長編小説

□黒ウサギとナイト様
2ページ/6ページ


俺の名前は黒崎壱騎。
ごくごく普通の男子高校生である。
特に変わった特技はなし。
顔も飛びぬけてイケメンってことはなく、中の中である。
つまり世に言う平々凡々である。
しかし、ある日突然そんな俺の平和過ぎる日常はあっさり崩れ去ることになる。
ちなみに俺は全くそんな漫画的展開望んじゃいない。

共働きの両親は朝は早く夜は遅い。
会社に泊まり込むことも出張もしょっちゅうあることなので、ほとんど一人暮らし状態。
今のところ目立った苦労もなく、炊事に洗濯に掃除までおてのものだ。
毎月の仕送りは滞ったことはないので、いかに節約して自分のお小遣いを増やすかを工面している。
ちなみに両親には内緒にしている。

今日の夕食は、学校帰りに寄ったスーパーで安売りしていた秋刀魚を食べた。
冷蔵庫に作り置きしていたサラダと、味噌汁。
野菜炒めを追加してお腹はいっぱい。
そしていつも通りに夕食後にはすぐに風呂に入り、テレビを見てゆっくりしてから、23時頃には就寝。
何も変わったところはない、普通の日常だ。

翌朝。
突然に俺を襲ったのは、あまりにも非現実的なことだった。

「うわぁあああああああああああ!」

鼻がくすぐられるようなそんな感覚に目を覚ます。
そこには、いるはずもない俺以外の人間が平然といた。
頭には黒色のウサギ耳をつけた女。
たまに道を歩いていたら配っている、ティッシュの広告に書かれているようなバニーガールか何かだろうか。

しかし、それにしては違和感を覚える。
ぴろぴろと意識的に動かしているとしか思えない耳はあまりにも高性能過ぎた。

「お、お前は誰だ」

とりあえず正気を取り戻し、ウサギ耳の女に声をかける。

「ボクはアルネヴ。壱騎からうまれた」

俺からうまれた?うまれた!?
俺は何の痛みも感じずに、こんな訳のわからないものをうみだせるのか!?
それはテレビに出れば億万長者になるのでは!?
…………いやいやいや、落ち着け俺。

「冗談はよしてくれ。それに勝手に人の家に入るなんて不法侵入だ。警察沙汰にしたくなければさっさと出て行ってくれ」
「ボクは壱騎がしなきゃいけないことが終わるまで帰れない」
「俺がしなきゃいけないこと?なんだそりゃ。お前、寝惚けてんじゃないだろうな」
「寝惚けてなんかない。壱騎が一番わかってることだ」

意味がわらないうえに話にならない。
早いところこの未確認生物をどうにかしなくてはならない。
いくら親が帰ってこないって言っても、永遠に帰ってこないわけではない。
しかしいくらこのウサギ女を見てもやっぱり夢ではない。
頭が痛くなってくる。
…………それより、今何時だ!?

「うわ!遅刻だ!」

俺としたことが油断した。
早く起きてもこんなものに構っていたら二度寝したのと同じだ。

「壱騎?」
「俺は学校に行く。お前はさっさと出ていけよ!」
「…………」

これが俺とアルネヴと名乗る妙なウサギ女との出会いだった。
波乱万丈の日々なんてこれっぽっちも望んじゃいない。
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ