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□そして彼はそっと扉を閉めた。
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「頼む頼む……金来て金来て金っ!!」

スマートフォンを机に、自分の両掌を何回も合わせて擦る。
そして数秒後に彼の目前の液晶画面上で最後に現れた色は……

「……っっあああぁぁぁぁぁぁぁぁ」

銀色だった。




「……仕事しろよ。」
そんな一人の少年の様子を約一分前から眺めていた風紀委員長は一言、立場として言うだろうことを予想そのままに言い放った。
ここは生徒会。入り口に立つ風紀委員長と会計の机に死体のようにうつ伏せているのは机の通り生徒会会計職の小田切。
そしてそれまでの光景をトッポを貪りながら見ているのは生徒会補助の俺、本田である。
「仕事ならもう終わってますわ」
二袋目を開けながら生徒会の敵と言われている風紀委員の長に現状の報告をした。
「小田切は今会計ではなくソシャゲ民としてガチャ中っすよ」
今回やけにガチャに命かけてるのは課金という悪い文明に取り憑かれてしまったからだろう。無課金勢の俺からしたら……まぁ「どんまい」としか言い様がない。
「どんまーい」
「……うぇっ、うぅぅぅぅ」
世に言う萌え袖というもので涙をぬぐい机をバンバン叩く姿は、課金の魔力を知らない……というかソシャゲすら知らなさそうな委員長には意味が分からなかったようで。
「……小田切はどうしたんだ?」
という率直な疑問を俺にぶつけてきた。
「きっと好きなキャラがガチャで出なかったんすよ。……な?」
確認ついでに小田切に顔を向けると、泣き声がさらに大きくなった。
「夏イベ……ガチャ……ニトクリス……来なかったぁあああ」
結構ガチ泣きぽい。
委員長は完全に引いてますね、これ。
そして今回彼のもとに来なかったニトクリスは先ほどの単発二回で俺のところに来た。二連続。二枚。しばらくは種火周回やわ。





ソシャゲ民会計の慟哭

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