長編小説

□神様到来
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この世のすべては神様が決めている。
なのに神様は目には見えない。
人間は愉快にも透明な神様に願いを捧げる。
それを見て神様がくすって笑っていようとも知らずに、真摯に願うのだ。

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某中高一貫学校。
そこの中校舎3年C組に通う男子生徒がいた。
ぼさぼさの鳥の巣頭に黒縁の眼鏡をかけた、オタク風のガリ勉男。
名前は神ヶ崎洸。
あだ名は見た目からダサ男と呼ばれている。

そんな彼は学校中で、ちょっとした有名人だった。
体育では、彼がいるチームは試合をする前から最下位が決定しているようなものだし、テストの結果は決まって下から数えた方が早い。
だが、そんな彼にはとても不思議なことがあった。
先生もクラスメイトも何度も見直してしまうほど、おかしなものだ。

黒板には縦書きの白い文字がずらりと並んでいる。
その隅っこにはクラスメイトのテストの点数が上位3名書き出されていた。
テストの時には恒例行事となっている公開結果発表。

1位の人の点数は100点、つまり満点だ。
2位94点、3位93点と続いている。
その1位の人物こそが、毎回クラスメイトの視線を独占する。

「神ヶ崎くん、おめでとう。今回も1位だわ」
「ありがとうございます」

取り柄のないダサ男、神ヶ崎洸なのだ。
国語だけは学年1位をキープし続ける謎だらけの神ヶ崎洸。
ぼさぼさの鳥の巣頭に黒縁眼鏡で、眼鏡の奥の瞳が見えないダサいやつ。
その目が何色なのか、どこを見ているのか予測がつかない。
どこか不気味な雰囲気の彼を、今日も誰かが「おい、ダサ男」と呼ぶのである。
 
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