導きの先(短編)

□そうだね
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「飛べる……っていいね。」
「さくらにも翼はあるし、飛ぶことも出来るだろう。」
「私のは常に羽ばたかないといけないから疲れるの。月は羽ばたかなくても宙に浮くじゃない。」
「……それもそうか。」
「月の羽、白く輝いてて飛んでても様になるなんて羨ましいな。」
「そうか………。」
優しげに微笑む月の考えることはあまり読み取れない。
言い当てようとしても流される。クロウさんに似ているわ。
「私は……さくらの透き通った羽は綺麗だ。だが…少し不安になる。」
それは私も…かな。太陽の光を受けて始めて光る月。
月は自ら光を放つことは出来ない。
そんな月みたいにユエもいつかは消えてしまうんじゃないか。誰かの光を受ける事が出来なくなってしまうんじゃないか…
ときどき、そんなどうしようもない不安に駆られる。
月も同じような不安を感じているのかな。
「明日は雨なんだって、雨じゃあ空飛べないな。」
「風邪をひかれても困るからな。」
「次に晴れた日は少し遠くまで飛んでもいいかな?月と一緒に、あとケロベェも。」
「あぁ、付き合おう。」
「どこまでも自由に飛んで……広い大地を眺めて……疲れたらケロベェに乗って一休みしたり、なんかね。」
クロウさんも飛べたらきっともっと楽しいはず。
そうだ、ケロベェに乗せたらいいんだ。
…でも、クロウさんは一緒に来てくれるかな……
「……さくらここで寝ても風邪をひくぞ。」
「連れてって〜……」
少し甘えてみる。縁側からベットまで運んでもらえるように両手を広げる。
「…………仕方ないな。」
「ふふっ、ありがとう、月。」
私が輝かせる太陽の存在になれたらこんな不安消えちゃうのにな。
いい夢…見れると良いな。
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