かが入ってきたりしたら…


……


……よし、もう出ようかな!;』



そう思って私はすぐに浴室から上がった


『…ここで本当に誰かと遭遇したら…


…いやいやいや!
そんな二次元的な話ないか!』

独り言を呟きながらサラシを巻き終え
服を着ていると



ガラガラガラ…



『煤c!』




誰かが入ってきた…!

丁度服を着終わったからよかったものの…
後少しタイミングがズレていれば
大変なことになっていた

…というか
こんな時間にわざわざお風呂に入る
変な人っているだな…

どんな人だろう…

『こんばんは』

「…あれ?珍しい
こんな時間に電気がついてるから
まさかとは思ったけど…本当に誰かいたんだ」

話しかけに言ったものの、
見たことない顔だな…この地味な人

新入隊の一人かな…?

『どうしてこんな時間に?』

「えーっと…ちょっと偵察の仕事があってね
…君こそ何でこんな時間に?」




…私は墓穴掘りの名人ですか?

…ってかこの人新入隊じゃなかったし!

偵察の仕事なんて凄いなぁと感心する

『いや…その…部屋で寝てたら
通常の入る時間過ぎちゃってて…
…仕方ないから今入ってきたところです』

…別に変な理由じゃないしいいよね?
不安になりながらも相手の様子を窺う








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