長編小説

□31日間の自分戦争
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八月三日。

屋上では私と同じだと言ったイズホが一緒にいる。
イズホは好きな音楽を音楽プレーヤーで聞かせてくれる。
私の知らないアーティストがメッセージを届けようと歌っている。
中には有名なアーティストもいた。
でもどれも私の心を揺すぶってはくれない。
少しだけ残念に感じたことはイズホには言わない。

「けいか、見て」
「え?」
「ほらあそこ。フェンスの上に鳥がとまってる」
「鳥?」

イズホが私の顔の横で指をさす。
その指の先には鳥が二羽とまっている。
仲良さそうにお互いの羽を突き合っている。

「まるで俺らみたいだね」

イズホの顔が私の顔に影をつくる。
私はその夏、初めて愛のないキスをした。
たぶん夏の暑さにお互い気が狂ったんだ。

名残惜しく、結んだ銀色の糸がぷつりと切れた。
 
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