長編小説

□ツクリビト
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2✕48年、日本。
新たな実験が成功したと、天才科学者のルーズ・ゴッド・シーファー博士が発表した。
博士の実験内容はいたって単純明快。
遺伝子レベルから人を形成するというもの。

研究に研究が積み重なり、ついに成功したのだ。
人工母体に埋め込まれたその生命体を徐々に成長させていく。
そしてついに誕生の日を迎えた。

人工母体から取り出された人を形成した人工卵。
産声をあげることもない、その生命体は完璧な人の形を模していた。
その子供にはゴッド博士の性をとり、レオン・ゴッド・シーファーと名付けられた。


レオン、3歳。

造り人と誰かが言い始めたことにより、ゴッド博士が行った実験はツクリビトと名され、世界各国でスポットライトを浴び続けていた。

レオンも造られただけあって、頭脳は明晰。
常に大人たちの視線を釘付けにさせていた。

そんな時であった。
この実験は人の命を軽視するものとして固く禁じられてしまったのだ。
ゴッド博士一行は極秘に逮捕、そして処刑されることになり、また、レオンは警察官に保護されることになった。


それから13年の月日が流れた。
レオンは16歳になっていた。
ほぼ軟禁生活に近い毎日を送ってきたレオンは、人々の記憶していたツクリビトが消えた頃ようやく外へ解放された。
しかしその横には微かにレオンの記憶に残るゴッド博士の姿はなく、レオンはただ独りぼっちだった。

右も、左も、わからない、そんなレオンはただ空を見上げ途方に暮れる。
白すぎるその肌に反射するのは人工光。

電気ばかりを使うようになった日本からはガスが消え、代わりに人工光というものが開発された。
主に、太陽光を用いて光りを集める方法だが、どうしても日が沈めば光りの補充ができなくなる。
よって生まれた人工光。
100年ほど前から日本で月を見ることはなくなった。

月の代わりに人工光で太陽を再現する。
よってこの世界に夜は来なくなった。
でもそれは人々の生活スタイルに合わせてあり現代人にとっては当たり前のことだから、なんら問題はなかった。

「あー」

歩き出す、レオン。
行く宛てもない。

彼の目に映る世界は、何色だろう。
最期に残したゴッド博士の言葉は、誰の耳にも届くことはなかった。
 
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