御狐様の日記帳
□おまけの話
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ジョースケとの仲も落ち着いた。ママは大喜びで機嫌を直してくれた。ずっとお休みを頂いていた仕事にも戻り、いつも通りの日常が戻ってきた。
今日はジョータローに呼び出された。ジョースケも一緒に来いってことなので、2人で待ち合わせのホテルに行った。
少し前まで当たり前に座っていたソファーに腰掛ける。ジョータローが居るっていうのに、隣に腰掛けたジョースケが手を繋いできた。
『あらやだジョースケってば見せつけちゃって〜。ヤキモチ妬いてるの〜?』
「べ〜つ〜に〜」
『食べちゃいたいほどかわいいから、あとでお姉さまがいっぱい食べてあげる〜』
「食べられるの間違いじゃねーの、お姉さま〜」
「そういうのはあとでやれ。こっちは時間がないんだ」
それもそうだ。さっさと用件を終わらせてジョースケを食べようと思い、ウンウンと頷いて話を促した。
用件は、スタンド使いを探しているから協力してほしいとのこと。ジョースケは危ないから関わるなって止めていた。確かに関わりたくないけど、ジョータローに恩を売るチャンスだと思った。
「でもよぉ、こいつにそーいうことが出来るとは思えねーんスけどね」
『何を言ってるのよ。キツネ様のことを舐めてもらっちゃあ困るわ!ジョータローご一行を殺す為に単身で乗り込んだのよ!』
「簡単に捕まったくせによく言うぜ」
『あれは捕まえられてあげたの!どれもこれもあんたを殺す作戦だったの!』
「わざと俺に捕まって自らペット宣言。拘束され、好き放題され、緊縛や……ああ、お漏らしするのもわざとだったのか。どれもこれもお前から積極的に誘ってきたプレイだったが、まさか作戦の一部だとは思わなかったぜ。やれやれ、けっこうマジで変態なんだな、この淫乱変態ドMくそキツネ」
ジョータローの吐き出した真実に拳を震わせた。ジョースケと繋いである手もブルブルと震え出した。チラリと伺うと、鬼の形相のジョースケがいた。とりあえず見なかったことにして、話を戻した。
『んで、誰を追っているの?』
「特定はしていないのだが、この町に潜んでいるスタンド使いを探している」
『スタンド使いを?何で?放っておけばいいじゃん』
「そういうわけにもいかない。スタンドは一般人には見えない。お前と同じく、それをいいことに悪さをするヤツがいる。何かあってからじゃ遅い」
イチイチなことを言ったジョータローに舌打ちをした。全くもってその通りで言い返せないから舌打ちくらい許してほしい。
『でもそれって途方もないじゃん。この町の人口知ってる?その中からスタンド使いを探すとか、砂漠で砂金探すようなものじゃん』
「スタンド使いはスタンド使いとひかれあう、らしい。それは俺も体感している。もちろん仗助も、俺達の知るスタンド使いもな。何も詳しく探れと言っているわけじゃあない。もしそういうヤツに会ったら教えてくれ。それだけだ」
『スタンド使いに会ったらジョータローに連絡すればいいってこと?』
「そうだ」
すごく簡単なことをするだけでジョータローに恩を売れる、これを断る理由もなく、ドヤ顔でバシィィッと指さした。
『仕方ないわね!とことん無能なあんたの代わりに、この優秀なキツネ様が手伝ってあげる!でも報酬はいただくわよ!』
「何だよ」
『んー……そうね、床に這いつくばって水でも飲んでもらいましょうか』
「ああ、それでいい。でも間違えるなよ。指揮は俺、俺の命令には従ってもらうぜ」
『あらやだ無能のジョータローさん。無能のくせに指揮官を気取りたいの〜?プークスクス。まぁ、いいわ。指揮官を気取りたい無能のジョータローさんに従ってあげる〜』
「交渉成立だな。おい、今すぐこれを買ってこい」
1枚の紙を渡された。45センチの水槽とか、ノートとか、食材、日用品等の商品名が載っていた。よく分からなくてジョータローに聞いた。
『これってただのパシりじゃない?スタンド使いを探すことに協力したけど、あんたのパシりになるつもりはないの。そこんとこ分かってる?』
「お前を1人で買い出しに行かせてみようかと。もしかしたら誰かと出会うかもしれない」
『んなことあるわけないじゃん』
「いや、それが本当に、簡単に出会ってしまうことを疑うほどに、すぐに出会ってしまうんだ」
『マジ?』
ずっと黙っていたジョースケに確認してみたら、鬼の形相のまま頷いていた。鬼の形相は気になるところだけど、さわる神に祟りなし。そこは知らんふりした。
ジョースケが頷くくらいだもの。疑うほど簡単に出会ってしまうのかもしれない。それならそれでラッキーだ。ジョータローが床に這いつくばって水を飲む姿を拝められる。
『いいわ。たかがおつかいだもの、行ってきてあげる』
「そうか、助かる。ああ、そうそう。リストに載っているパン屋のサンドだが、早く行かねーと売り切れるぜ。たかがおつかい1つ、失敗することは許さないぜ。もし失敗したら、床に這いつくばって水でも飲んでもらうぜ」
『あら指揮官様〜、たかがおつかい1つでかわいい部下に罰を与えるつもりなの?』
「自分で認めるほど優秀なキツネ様なんだろ?たかがおつかい1つ、出来ないってことはないだろうよ」
『ぬぬぬぅ』
「ほらほら、どーした。早く行かねーと売り切れちまうぜ」
『やっぱりジョータローなんか大嫌いッ!!』
「そりゃどーも」
ジョータローが指定したパン屋のサンドは昼前には売り切れるほどの人気っぷり。時計を見ると11時を指している。ウダウダ言ってる場合じゃない。
他にも買い出しする物はあるが、これが最優先。早く手に入れないと、失敗したらマジで床に這いつくばらせて水を飲ませるつもりだ。そーいう男なのだ。
こんな男と契約結ぶんじゃなかった!と心底後悔しながら、ホテルを飛び出し、全力で走った。
お店に着いてすぐ外から中を伺った。混雑する前に間に合ったらしく、まだ人が少ない。これならサンドもあるやと、安心したらお腹減りまくり。ついでに私とジョースケの分も買っていこう。やっぱりコロッケパンかなとか、久しぶりのパン屋さんにテンション上げて店に入った。
甘い匂いに、クロワッサンもいいかもなんて思いながら店内を物色。とある男性が目に写った。そして釘付けになった。
パン屋さんに来るサラリーマンは珍しくないんだけど、何というか、サラリーマンってよりも変態さんのようだった。一人でニヤニヤしながらブツブツ言ってる。一昔前のDIO様をストーカーしていた私のようだ。
気配を消すことに長けてるので、ソーッとサラリーマンよりも変態さんっぽい人に近づく。すると、やけにリアルなマネキンの手を持って、それでカツサンドを触り出した。
「ほら……どれが食べたい?」
衝撃的光景に固まってしまった。
「とても柔らかいパンだね?」
サラリーマンよりも変態さんっぽい人どころか、ジョータローとどっこいレベルの変態だ。杜王町っていつから変態の住みかになったの?
しかしリアルな手だ。骨とか肉の組織とかリアルに再現されてる。でもニセモノだからって、それでパン触らなくても……待って、それって買って帰るんだよね?放置とかしないよね?
袋菓子でも誰かがベタベタ触ったあとって嫌な気分なのに、ラップで包んだだけのパンとか絶対に食べたくないんだけど。ラップって防御力低そう。しかも中身がカツサンド。
「しまった……ラップを突き破ってソースをしみ出させてしまったぞ」
そーいうことになるから触っちゃダメって小さな頃に学ばなかったの!?私はママとジョースケに習ったよ!?これだから我の強い変態はイヤなのよ。
「……シャブシャブ……」
うわっ、マジで変態だ。ソースがマネキンの手に付いたからって舐めやがった。怖い怖い。でも一番怖いのは、ガチな変態さんを目撃しても冷静な私だ。やっぱりジョータローの性癖に付き合ったせいだ。手を舐めるよりもおしっこプレイのがクルものあるし。
そうよ、大体ね、鬼畜変態野郎のせいで普通のセックスがよく分からなくなってしまったの。そのせいでヤリマンビッチになっちゃうし、セックス上手じゃないと気持ちよくない体になっちゃうし。
でもジョースケはとてもお上手。しかも真性のドS様。普段は優しいのに、そのキャップったら。でもSMプレイに慣れてないから……って、おいいいい!!あの変態野郎、パンのラップ破るだけ破って放置して行きやがった!
どうするのこれ!?出来立てホカホカだったのに、あんたの性癖のせいで廃棄もんのパンに成り果てたんだよ!?変態プレイして事故ったんなら責任取りなよ!誰かが間違って買いでもしたら……
……あ、そうだ。どうせなら廃棄もんになったパンをジョータローに食べさせてあげよう。変態の責任は変態が取らないと。プークスクス日頃の行いが悪いからキツネ様に意地悪されちゃうのよ。ざまーみろ。
『これください!』
「はーい、……あら!これ破れてるわ!ごめんなさいね、すぐに他の商品と交換するわ!」
『ううん、違うんです。それ自分で破っちゃって……ごめんなさい』
「えー、でも……申し訳ないわ」
『いいえ、お気に入りなさらず!むしろこれがいいんです!お願いします!』
「わかったわ。でも、値引きするわ」
『ありがとうございます!』
どうなることかと思ったけど、今日は本当にイイ日だ。ジョータローにも嫌がらせが出来る。ああ、何て幸せで愉快な日なんだろう。