第一編
□気まぐれな王と厄介な王妃
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「ここが…宮殿のある都…!」
悠と明は、尹 大龍の屋敷からそれ程遠くはないところに位置する宮殿の近くに来ていた。
「私ここに来るの、夢だったの!私の様な平民には、手の届かない場所だし、何せ、簡単には来てはいけないところだから…。」
「そうなんだ…。」
「うん。だけど、悠のお蔭でこんなに近くまで来ることが出来た。それだけで本当に嬉しいのよ?」
「良かった。私も少しはこの国の人の役に立てたのかなぁ。」
「えぇ!勿論!」
ーーー
「於羅瑕、そろそろ出られませんと…。」
「そうだな…仕方ない、出ようか。」
「はい、於羅瑕。」
黎明国の主の名は劉 昭潤と言い、第10代の王である。彼は周りの重臣達に惑わされず、民に対して善政を敷き、25歳の若さで既に名君として称えられていた。
しかしそんな彼を悩ますものは、これから生涯の伴侶となる相手、つまり王妃なのだった。
「どうしてこうも付いておらんのだ…!」
「於羅瑕…。今更悔やんだところで、でございますよ?」
「そなたな…幼い頃からの仲だとはいえ、それは無いだろう。」
「ですが…私にはどうすることも出来ませんし…その様な権力、持っておりません。」
「あぁ、分かった分かった!行けば良いのであろう?行けば!」
「もう、やけくそになっておられますよね?」
「そうだが?悪いか?」
「私や尹様になら仰っても宜しいですが、張様に対してはその様な発言、お控え下さいね?」
「分かっておる。さあ、行くぞ…。」