羽に包まれて…(物語)

□Two
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「なぁ、わいと手合わせしてみぃひんか?」
「手合わせ?」
「そうや、わいにその魔法を当ててみるんや。あ、でも力加減は調整してぇや?」
「うん、分かった!当ててみせるわ!」
さくらに手合わせを申し込んだのは、ただそれだけやなくて見極めも兼ねて見守りたかった。
月が相手しても大丈夫か、魔力を使いすぎんようにしとるんか。わいは選定者、だからわいがちゃんと見てやらんとアカン。
「じゃあ行くよ!」
「おっしゃあ!来い!」

「あ、当たら…ない………はぁ…はぁ……」
「どうしたんや?もう終わりか?」
「ま、まだ諦めない!」
どうしたら……どうしたら当てることが………
ケロベェは逃げ回るし……私の体力ばかり取られていく。
……逃げる場所を失くす……弱い魔法じゃケロベェの炎で弾かれる……いや、もしかしたら……
「クロウの後継者さくらが告ぐ!ウォーターよ!あの者を囲え!」
ケロベェに向かってウォーターを放つ。
四方から渦巻きの様に囲えば力は分散する筈!
暫く赤い色が見えたが…
「わっ!これ抜けれんやつや!こ、降参や!」
降参という言葉が聞こえてすぐにその手を下ろした。
ゆっくりと空から降りてくるケロベェに急いで
「私勝ったよ!ね、クロウさんの後継者候補になれたのかな?!」
半ば突っかかる様に言い立てた。
「お、落ち着きいや!お前は元から候補やろ?」
「……そうだった!」
「でも…そうやなぁ……そろそろ良いかもしれんなぁ。」
あっちは気が乗らへんと思うけど。
「じゃ、明日のお片付けとお掃除当番はケロベェね!」
「何でそんな話になんねや?!」
「よろしくね。」
「さくら!!」
凄い勢いで月が向かってきた。ケロベェがそれから守るように前に立った。
「安心しぃ。こいつはちゃんとやりきったで。」
「ケルベロス…!」
「次は月の番やで?逃げとったらアカンのとちゃうか?」
「何故選定した?!」
「なぁクロウ?」
「答えろ!!」
「月落ち着いて…」
「さくらは黙っていろ!!」
剣幕と魔力の波導にすくんでしまう。こんな怖い月は見たことがない。
「……何でってなぁ…クロウが言うとるやろ?クロウも長あないんやで?それともそんなにさくらを信じられへんのか。」
「………………」
「も、もしかして、ケロベェと手合わせしちゃいけなかったのかな…?ごめんね?でも私は大丈夫だよ、元気!」
「さくらは最後まで落ち着いとったで?わいが選定したんや。今度は月が審判してやらな、さくらが可哀想やで。」
「…だが………」
確かに私が審判しない限りさくらは正式な後継者にもなれず、努力が無駄になる。
だが、行うとしても月の出ない日を選べばさくらはどう言うだろうか?
きっとどうして手加減したのか、などと怒ることだろう。
「クロウ……やらねばならないのですか。」
「………そうですねぇ、少しは時間があるので覚悟を固めなさい。」
「…………………」
それは次の満月まで、という意味か?日にして20日足らず………
「……………許せ…さくら………」
その日までに私はさくらと向かい立てられるのだろうか…
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