長編小説
□河川敷のダンデライオン
2ページ/22ページ
高いビルなど学校から少し離れてしまえばあっという間に見えなくなる。
ここはそんな不思議な空間をあちこちに所有する小さな町。
都心からそう離れているわけではないが、都心に住む人から見たら田舎に見えるだろう。
まあ、そんなことはどうでもよくて、その小さな町-奏鈴には夢見がちで、ちょっぴり変わった女の子がいました。
その女の子はよく、この奏鈴町が一望できる河川敷-竜千川に訪れるのです。
「ほっ!」
「はっ!」
「ほりゃあ!」
スカートをひらひらと宙を舞う蝶々の羽搏きのように揺らす女の子。
長い髪もさらさらと一緒に踊る。
初めにちょっぴり変わった女の子と紹介したが、その女の子は奏鈴町では有名な美少女であった。
たまたま通りかかった人がつい足を止めてしまうほどの容姿は、まるで天から舞い降りた天使だと写真におさめる者も少なくない。
「あっ!…………あーあ、いっちゃった」
ひらひらひら、と蝶々はどこか遠くへ飛んでいく。
それを残念そうに見送る女の子、朝霞きいろ。
この物語の主人公だ。
そして、そんな女の子を見下ろす青年。
「変な奴……」
後に、朝霞きいろの側近となることはまだ知る由もない。