運命の輪舞曲

□15話
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夢を見た。長い長い夢。

スタンド能力を使って、何回も何回も時を戻して、あの人を救おうとしてた。気が遠くなるほどの年月を繰り返しても、運命は変わらなかった。

そうなったからこそ得られる何かがあるんだもの、変わるわけがない。悲しいことかもしれないけど、違う視点で見たら素晴らしい進展かもしれないんだ。それはすごく尊いもの。自分の勝手でねじ曲げていいものじゃない。

ただ、どうしても許せなかった。大切な人の命を諦めたくなかった。それだけは絶対に、何度繰り返すことになっても、この手で守りたかった。

関係を終わらせたくなかった。もっと一緒にいたかった。一緒に生きたかった。二人で笑っていたかった。手を繋いでいたかった。おでこを合わせて眠りたかった。

終わりが来たんだ。

あの人はもういいと言ってくれた。そうなったからこそ得られたものもあると、そう信じてると。

目が覚めるとブチャラティ様がいなかったから、やっぱりあの会話も夢も現実なんだと分かった。

本当に、もう会えない。

それから少し寝込んだ。それでもやっぱり恋しくて、泣いて、泣いて、身体だけはすっかり元気になった。心がおいてけぼりだけど、これも時間と共に身体に追い付いてくるんだと思う。

何万回以上繰り返して、ようやく前を向くことが出来た。自分勝手にも程がある。

でも大丈夫、あの日の約束を守る。あの人が私の願いを守ってくれたように、私もあの人の願いを守るんだ。

やっとそう思えた時、ミスタと朝方に出会ったイケメンさんが家に来た。話を聞くと、ボスとやり合ったらしく、イケメンさんが新しいボスになったらしい。そのいざこざで、アバッキオさんもナランチャ君も亡くなったと聞いた。


「ちょっと遠くへ行く。約束は守れ。ブチャラティは……そう言ってたよ」


会うことも、触れることも、話すことも、見ることも出来ない。そういう所へ行ってしまった。

でも、あの人らしい言葉だと思う。最後の最後まで優しい人だ。


『そうだね、また会えるまで……全力で生きないとね』

「その、……大丈夫なのか?」


ミスタの問いに苦笑いしながら頷いた。


『今度は大丈夫。ようやく前へ進むことが出来ました。迷惑かけてごめんね』

「誰も迷惑だなんて思ってねーよ」

『でも、あのときのイケメンさんがボスになってるなんて思わなかった。人生って何が起きるか分かんないもんだね』

「ジョルノと知り合い!?」

「知り合いというか、朝方の街をフラフラ歩いてたので、介抱したんです。今にも倒れそうでした」

『高熱だったの。あのときはありがとう』

「あー、フーゴに入れられた次の日の話ね」

「ブフッ」


ミスタが余計なことを言ったせいで、ジョルノ君がお茶を噴いた。その話忘れてたのに。


「フーゴが、初めてを奪った犯人」


間違いなく勘違いしてるけど、正すのもメンドーだから知らん顔した。ミスタも説明するのがメンドーだと思ったのか、「そーいうこと」って適当に返事してた。

しかしそう考えると、坐薬のあの話から何でこんなことになってるんだろ。ってか気のせいでなければ、ブチャラティ様の前でお尻の穴って連呼しまくりだし、やたらお尻お尻言ってたし、ブチャラティ様じゃないと嫌だとか言ったし。終いにはフーゴさんに坐薬入れられて……

ちょっと待って。私、あの時の坐薬に関して何のフォローもしてない!


『ちょっとなにそれ。私の思い出って坐薬ネタが最後ってことじゃない!』


あまりにも恐ろしい現実が襲ってきて、顔を真っ青にしてガタガタ震えたら、ミスタが爆笑しながら言った。


「よく思い出して笑ってたよ、あいつ」

『全然笑えない!またやり直したいレベルでサイアク!』

「やり直しても坐薬ネタが待ち構えてる、それが運命だろ」

『ぐぬぬぬ!』

「ってことは、オレがお前に惚れるのも運命の1つ。どう?運命の流れに沿って俺と一緒に生きていかね?」

『あっ、ジョルノ君……えっと、相談があるんだけど』

「シカトすんの!?」

「何ですか」

「ジョルノまで!?」


チームを抜けた日からちょっと考えてたことがある。実現するのは無理かもって諦めてたけど、ボスが代わったのなら、ダメ元で聞いてみたい。


『パッショーネ抜けてもいいですか?』

「ええ、もちろんです。と言っても、ブチャラティと約束をしていたんです。あなたを自由にしてほしいと」

『そっか』

「あと、あなた名義でいくつかの不動産があります。ブチャラティが残してくれてたみたいですね」

『……』

「彼らしいです」


こうなることを見越してた。こうなるって分かった上で、一人で戦ってた。私がフラフラして泣いてる間も、あの人は私を思って行動してくれていた。本当に優しすぎて、今さら……


『こんなのが欲しかったんじゃないの』


あれだけ泣いたのに、まだ懲りずに涙が出てきた。しかも文句と一緒に。最低だ。


『……もっと一緒にいたかった……たくさん話をしたかった……それだけでよかったのに……』


そう言ってもどうしようもないんだ。あの人はいない。後悔したって、今さら。だけど後悔せずにいられない。それでも、その後悔を背負って生きていくしかないんだ。


『私ね、学校に行こうと思うの。両親が死んでずっと監視されてたから、学校行ってないの』

「ええ、とてもいいことだと思います」

『高校に行って、大学に行きたい。もっとちゃんと自分の足で歩きたい。このままだと絶対に甘えちゃうから、しっかりした自分になりたい』

「オレは全然いいけどなぁ、甘えたなお前でも全然余裕で支えるし〜」

「ちょっとミスタは黙っていて下さい」

『だからねミスタ、ジョルノ君の力を借りて全力で隠れるから、6年後くらいに見つけてね。それまでに心の整理をつけて、それからお返事するね。それまで童貞犬でいなきゃダメだよ?ちゃんとお利口さんに待てとおいでが出来たら一緒になってあげるね』

「なにその上から目線!ほんと生意気にも程があんぞ!……でも、お前がそうしたいって言うんなら、オレはいつでも待つよ。大事にするって約束したからな、お前と、ブチャラティと」

『うん、ありがとう。心変わりしたら逃げてもいいからね』

「心変わり?たかが6年とか余裕。何万年前からずっと追いかけてたオレの忍耐力舐めんなよ」

『マジでストーカーだね』

「本物のストーカーですね」

「せめて純愛と言ってくれよ!!」


こうして私はパッショーネを抜けて一般市民に戻った。ネアポリスからアメリカに引っ越した。アメリカの高校に行って、大学にも行った。

ネアポリス出身だからか、どうやら私は海が好きみたいで、海洋生物について専門的に学ぶことにした。友達も出来たし、少しだけモテモテになれた。

そのことをジョルノ君に言ったら、次の日から男の子に話し掛けられなくなった。ギャングの力って超怖いって思った。

毎日が楽しくも穏やかに過ぎていく。

あの人の痛みはまだあるけど、これはこれでいいと思えるようになった。あの人を思って泣くのも、思い出して笑うのも、どれも大切なもの。この傷みが私を作ってくれてるんだ。

これで本当に良かったのか、運命を変えられたんじゃないのか、今だからこそ思うこともある。でも、私はそれを背負って、あなたの望む、あなたが生きれなかった未来を、あなたじゃない人と精一杯生きていく。

それでも、


「ようやく見つけた」

『見つかっちゃった』


巡りに巡った運命の輪廻の果て、私はただ、あなたを想う。



【運命の輸舞曲】〜完〜
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