導きの先(短編)

□Honey
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季節は梅雨。仕方ないとは思うけど、やっぱり嫌になってしまう。今日も今日とて雨。朝からしとしとと降っていた。
外に出たくても絶対に出ない。いつだったか、どうしても外に出たくて傘もささず外に出て、雨にうたれていたら月が飛んでやって来てすぐさまお風呂に連れて行かれた。そんな面倒な事にならないようにしたい。
何もする事がなく、ずっと窓辺に頬ずえをついて外を眺めていた。
こういう日が続くなら手芸の物でも買ってみようかな、と考えてみる。
「…ずっとここにいるのも冷えるぞ。」
ティーカップを持った月に叱られた。
「クロウからの差し入れだ。」
傍にある机にミルクティの入ったカップを置く。
「ありがとう。」
外を眺めるのを止めて熱いミルクティを飲む。
「外に出よう、などと思っていなかっただろうな?」
「まぁね。また叱られるのは嫌だし…」
「学んでいるのだな。」
「なっ、わ、私だってそれ位覚えてます!」
さりげなく馬鹿にしてきた。許さない…いつか仕返ししてやるんだから。
「私は雨の日は好きだ。」
「…どうして?」
「そうだな…雨が地に落ちる音や静けさというのもあるが、外に出る事がないからな。」
あれ?月って外に出るのは嫌いだっけ…?
「……クロウもお前も外に出ないだろう?私はその方が安心できる。何処か私の知らない場所に行かれる事がないのだからな。」
後ろからそっと首元から腕をまわされる。
「心配性な月らしい考えだね。」
「おかしいか?」
「ううん、そんな事無いよ。私もそうだなぁ…」
雨の日は散歩や遊びに行く事が出来ないけど、こうやって月と一緒に居られる口実として、雨が降ってるからって言って、ずっと居られることが出来るから…
「雨の日も良いかな…」
最後に残っていたミルクティを全部飲みほす。
「…もう一杯飲むか?」
「ううん、お礼にクッキーでも焼こうかなって。」
椅子から立ち上がり台所まで行こうとしたが、体が持ち上げられた。
「…?!」
「カップを落とすな。」
「う、うん……」
気紛れに起こした行動だと思うけども、驚かずにはいられない。
面白くて嬉しくて、思わず口が綻ぶ。
月はそんな態度が気に入らなかったのか少し不機嫌そうな顔をした。
「手助けしないぞ。」
「えっ!そ、それは困る……」
少し意地悪をしたからか、不機嫌そうな顔ではなくなった。やっぱり仕返しをしないと…!


「どうしたんや?さくら。ボーッとして。」
「どこか調子でも悪いの?」
「…え………私は元気よ、桜ちゃん、ケロベェ。」
「…思い出しとったんか?」
「うん、まぁね。」
「さくらちゃん寂しい?」
「………寂しくないって言ったら嘘になるかな…」
「大丈夫だよ、ひとりぼっちじゃないから!」
「ありがとう………そうだ、ちょっと待っててね。」
「ほえ?」
とても懐かしい事を思い出した。
月に会えない寂しさを少しでも埋めたかったのかな。
気づくとホットミルクを作っていた。
でもこのミルクを見ているとあの日に近づいた気がして、少し嬉しくなった。
「はい、どうぞ。今日は寒いからね。」
「ありがとう!」
ケロベェは月の居場所を知ってる筈なのに私には何も言わない。もしかしたら何か言えない事情でもあるのかもしれない。
でもきっと会える日を待ってる。また楽しい日を過ごせるようにと大事にホットミルクに口をつけた。



<EDのHoneyをイメージにして書きたかったのですが…うまく行きませんでした…>
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