御狐様の日記帳
□五話
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次の町へ行くってことで、また新しい車を手配して、荒野をドライブ!果てしなく荒野だぜ!ってワイワイ楽しくいきたいところだけど、そんな余裕はまったくない。なんせ、絶賛フキゲン中なのだ。
ベッドに入ってナイフでグサリの為に、野外で全裸になって四足歩行、オモラシプレイをやったってのに、一緒にベッドの約束が果たされてない。そのことを抗議したけど、軽くあしらわれたのだ。
「ベッドなら入ったじゃあねーか。お前を拘束してる間、一緒のベッドに居たぜ」
『そうじゃなくて!一緒に寝るの!』
「一緒に"入る"とは聞いたが、一緒に"寝る"とは聞いてねーよ」
『……ハッ!!?』
「まっ、一緒に寝てほしいなら次のプレイを頑張るこった」
『ぐぬぬっ!人の揚げ足とるなんざァ、見損なったぜ、ジョータロー!!』
「……名前で呼ばれるのもいいな。今から名前で呼べよ」
『誰が呼ぶか、この変態鬼畜野郎!!』
それから、ご主人様と皆さんと一言も口をきかずに過ごしてる。でも、ムスッとしていても、気にもしないで上機嫌で過ごしてるご主人様が腹立たしい!
狭い車内の後部座席の真ん中に座って、尻尾をバタンバタンと振ってフキゲンアピールしても、その他方面がざわつくだけだった。
「キツネっ子ちゃん、ムスッとしててもか〜わいい〜!反抗の意味で噛んでくれねーかなぁ」
「止めろ、ポルナレフ!お前がキモイ発言すればするほどあの子が警戒するだろ!」
「……オジイチャンはこのオニイチャンと違って怖くないじゃろ?尻尾にモフモフ、やってもいいかのう?」
「俺のペットに気持ちの悪りぃこと言ってんじゃあねえ、埋めるぞ」
ジョースター御一行ってのは、人の怒りを煽るのがとてもお上手だ。誰も可愛いキツネを宥めようとしねーのな!おかげさまでフキゲングラフは右肩上がりだぜ。
ムッスゥ〜っとしたまま、皆さんをスルーしまくってると、「あー運転疲れた。ちょっと休憩しようぜ」と、ポルナレフの提案で、レストランっぽい所に寄ることに。
店内はテーブル席が8つ程度、こじんまりしてて、けっこう古くさい。荒野が続く道の途中のレストランだから仕方ないんだけど。
席について、飲み物だけを頼んで、ちょっと用を足しにお手洗いへ。奇跡的にキレイなトイレで感動した。
こんな古くさいレストランのトイレが水洗式!TOTOじゃん!外観や内装じゃなくてそこにこだわるの!?大正解だよ!ここの店主、グッジョブ!
さっきまでのフキゲンもブッ飛ぶトイレにニコニコ笑顔で用を済ませて、手洗い場で手を洗おうと袖をめくった。
『…あ…』
手首に赤い痕が残ってるのが見えた。拘束された時の痕だ。まさかと思って、目の前の鏡で首筋を確認。くっきりと歯形がついてた。
その痕を見ただけであの時の痛みを思い出して……首を撫でた。初めてイッた。真っ白になってドロドロでフワフワで、また欲しいって思うほど、気持ち良くて。次はどんな事をするんだろう。期待してしまう。
『ハッ!!?ダメダメ!ハマッちゃダメ!憎き敵は要注意!』
イカンイカン!確かに私はマゾヒストってことが暴露されたけど!それは性癖の話であって、私の全てはDIO様だけのもの。これは揺るぎない事実なの。
それに!揚げ足とった憎き敵を許すことは出来ん!ベッドでグサリの為に頑張ってきたのに無効にするなんてあんまりだ!
『でも、……次のプレイを頑張れば……次のプレイ……また……あんなに気持ちいいことされたら……』
「されたら?」
『……はまっちゃうああああ!!?』
ご主人様の声が聞こえて顔を上げると鏡にご主人様が写ってたので驚きで心臓止まるかと思った。
『な!?こ!?じょ!!?』
↑(何で!?ここ女子トイレだよ!?)
驚く私をよそにご主人様はトイレ内をキョロキョロと見回してる。その様子が不審者みたいで、とても冷静になれた。
『ここ女子トイレなんだけど』
「知ってる」
『わざわざ見にきたの?そんなにあれが好きなの?』
「……俺がオモラシプレイ好きな変態野郎みてーな言い方、止めろ」
『え!?違うの!?』
「……この店は女のトイレを盗撮するのが趣味らしくてな。……テメー盗撮されてたぜ。今、ジジイ達がリンチにしてる。俺はカメラの回収に来た、それだけだ」
『…………』
「その疑いの目を止めろ」
疑わずにいられないようなことしかしてないくせに。って喉まででかかったけど、ご主人様が一台のカメラを壊すのを見て、盗撮は真実だったんだと、疑ったことを反省した。
「知らず知らずの内に盗撮されてた気分は?」
『キレイなトイレでも防犯がなってないなら意味がないなと思った』
「もっと他に恥じるところあるだろ。見られてたんだぜ、イロイロと」
『その恥じらいを遠慮なく破壊していってるヤツがよく言うよ』
「ハマりそうなほど好きなくせによく言うぜ」
せっかくフキゲンが直ったってのに、またも揚げ足とったご主人様。ムスッとした顔でご主人様を睨むと、バチッと目があって……バッと顔をそらした。あの一瞬で唇に目がいってしまったのだ。
あの唇が首に触れて……あの痛みを……真っ白でドロドロでフワフワな感覚を……、それを思い出せば出すほど、身体がカァッと熱くなっていく。
ハマりそうなんじゃなくて、もうすでにハマってる。思い出しただけでこんなにも……あの感覚を求めてしまってる。それをご主人様が見逃すワケがない。
「……やるか」と、カメラの回収をしながらご主人様がポツリと呟いた。
『……へ?何を?』
「……次のプレイ」
『……次の……』
「……どうする?やるんなら今からやるぜ」
『……今…から…』
「……やるか、やらねーか、お前が決めろ。……もし、やるんなら……覚悟しろ。ドギツイやつでテメーを落とす」
ご主人様が言うほどのドギツイプレイ。オモラシや拘束よりもドギツイやつなんて想像つかないけど、……ゴクリと喉がなった。
コワイけど、期待してるのだ。身体が、心が、甘美な痛みを……あの感覚を求めてだしてる。
でも、そうだ、これをこなせばご褒美として一緒に寝てもらえる。ご主人様を葬る作戦の為に、……そう!これは!ベッドでグサリ作戦の為に必要なプレイ!何もハマッたからじゃあない!
『…………やる』
「……やる?」
『精一杯やらせていただきます!』
「いい返事だ。……こっちに来い」
言い訳が出来た私は、ご主人様に言われるがまま、個室トイレの中へ。「座れ」と言われたので便座に座った。
すると、ご主人様は、ポケットから縄の束を取り出して、私の手に持たせた。一センチにも満たない太さの縄だ。少しケバ立ってるけど、手で触った感じは痛くないし、手入れされてる感じがする。
『何で縄?』
私が縄を触ってると、ご主人様の指が首を撫でた。
「この縄で、お前を縛る」
『……は?』
とんでもねえプレイ内容に思わずご主人様を見上げた。顔がマジだった。
『……しばッ、……縛る!?』
「ああ」
『……縛る……え!?……縛るの!?』
あれ!?縄って誰かを縛る為のモノだっけ!?縄ってアレだよね、モノとか縛るヤツだよね!?私の身体ってモノ以下ってこと!?それとも同等!?
そもそもですよ!縄で身体を縛るって何なの!?緊縛は日本独自の文化って聞いたことあるけども!罪人を捕らえるっていう歴史がそうさせただけだけども!日本人って変態なの!?もうこんなの嫌だ!
でも何が嫌かって!根っこが変態ドMなせいで、この緊縛プレイを受け入れ始めてしまう、エロいことに好奇心満載の自分が物凄く嫌だァァ!!
「……覚悟しろと言ったはずだが、……お前じゃさすがに無理か。……他をあたる」
うだうだ考えてる私の手から縄を取り上げてきたので、とられないようにギュッと縄を握り締めた。
『やる』
「無理しなくてもいいんだぜ」
『やるったらやるの!だから……他とかないの!次言ったら噛みついてやる!ガウガウッ!』
「……」
『はよ!』
フンッと息を荒くして待ってると、「服を脱いで立て」と言われたので、下着一枚になって、便座の上に立った。
今から縄で縛られる。そう思うと、何故だかドキドキが止まらない……なんて、やっぱり変態ドMだ。我ながら情けないぜ。
「やるぜ」
『…はい…』
一本の長い縄を、首にかけられた。それが始まりだった。
少しざらついた縄が身体を擦っていく。くすぐったくて、でも、皮膚を滑る縄の摩擦で、擦られた場所が熱くなる。縄に擦られただけで……息が荒くなって……興奮してるのが自分で分かる。
荒い息をそのままに、前側に縦四つのコブを作っていく様子を見てた。すると、その縄が股を通ってお尻へ。『へ?』って思う前に、ご主人様の手が背中に回って、ギュッと抱きしめられた。
今からやることが分かった。首から垂れたコブ付きの縄を、股の間に通して縛り上げる。首から股、お尻を通って背中へ縄を巻き付ける気なのだ。
縄がアソコに……荒かった息がもっと荒くなる。ご主人様の背中に腕を回して、服をギュッと握り締めると、縄がグッと身体に食い込んだ。
『……ぁ…は…ァ……』
「…ッ…は……」
ギュッと縛られて吐息が漏れる。ご主人様も同じだ。……酷く興奮してる。それがよく分かる。手から……縄から……伝わってくるんだ。
丁寧に、だけど、荒々しい熱がこもった縄が、身体に巻きついていく。菱の形を作りながら、私の肉を縛り上げていく。
呼吸をするとギッと縄が食い込む。身体の輪郭を縄が作って……ギュッとキツく輪郭を固定して、少しざらつく縄が、身体のラインを……自分でも知らないラインを浮き彫りにしていくんだ。
それはきっと、女の肉の輪郭。自分の身体なのに、自分でいやらしく見えるほど、艶かしいほどの、女としての輪郭。
「……出来たぜ」
息苦しさで涙が溜まる。縛られたところがキツくて熱い。身体中が火照ってしょうがない。
そんな私を、ご主人様が見た。縄に縛られてる私をジッ見つめて、歪んでる口元を耳に押し付けてきた。
「お前は最高に綺麗だ」
縛られてないはずの心に、言葉の縄が巻き付いた気がした。