キミの知らないウソ
□11話
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ブチャラティさんはみんなを連れてヨットハーバーへ向かった。ヨットを借りて出発したのはいいけど、目的地もお仕事の内容等々を何も知らされてない。
そのうち言うだろうと、あまり乗ったことのないヨットを見学。大して何もなかったから手すりに掴まってボケッと海を眺めてると、新入り君のジョルノ君が隣に来て声を掛けてきた。
「ミスタさんのお相手しなくていいんですか?」
『今、お仕事中だよ』
「小さいのはミスタさんだけなんですね」
『ジョルノ君まで何なの!最近ミスタ潰しでも流行ってんの!?』
「みなさん、ミスタさんが羨ましいんですよ。小動物みたいな彼女と仲良く戯れてるから」
『小動物?かわいいウサギみたいな〜?』
「あ、……いえ、……誤解を生んでしまったようですみません。そうですね、タヌキみたいな感じです」
『タヌキだって可愛いよ!!』
「そうですか?」
イチイチ一言多い新入り君をキッと睨んだら肩をすくめた。でもそのあとに、すっごく真面目な顔してエグい質問をしてきた。
「あなたに僕の夢を教えました。普通なら上に報告してもおかしくないことを。しかし、あなたはそれをしない。……味方、そう認識していいんですか?」
ギャングスターを夢見る新入り君は味方集めをしているらしい。でも、大層な夢を教えてくれたけど、私は別に新入り君の味方じゃない。任務となれば庇いもするが、それとこれとは別もの。そこを勘違いしてもらっては困る。
『ブチャラティさんがそう命じれば新入り君の味方するし、ブチャラティさんがダメだって言えば味方しないよ』
「あなたのボスはブチャラティということですか」
『そうだよ、私のボスはブチャラティさんで、あの人に全てを捧げてるの』
「じゃあ、あなたは僕の味方だ」
『んー、でも期待しないでね、ブチャラティさんが命令しない限り動かないポンコツだよ』
「そうなるとミスタさんの立場がまるでありませんね。実は本命はブチャラティじゃあないですよね?」
『だ〜か〜ら〜、仕事とプライベートは別ものって言ってるじゃん』
「はは、堂々と浮気宣言ですか。やりますね。ミスタさんが小さくなるわけだ」
『あんたも人の話を聞かない系なの!?』
何を言っても、浮気だ二股だとイチイチうるさい新入り君に能力を使ってボディブローをお見舞いした。「……え、え?何ですか今の。どんなスタンド能力ですか」と驚く新入り君を知らん顔してると、ブチャラティさんが大声を上げた。やっと今回のお仕事の内容を教えてくれるらしい。
今回のお仕事は【亡くなったポルポの遺産を手に入れること】。遺産の在処をブチャラティさんが知っているらしく、それを手に入れてボスに献上、出世っていうシナリオだ。
目的地はカプリ島。そこに遺産がある。しかも6億円。いっそのこと私が奪って逃走したいっていう邪な心は胸にしまって、でも6億円っていう夢のような大金を手に入れた自分を想像してしまう。6億あれば……うふふ。
にやける口元を隠しながらも6億円の夢を見てると、何か突然グサリと何かが刺さって、『ふぎゅ』って声を出したところで、意識が完全にブッ飛んだ。
*****
パチリと瞼を開けると、ヨットの上。座ってたはずなのに寝転んでた。何で?いつの間に?って疑問に思って起き上がると、ブチャラティさんが状況を説明してくれた。
ポルポの遺産の噂が既に広まっていたらしく、実はこのヨットに敵が忍び込んでいたと。大乱闘の末、敵を捕縛。カプリ島に敵の仲間が上陸しているってことがわかったので、隠密に上陸し、敵を叩くことに。そのバトルメンバーにミスタが立候補。ミスタと新入り君はカプリ島へ向かったばかりだと。
本音を言えば行ってほしくなかったけど、これがお仕事だ。グッと我慢して、ミスタの無事を祈ることにした。心配で胃に穴が開きそうだけど、ミスタなら大丈夫。彼はとっても強い人だ。もし死んだらすぐにあとを追ってやろう。
「ああ、イイ天気だね〜」
『そうだね〜、このままリゾート満喫って感じでカプリ島で1泊したいね〜』
「それいいね!ちょっとだけ遺産を拝借して泊まろうよ!ご褒美って名目で!そうしようよ!」
『お、いいね!そうしちゃう〜?』
「しちゃおう、しちゃおう!」
カプリ島を眺めながらヨットの甲板の上でナランチャ君と日光浴していると、ブチャラティさんが声を掛けてきた。
「ミスタのこと、もっと騒ぐと思ってたんだが」
『お仕事はお仕事。そこんとこ、わきまえてるつもりですよ』
「お前たちが大人で助かったよ」
『そりゃどうも』
「つーか、何でミスタなワケ〜?もっとさぁ、他にイイ男いるじゃん。ブチャラティとかさぁ」
「ダメ男好きってやつですかね」
「小さい男が好きなんだろ」
ナランチャ君の質問に、フーゴさんとアバッキオさんが飛び入り参加してきた。本人の居ないところでミスタ潰しをやるなんて末恐ろしいメンバーだ。でも、誰一人味方がいなくても、私は負けないぞ。
『ミスタは小さくないもんね〜』
「……なんだと?」
「え、マジで?」
「ま、まさかそんな……」
「おいおい、こいつは……」
何故か驚いてる四人に首を傾げたけども、私を放置して四人の談義が始まった。
「他を知らなくて当然だが、それにしてももっと、こう、……アレだぞ。どう見ても……アレだぞ」
「知らない幸せってやつ?」
「それしか知らないのならそれはそれで幸せなのかもしれません」
「コイツの中でアイツのが1番ってことになんだろ。それってよぉ」
ブチャラティさん、ナランチャ君、フーゴさん、そしてアバッキオさんが一旦言葉を止めると、みんなは口を揃えて、「腹立つな」と言った。
ミスタは器量は大きいのに、何をそんなにも否定するのか全然理解出来ない。それに自分の好きな人をこんなふうに言われてイイ気分はしないから、むうっとむくれ顔で四人を睨んだ。でも四人はまだ談義に花を咲かせている。
「アイツが1番じゃないってことを思い知らせる必要があるな」
「それ、イイ案だと思いま〜す」
「イイと思いますが僕は嫌ですよ」
「ここは年長者のオレが行くぜ。アイツの度肝抜かせてやる」
「「「ひゅう、ボス降臨」」」
何だ、何に対しての口笛だと身構える私の前にアバッキオさんがしゃがんできた。強引に手首を掴んで、私の手を股間へ。雷が落ちたような衝撃が走った。
手に当たるモノ、柔らかくも大きいモノ、男の象徴的な棒、いや、棒ってよりも聖剣に等しい大きさのような気もしないでもない。いやでもまさかただの人間が聖剣を手にしているはずがない。これは何かの間違いだ。間違いであってほしい。
聖剣伝説を否定してほしくて、真っ青になった顔をアバッキオさんに向けると、ニヤッと笑ってこう言った。
「覚えておきな。オレが1番だぜ」
そういう意味での小さいとか大きいじゃなくて、器量の話をしてたんだけど!ってかミスタ小さいわけじゃない!ちゃんと立派だよ!って言おうと口を開いても、金魚のようにパクパクなるだけで、言葉は紡げなかった。悔しいけど、何も言い返せなかった。
「さて、上陸するぞ」
「カプリ島でリゾート満喫しねーの〜?」
「あのですね、ナランチャ。僕たちは敵に追われているんですよ。遊びに来たわけじゃありません」
「あー、スッキリした」
『……うぅ、……ミスタぁ……ごめんね……』
あんなにも意気込んだのに、この四人に勝てなかった腑甲斐無い自分に泣きながらも、どうにかこうにかカプリ島に上陸しました。