銀魂・長編夢

□三話目
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『俺も気になります!
なんで逃げるんですか?』

「ほらほらァ
本人だって不思議がってんだ
何か理由があるなら言えばいいだろ?
万事屋銀ちゃんは、相談事もうけつけるよ〜」

沖田さんは私達を見てから

「……はぁ…」

と一度ため息をついてから立ち止まった

それに続き
私と銀髪の人も立ち止まる


「よーやく言う気になった…」

「ちょいとすっこんでてくだせェ」

「ちょ、おまっ…」


″ドカァーーーン!!″


『秤ォ田さんんんんん!』


「ほら、ボヤボヤしてねェで
今のうちに行きますぜ」

入隊してから慣れてしまった
このいつもの如く行われるバズーカ砲により
天パ男は真っ黒に

そして私は沖田さんに腕を引かれながら
その場を後にした














「ったく…なんかあやしいな…」

真っ黒になったいつもの倍以上に
パーマのかかった頭をボリボリとかきながら
その男は二人の背中を眺めていた










−−−−−−−−−−−−











「…ここまで来れば安心でさァ」

『…はぁ…なんでそんなに逃げるんですか…』

公園に来て2人でベンチに座った

「…旦那はあー見えて感の鋭い人でしてねィ

早乙女が女だってばれたら
脅されて何を要求されるか
わからねェから…」


『あー…なるほど…

……って……俺は男ですって!;』


危うく女であることを
認めてしまいそうになった


「ヘイヘイ…

…だがな早乙女
俺はテメェが女だろうが男だろうが
別にどっちだっていいんでさァ
…真選組に必要なのは力ですからねィ

強けりゃ男も女も関係ない

…だから正直に言いなせェ
俺は別に近藤さんや土方さんに
告げ口するつもりはありやせんから」


『っ……』


ジッとこちらを見つめる瞳にドキリとした



『…………俺は…』




…口を噤んでどちらと答えるか少し悩んだ
沖田さんの今の表情からして
先程の言葉は嘘でないように思える
…それにこの人はそんな事で
告げ口をするような人でないことも
ここ数日でわかった気がした

…でも、やはり…


『………俺は男です!!』



キッと見つめ返す私に

沖田さんは″はぁ…″と
ため息をつき立ち上がった

「真選組に入ったのには
何か事情があるんですかィ?」

『…』

ないわけがない
…だが、私はその質問に答える義務はない
これはあくまで私の問題であり
他人に口出しをして欲しくないという
願いからくるものであった

…しかし、あえて簡単に言うのならば…

『強くならなきゃいけない理由があるから』

それに尽きるだろう

両手をぎゅっと握りしめて
それを見つめながらそう言った


「…そうですかィ

ま、俺にはンなことどーでもいいから
あまり深入りはしねェ」

サッと立ち上がる沖田さん

「俺ァこれから用事があるんで
少し寄り道してから帰りまさァ
早乙女は先に屯所に帰りなせェ」


そう言って前を向いたまま手を振りながら
沖田さんは私に背を向けて去って行った



『…帰ろ』



深く考えすぎる前に立ち上がり
沖田さんとは別方向へ足を進めた



今はただ…強くなることに専念しなければ…



…そう胸に誓って














−−−−−−−−−−−−−−−













″強くならなきゃいけない理由″




そう言った時、
アイツの本性が少し見えたような気がした

だが、それは″気がした″ってェだけで
確信をついちゃいねェ…



アイツと手合わせした時や
さっきのあの言葉を呟いた時のような
時折見せるあの瞳



「…ありァ″ケモノ″の目だ」



そう例えるのが一番正しい



なぜ強くならなきゃいけねェのかを
問いただすことは簡単だが

そこから先へ一歩近づくには
今の俺には出来ねェと思った


「…情ねェでさァ」



空を見上げながら呟くと
雲行きが怪しくなっていることに気がついた


「こりァ一雨降りますねィ」



何故こんなにアイツのことが
気になるのかはわからねェ…






…ただ、今思うことは





「…雨に濡れてなきゃいいが…」





…ただそれだけ











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