キミの知らないウソ
□14話
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あーあ、やっちまったって、後悔してもすでに遅し。やっちまったもんはしょうがねーから、いっそのこと二人の時間を楽しんだ。連続で3回ほど。
セックスが終わると、気絶するように眠ったアキにキスを落として、着替えて廊下に出る。案の定といいますか、ブチャラティとジョルノが睨んできた。
オレは余裕ぶっこいた笑顔で、「眠っちまったアイツの代わりに仕事でもしてやろうと思ってよぉ」と、二人に近づくとお決まりのイヤミを言われた。
「小さい男が一生懸命……おっと、悪い。小さいながらも頑張ってるんだったな」
「やめましょうよ、ブチャラティ。今のこの人に何か言っても無駄ですよ。あのドヤ顔が鼻につくだけです」
「お!新入りのくせによく分かってんじゃな〜い。そうそう、今のオレは超ゴキゲンだからイヤミは通じねーのよ」
ニヤつく口をそのままに、ブチャラティの隣にしゃがんだ。ガッと足で背中を蹴られたけど、このニヤケばかりは仕方ない。だってさっきのセックスがスッゲーよかったんだも〜ん。もう幸せ満点のおかげでケガも治っちまうぜ〜。
「ミスタさんは……どうするつもりなんですか?」
「どうって何が〜?」
「アキさんとの将来です」
「さぁ、なるようになるんじゃねーの?」
「無駄だぞ、ジョルノ。コイツはお前が思ってる以上に、何も考えてない大バカ野郎だ」
「みたいですね、とても残念です」
新しい潰し方で攻めてくんなぁって思いながら、銃を取り出してセックスピストルズに飯をやることにした。
アイツとの将来を考えてないわけじゃねーけど、お互いギャングの時点でお察し。普通の幸せっつーのは築けねーし、いつ死んでもおかしくねえ。だからこそ、高望みなんてしねえ。何だかんだありつつも、毎日一緒に居れりゃそれで充分。アイツだって同じ気持ちだろ。
つーか、そこはオレ達の問題であってコイツらに関係なくね?どこまで関わってくるつもり?って聞いてみてーけど、掘り下げた所で良いことナシ!特にオレが!うっわー、大人な対応でのらりくらりかわしてるオレって、やっぱチームの中で一番大人じゃな〜い。
「そういえば、裏切った暗殺チームってアキの顔馴染みばかりなんですよね?」
ちょっとちょっとジョルノくーん、オレのテンションを突き落とすのやめてくれなーい?って言ってしまいそうな口をぎっと固く結んだ。
「ああ、そのようだな」
「別行動になったりしませんかね」
「オレたちはボスの命令に従うだけだ」
「そうですね」
「ミスタ、もっとアイツと話し合えよ。ああ見えて何でも一人で背負い込む。お前が支えてやれ」
これが新手の潰し方なら、その効果は抜群だと思う。いやマジで。だってオレってアイツのこと何にも知らないって、改めて思い知らされたし。暗殺チームと顔馴染みってことも、何も知らねえ。初耳。
リーダーのブチャラティが知ってるだけならここまでのダメージはなかった。リーダーだからな、オレの知らないアイツを知っていて当たり前。でも、新入りが知ってることですら、オレは知らなかった。問題はそこなんだ。
そういえばブチャラティは、「ライバルはオレだけじゃない」みてーなことを言っていた。いやでもジョルノがチームに入ってきたのってつい先日の話だぜ。つい先日入ってきた新入りがもうアキと親身に……ありえねえ!ナイナイ、それはナイ。
だってアキってば誰よりも警戒心強いし〜、簡単に人にってよりも、新入りに心を開くはずがナイし〜。新入りのジョルノは勘が鋭いし、カマかけただけ。それだけ。……なのに、何か妙な胸騒ぎがするぜ。イヤだな、これ。何だろう。大切な何かをかけ違えてる気がしてならねえ。
「あっれ〜」
イヤな原因を考えてると、ナランチャの声がした。どうやらそろそろ交代の時間のようだ。
「ミスタじゃーん、ケガは〜?」
「天使に癒されて全回復〜」
「ほら、やっぱり!フーゴ、コイツ仕事サボってセックスしてたんだよ!エアロスミスで爆撃してもいいだろ〜!」
「静かにしなさい!今、何時だと思ってるんですか!」
「テメーもうるせーよ」
ナランチャ、フーゴ、アバッキオの三人のやり取りに癒されたっつーか、不安が吹き飛ぶとかありえねーけど、助かった。
「あとは頼んだぞ」
「失礼します」
ブチャラティとジョルノは一階へと降りていった。このまま部屋に戻ろうって考えてたけど、この際だから三人に質問することに。これで何か妙な胸騒ぎが消えてくれたらラッキーだ。
「お前らさ、オレの知らないアキっていえば、例えばどんなことを知ってる?」
「うわ、今度は束縛かよ」
「迷走してますね」
「思春期かよ」
やっぱりイチイチうるさいコイツ等に頬が引きつってしまうが、構うことなくオレは話を続けた。
「いやぁ〜さ、オレだってあまり言いたくねーけどよ、……アイツが暗殺チームと顔馴染みって知ってた?」
「うん、知ってた」
「そのくらい知ってますよ」
「オレは知らねえ」
「……何でナランチャとフーゴが知っててオレとアバッキオが知らないワケ〜?」
全くもって腑に落ちない!って目でナランチャとフーゴを睨むと、あのナランチャにスッゲーため息を吐かれた。あのナランチャに!
「あのね、ミスタ。こう見えてもオレとフーゴはミスタより先にパッショーネに入った先輩で、ミスタよりパッショーネのことを知ってるんだよ」
「あの子の話で何となく察しがつきます」
「でも、ジョルノは知ってたぜ」
「ブチャラティに聞いたんじゃないの?もしくは本人。別に隠すことでもないし、かといって言うことでもないし。心配し過ぎだよ〜」
まったくもってナランチャの言う通り、やっぱり騒ぐようなことじゃなかった。それが分かればひと安心。あの妙な胸騒ぎも消えたというか、消してくれたのは、コイツ等だけど。とにかく!持つべきものは良いチーム、なんつって〜。
「まっ、心配するようなことじゃなくてよかったぜ。ありがとよ」
んじゃオレは天使と二度寝するって立ち上がって部屋に戻ろうとしたら、フーゴが余計なことを言い出した。しかも小声で。ヒソヒソと。
「暗殺チームにいる兄貴が超カッコイイって騒いでたことを隠したかったんじゃないんですか?」
ピタリと止まったオレに構うことなく、フーゴの言葉に同意するように、アバッキオがノッてきた。
「それならオレも聞いたことがあるぜ。危うく惚れそうになった男の話だろ」
「それならオレも知ってる」
ナランチャまでもノッてきた。三人ノッたらいつもの流れでオレ潰しが始まるって分かってるけども、オレは逃げることなく三人のヒソヒソ話に耳を傾けた。
「誰かさんが、オレってめっちゃ好かれてる〜どうしよ〜って浮かれてる間、兄貴に惚れそうって騒いでたもんね」
「あの子って兄貴体質の男に弱いですよね」
「ブチャラティは特にそれとして、新入りのジョルノも危ういぜ。あれのクレイジーな度胸は兄貴体質を越えるものがある」
「まっ、総じてくそ野郎から新入りクレイジーに心変わりしても、アキが幸せならそれでいいし〜」
「そうですね、総じてくそ野郎よりも節操ある新入りの方がマシかもしれませんね」
「任務中に、仲間がいるにも関わらず、リーダーと新入りに嫉妬して、セックスで気を紛らす総じてくそ野郎よりマシだな」
言葉の刃ってあるんだぜ。三人から発せられる刃がオレに深く突き刺さって、もう泣きそう。図星だぜ、どーせオレは小さい男で総じてくそ野郎なんだ!
「わああ!」
いつものオレ潰しに負けたオレは部屋に駆け込んだ。眠ってると思ってた天使は起きていて、『どしたの?またみんなにイジメられたの?』と優しく言葉をかけてきた。
「べ、べっつに〜」
『そう?』
何にもおかしくねーのにクスクス笑ってるコイツに何かもう思い切りギューってしたくなった。でも出来るわけもなく、「ゴホン」と咳払いをして、ベッドに近付く。コイツの太ももを枕にするように寝転んだら、笑いながら頭を撫でてきた。
「アイツら仲間のくせに、仲間の幸せは応援しねーのな」
『セックスするからでしょ』
「合意したお前に言われたくないんだけど〜」
『でも、今日も気持ち良かったよ』
「……」
もうね、食べちゃいたいくらいカワイイ!って思うの、オレだけ〜?いや、そう思うのはオレだけでいいや。コイツのカワイイ所はオレだけが知ってればいい。オレだけが知っていたい。つーかマジでハマりすぎだろ。どんだけ好きなんだよコイツのこと。頭悪いとしか思えねーけど、コイツのこと好きでいれるなら頭悪くてもいーやって思うオレって大バカ野郎だぜ。
「……なぁ」
『なに?』
「オレって、お前のこと、めちゃくちゃ好きみてーだわ」
『……』
「……」
『……』
「もう1発イッとく〜?」
『せっかく感動してたのにそればっか!もう知らない!』
シーツにくるまってミノムシみてーになったアキに笑って、それに対して拗ねたアキに、愛情込めてキスしまくった。