番外編/短編/過去拍手文/

□御猫様の恋の駆け引き事件簿〜シリーズ1〜
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ディオ様に相談と説教をした日から数日経った。プリプリ怒った私を見かねて「悪かった」と何度も謝ってきたけど、そーいうことじゃあねえ。もっと鬼畜らしく振る舞って!という御猫様の想いは届かなかったみたいだ。

いつまでも怒ってても仕方ないし、さっさと【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】を習得したいので、実験を再開することに。

今回は【ステップ7、愚痴を聞いてあげる】と【ステップ8、積極的にボディタッチをする】だ。

早いところ実験をやりたいんだけど、今日は中々タイミングが掴めずに、夜までズルズルきてしまった。さすがに今日は無理だと悟ったので、明日挑戦することに。

予定も空いたので、のんびりと湯船に浸かろうと浴室まで来た。一応別のバスルームはあるのだけど、この浴室は御猫様お気に入りだ。ジョージに頼み込んで贅沢仕様に造らせた。超豪華な大浴場と言ってもよい出来だ。

難点があるとすれば、この大浴場を使う前に召し使いさんに準備をお願いしないといけない&掃除も大変だから頼みにくいことだ。

でも今日は大浴場解禁!ステップ6まで習得した自分への御褒美ってことにしよう!

脱衣所で服を脱いで、贅沢仕様の大浴場へゴー。身体やら髪の毛やらを洗って、大理石使用の浴槽へ足先を入れた。それだけで至福を感じた。


『あー……もうダメ……キモチイイ』


ザブンと肩まで浸かるとある意味イッちゃいそうなほどの幸福感に包まれた。何で湯船に浸かるとこうも幸せいっぱいになるんだろ。この幸せを知ってれば争いなんて起こらないと思うの。あー、ここは極楽よ、天国よ。


「……」

『あらま、ごきげんよう』


大浴場という名の天国に何故かディオ様が居た。私が入る前から湯船に浸かってたのかしら。ごめんね、気づかなかった。

しかし、湯に濡れたディオ様も中々どうして超麗しいじゃあないか。性格は最悪だけど美少年万歳!美少年の全裸いただきましたー!


「な、なななな何で!?何で此処にお前が居るんだ!?」

『たまには贅沢しようって思って』

「は、ははは恥ずかしくないのか!」

『何が?』

「だ、だだだだだって!」

『あはは、ディオ様ったらドモリ過ぎ〜』

「お前はいつもそうやって無防備だな!もう少し警戒心を持って男のグチグチグチグチ」


せっかくの贅沢お風呂中なのに、グチグチグチグチ言い出したディオ様。メンドクセーからテキトーにウンウン頷いて聞き流すことに。

しかし、ジョナサンとお風呂に入ったりするけど、ディオ様は初めてだ。そもそも嫁入り前の女の子が男の子と一緒にお風呂ってことが大問題なんだけど、まぁ、ジョナサンは将来的に主従関係になる御方だから問題ナシ。

むしろあわよくばジョナサンとお風呂で既成事実……ムフフ。足を滑らせたフリして股間に手を忍ばせればコッチのもんだ。股間レバーでジョナサンのシタゴコロを操作してやるぜ!


「また人の話を聞いてないだろ!何でお前は俺の話を聞かないんだ!いっつもジョナサンばっかり!大体お前は俺の嫁グチグチグチグチ」


今日のディオ様は愚痴ばっかり。何もお風呂中に愚痴らなくても……って言いたいが、とあることに気づいてしまった。

何か自分でも知らん内に【ステップ7、愚痴を聞いてあげる】を習得してるのだ。

えっと、これでいいんだよね?ディオ様絶好調でグチグチグチグチ愚痴ってるし、何かヒートアップしてるし、もう習得ってことで……いいよね!

いやー、ここまでくると流石御猫様!ってよりも、御猫様の運マジでヤバくね?みたいな〜。でも運も実力のうちって言いますからね〜。やはり御猫様は最強ぞ!

この調子で次にいこう。せっかくの状況だからさっさと終わらせよう。次は【ステップ8、積極的にボディタッチをする】だ。

ナニコレもはや欠伸レベル。ボディタッチってディオ様にさりげなく触ればいいんでしょ?超簡単じゃん。何かアレだね、【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】って思ってたよりもクソ簡単過ぎて、こんなんで男を落とせるの?って疑うレベルだわ(笑)

まっ、今は実験段階だし、全てを習得するまで気を抜かないようにしないと。何事も油断は禁物です。はい、気を引きしめた所で積極的にボディタッチしましょう。

やはりここはさりげなさをアピールしてほんのちょいと肩をぶつける程度のボディタッチで良いと思われる。問題はどう当たりにいくかだな。

大浴場といっても4メートル×3メートルほどの浴槽だ。そう広くない。ディオ様は一番端に座って背中をこちらに向けてる。ディオ様を動かさないと当たれない。


「グチグチグチグチグチグチグチグチ」

『あ!』


ピコンッと思い付いたので、持っていたタオルを濡らして固く絞り、ディオ様の頭目掛けて思い切り投げ付けた。バシッと当たった。そのタオルを手に取ってくれた。あとはディオ様を動かすだけ。もはや我の計画通りだ。


「…………俺がいつまでもお前に甘いと思ったら大間違いだぞ」

『ねぇ、ディオ様、そのタオルコッチまで持ってきて』

「……は?」

『そのタオル、持ってきてほしいの』

「お、お前が投げたんだろ!?自分で取りに来い!」

『やだ!ディオ様にコッチまで来てほしいの!その為に投げたの!』

「……何でいっつも俺の理性をグチグチグチグチ」


ブツブツと何かを言い出したけど、なんやかんやで持ってきてくれるみたいだ。クルッとコッチを向いて、ザバッと立ち上がった。ディオ様のディオくんがコンニチワしてたのを見てしまった。

そうだった!ここはお風呂で、4メートル×3メートルの浴槽だけども、深さは普通の浴槽よりもちょい深めで、肩が浸かるくらいの深さだった!

移動すれば丸見えになるのは当たり前なのに!これじゃあ、さりげなく肩に触れるボディタッチが出来ない!どうする!?どう計画を補修する!?考えろ!ここで諦めるワケにはいかぬのだァァアア!!


『ハッ( ゚д゚)』


人間ってやつは切羽詰まると良きアイデアが浮かぶモノで、とても良いアイデアを思い付いた私は、覚悟を決めて、ザバッと立ち上がった。言っておくが私も全裸だ。


「……」


全裸の私に驚きつつも、何も言わずにタオルを運んで来てくれてるディオ様。私も一歩踏み出してディオ様に近付いた。眉間に皺を寄せた全裸の二人の距離が近づく。ディオ様がタオルを差し出したけど、スルーしてディオ様に肩をぶつけた。


『ヌー!』

「痛っ」


ヌーとはオキナワという島の言葉だと、この前読んだ本に載ってあった。意味は何だゴラァみたいなそんなん。何故今のタイミングでヌーなの?と聞かれると困るが、ヌーなのだ。ヌーがパッと出てきたのだ。なので深い意味はないのだ。

でも、ヌーをやられた方は何?ってなるらしく、先程よりも眉間に皺を寄せてめっちゃ睨んできた。なので、もう一度肩をぶつけて『ヌー!』ってやった。


「……ヌー」


何故かディオ様もヌーって言いながら肩をぶつけてきた。きっとディオ様は賢い頭で何か色々と何かいっぱい考えてくれたと思うの。この優しさをムダにしちゃダメだと思うの。


『ヌー!』

「……ヌー」

『ヌー!』

「……ヌー」


お互いに肩をぶつけ合ってヌーヌー言い合う。端から見るとすごくシュールだ。でもこれで【ステップ8、積極的にボディタッチをする】も完璧にやり遂げた。

しかしどうやってヌーを終わらせよう。私が先にやりだしたとはいえ、ディオ様がヌーネタに乗ってきてくれるなんて思ってもなかったし。参った、これ収集つかんぞ。

いっそのことヌーするフリして突き飛ばしてやろうか。そしたらヌーの連鎖から抜け出すことが出来るかもしれぬ。イイネ、そうしよう。

ってことで、私のターンの時、けっこう思いっ切りぶつかりにいった。でも、ズルッと足を滑らせて転けそうに。


『ぬぅー!?』

「危ないぞ」


でも、すかさずディオ様が手を伸ばして抱き止めてくれた。『ありがとう』とお礼を言って離れようとしたけど、何故か腰に回してる手を離してくれない。というか、何か……気のせいでなければ、ゴリゴリィが当たってる。

これは実にマズイ。まさか【ステップ8、積極的にボディタッチをする】からのヌーでゴリゴリィになるなんて予想外だ。今すぐ離れないとゴリゴリィがむっちゃゴリゴリィなことになってしまうかも。こーいう時は逃げるが勝ちだ。


『お風呂上がるから離して』

「もう少し、お前と一緒に居たい」


私の気持ちとは裏腹、ディオ様はギュッと抱きしめてきた。お湯で熱くなった生の肌が触れ合う感触が何ともいえない。今さらながら今のこの状況に恥ずかしさを覚えてしまったのだ。

色々な感情を誤魔化すように首を横に振って、でも、それを止めたのはディオ様の手だった。

両頬に手を置いて、グイッと顔を上げてきて、必然的に目が合うんだけども、ディオ様を見て心臓がバクンッと飛び跳ねた。

濡れた金色の髪からタラリと滴が落ちて肌の上を滑っていく。色白の肌がほんのりピンクに染まっていて、とても厭らしく感じる。男性なのに妖艶って言葉がピッタリ当てはまるほど、お色気ムンムン。思わず見蕩れてしまった。


「……ハル……」


甘く囁く声が脳みそを揺さぶってくる。名前を呼ばれただけなのに、この人に全てを捧げてもいいって思うほど、ディオ様の言葉が脳みそに溶け込んでいくのだ。


「初めての反応だな。……真っ赤になって……可愛いよ。……早く俺だけのモノにしたい」

『……や、だ……』

「そのためにも、……まずは……この忌まわしき首輪をどうにかしないと……」

『……ディオ……さま』

「……もう本当に……」


ディオ様の顔が近付いてくる。今からすることに知らないフリは出来ないけど、さっきよりも更にお色気ムンムンのディオ様に見蕩れてしまってる。だから、ハッ!と気づいた時にはもうギリギリ。バッ!と顔を背けて、唇の貞操は何とか守った。

危ない危ない、間一髪。頬っぺたにキスになったけど、挨拶と思えば問題ナシ。大丈夫、今のノーカン!って、私は思うんだけど、……どうやらアウト。やっちまったようです。


「……御猫様が贅沢風呂中だと聞いて……一緒に入ろうと来てみれば……これは一体どういうことだ!」


ジョージに見つかっちゃいました。これ説教コース。そりゃそうだ、男女が一緒にお風呂、しかも裸で抱き合って頬っぺたにキスとかもうそれアウト。でも、【ステップ8、積極的にボディタッチをする】は習得出来たのでヨシとしようと思います。

今回の教訓。

【ステップ7、愚痴を聞いてあげる】
→会話してると勝手にこんな感じになるので特に作戦を立てる必要もナシ。
→グチグチグチグチうるさいのを我慢するのがダルい。

【ステップ8、積極的にボディタッチをする】
→大体ヌーでいける。
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