導きの先(短編)

□ぬくぬく
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「さっ寒い!!!!!」
ガバッ!
「朝ご飯が冷めるぞ。」
「お布団から出たくない…………!持ってきてよぉ…」
やれやれ、人は寒いのが苦手な様子。
少しは涼しく感じるが……恐らく寒さを感じていないだけ。息は部屋の中でも白くなる。今日の最高気温は6℃。
現在8時、まだまだ冬の空は太陽が出たところ。辺りは昨夜降ったであろう雪がどこまでも白く輝いている。
「お腹すいたなぁ………クロウさんの美味しい朝ご飯っ!温かいお味噌汁!んー…お腹がぁ………」
「なら、布団から出たらどうだ?」
「分かってないなぁ月は……お布団は魔!人々の心を捕らえて離さない存在なの…
冬のお布団は恋人…!」
「………恋人…」
しばらく二度寝をしようと目を閉じていたが、何かを閃いたのかさくらは布団を胸の前で閉じ、くるまったまま立ち上がった。
「そうだよ、これで良いんだよ!おお、何と素晴らしきこと…!」
「汚れる」
そう一言で突き放し、さくらを後ろに向かせ首元から布団を奪い取った。
そして返さないという意思表示に腕にかける。
「サッッッッ…………むぅぅぅぅいぃぃぃぃぃ…!!!!!」
さくらが面白い程体を縮こませた。
「ちょっちょ、ちょっと何考えてぇ…!!ハッ!さっさむっ!」
「……………」
寒さに耐えかねて布団をかけた腕の中に収まろうとしてきた。
「広間の方が暖かいぞ」
ぐっと腕に力を入れ絶対に動かせないようにする。
「暖炉も…!暖かいっけっどおおお!」
全体重をかけて開けようとするが、私にとっては問題にならない。どれだけ引っ張ろうとも疲れるだけなのだから、諦めて広間まで行った方が早いのでは…
「そう、そうだ!ジャンケンで決めましょう!?私が勝ったらお布団返してね!」
「負けたら広間まで行くのだぞ。」
「ジャンケン!ポンッ!!!!」
「…………私の勝ちだな。服は暖炉の前で温めてある。早く行くことだな。」
「うっ………負けてくれたって良いのに……」
ズーンと気が重そうに広間まで歩いていった。
それを見送って確認し布団を綺麗にベットへかけ直す。
ついでに部屋の掃除もした。

終わってから広間に向かうと主が暖炉の前でくつろいでいた。
「クロウ、やることはありますでしょうか…」
「暖かいよ、月もあたればいい。」
「うんうん、あったかいよ」
なんと………呆れたことか。主の膝の上に座っているとは………
「クロウ………その、重たくないですか?」
「なっ!」
「私は大丈夫ですよ。あぁ、そうだ。これでケルベロスの毛並みを整えてください。」
渡されたのは動物ようのブラシ。
「チェッ、月か……」
「私じゃ不服か。」
「別に…」
座っているケルベロスの背中を撫でるようにブラッシングする。

背中をとき終わるくらいにさくらが徐に私の髪を解き始めた。
「何をしている?」
「ふふふ………ちょっとお遊び。」
主は……と見ると目を閉じていた。
触られても特に困ることはないので好きにさせてやることにした。

「出来たっ!」
「プフッw」
「……………」
「私にしてはなかなかうまく結えたわ!」
自分の髪を触ると三つ編みにされていた。
「よかったなぁぁww月wさくらに髪剪定してもらえてww」
「スッキリとした感じで良いんじゃない?」
ニコニコと嬉しそうにさくらは笑い、満足そうだった。(ケルベロスは後で仕打ちしてやる。)
「今日は、1日このまま過ごすとしよう。」
「えっ、本当?嬉しいなぁ…似合ってるからね、可愛いよ月!」
「おー可愛いw可愛いwwあっはは!」
「私に可愛いなど………」
褒めているのか、からかっているのか、分からないが一生懸命結ったものだろう。解くのも気がひけるのでこのまま過ごした。(ケルベロスには茶髪三つ編みの鬘を乗せてさくらに大笑いされていた。いい気分だ。)
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