長編小説

□リミット・チルドレン
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第一章/制限ある命


舗装された道に草は生えない。
石ころすら転がっていない。
砂埃も舞い上がらない。
バタバタ音を立てて走れば、足の裏がすぐに振動に耐えかね痛みを訴える。

几帳面に等間隔に同じような家が連なる。
たまにオシャレな外観のショップがある。
町の中央の広場では今日も新鮮な肉や野菜、魚などが売られていた。
この町では基本的に食べ物はここに来ればなにかしら買える。
もちろん安価なものばかりだから、少し値の張るものは専門のショップに行く必要がある。
しかしそのシステム自体はどこの国でも同じだろう。

なんとなく人が集まりやすい場所。
年齢層がなんとなく決まっていたりもするだろう。
人は他人の顔色を無意識に窺うようになる。
それは年齢層が上がれば上がるほどそうするようになり、上がり過ぎれば下降する。
まるで面倒だが、暗黙の了解、敷かれたルールがあるから争いも少なくいられるのだ。

町で暮らすというのはその町のルールを肌で感じて従うということだ。
しかし表向きは同じような町でも、この町は少しばかりおかしな種族が生活している。

人は生きて死ぬ種族だが、生き続ける種族【無限の人(エターナルパーソン)】がその意である。
生き続けるといっても老衰しないだけで、致命的な傷を負えば死を迎えるし、病気になれば人並みに弱る。
病気が完治しないことはなく、病状によって決まった期間眠りにつけば完治する不思議な身体を持っている。
ある一定まで成人すれば、着いた職種によって体の成長を止められる。

町は壁と頑丈な門で閉ざされていて閉鎖的だ。
それは【無限の人】という種族がいることを、町の外の者に知られないようにするためだ。
町の外から人を招き入れる場合はとてもとても、それは気が遠くなるような書類の束が必要となる。
そして【無限の人】は一歩でも町の外に出れば、その種族でいたことを忘れ、記憶もあいまいなまま町にも戻れず、無駄に生きた分、あっという間に老いて死ぬのだ。

しかし中には生きることが苦痛になる者も現れる。
自らの身を滅ぼすまでに絶望した人はやがて腹の中で成長した闇に喰われる。
人の形を模した黒い生物がたびたび町には出没する。
その黒い生物は【禍者(まがつもの)】と呼ばれている。
それはこの町で唯一、老衰に似た絶命の方法だろう。
 
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