僕っ子少女のトリップ物語

□音が一つ〜退屈な日々に別れ告げて〜
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ここは日本。

平和な国と言われているが、ここに住んでる僕としては毎日毎日事件が起こっているのに本当に平和かどうかすらわからない国。

そしてそんな国に住んでいるのは僕、黒谷ルナ。
とある事から精神病院で暮らしている事を除けば普通の14歳。

朝起きて、病院の皆の食事を作って、支度して、学校行って、やりたくも無い勉強をやって、部活やって帰って寝る。毎日その繰り返し。

世の中には普通でいい、と言う人もいるが、僕は普通すぎてつまらない。

笑顔で近づいてくる奴に愛想笑いで適当に返事。

「やっぱり凄いね!」と僕のことを何もわからない奴にも適当に返す。

飽き飽きする日常だ。

(なんかこう、アニメみたいな大冒険とか起きないかなー…)

というガキみたいなことを考える僕はそれ程退屈なのだろうか。

今日もそんな退屈な日々が続くのだろう、そう思っていた。


…アイツと出会うまでは。


今日は部活も無く早めに帰れた為、受験勉強をすっぽかして中1のときすっかり仲良しになった白鐘メル、という女の子と遊ぶ約束をしていた。

遊び場所はゲーセン。シューティング、アーケード、音楽、etc、色んなジャンルのゲームがある。

その中でとりわけハマっているのが、『pop'n music』というゲームだ。
九つのボタンを、リズムに合わせて押す音ゲー。

でも、譜面によっては難しい譜面もあるし、簡単とは言い切れない部分もある。
それに曲とかキャラクターが魅力的で、そこら辺もハマる理由なのだろう。

メルは「一番難しい譜面も出来るなんて、##ルナ2##は凄いね〜」と言うが、実際こう言うのは練習あるのみだから、練習すれば、ある程度出来るようになる。

家に帰り、サッと身支度を済ませ、自転車を走らせる。

メルは家がこのゲーセンに近く、先に来ていた。

「ごめん」と一言謝ると、メルはふにゃりとした笑顔で「大丈夫」と返してくれる。
やっぱりいい子だ。


ゲーセンの中に入ると、この季節の気温に合わせて温度調整されたエアコンの風が僕らの頬を撫でていく。

やはりお目当てはpop'n musicの台。

僕らは2人でここに来た時は大抵音ゲーでバトルする。
メルはまだ初心者な為、僕も低難易度を手を抜いてやっているが…それでもメルは勝てていない。

それでも笑う彼女は天使の様だ。
手を抜いている僕が情けなく思える程。

お金を入れ、バトルモードを選択する。

キャラ選択画面に入り、僕らは自分の使うキャラを選ぶ。

「今日は〜…MZDにしよっかな」
「珍しいね、##ルナ2##がそのキャラクター使うなんて。いつも小さい男の子のキャラクターしか使ってないから…」
「僕だってほかのキャラ使います〜。っていうかMZDも『一応』少年だし。
あと僕をショタコンみたく言うな」

そんな雑談を繰り広げる内に、バトルが始まっていた。
メルもそれなりに上達していたのか、手を抜いているとは言え、追いつかれそうになる所も多々あった。

それでも結果は僕の勝ち。
でもメルは悔しそうな表情は一切せず、ただ微笑んでいる。

「やっぱり##ルナ2##は強いね〜」なんて褒めているし。


あれから白熱しすぎたせいか、ゲーセンの窓をチラリと見ると、もう外は暗くなってきている。

病院の手伝い、完全にすっぽかしてしまった。

まあ、あの先生の事だから許してくれるよね。

そう思いながらメルに別れを告げ、自転車に乗って帰る。

ただいま、と言えばおかえり、という声が。

夕飯を作っているのか、いい匂いがする。
本来は僕がやるため、台所に行って手伝おうとした。
が、料理はとっくのとうに出来ており、とりあえずテーブルに運んでおいた。


夕飯を食べ終え、沸いた風呂に入る。
明日は部活、委員会がある為、帰るのが遅くなる。
先生にきちんと言っておかなければ。

風呂から出た後、歯磨きを済ませて先生に明日帰りが遅い事を伝えて部屋に入る。

小5の時から住んでいる部屋も、もはや見慣れて来た。

そのまま机に直行し、机に突っ伏す。

「あー、明日も(部活を除いて)退屈だなぁ…めんどくさい」

そうボヤくと、窓辺から声が。

「へぇ〜、退屈なのか。何だったら面白いところに連れてってやろうか?」

楽しそうな、少年の様な声。

自分の記憶に、この声は聞き覚えが無かった。

思わず顔を上げる。
そこには見覚えのある顔が。

「え、MZD…?」

そう、皆さんご存知ポップンの神ことMZDがいた。
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