番外編/短編/過去拍手文/

□御猫様の恋の駆け引き事件簿〜シリーズ1〜
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お風呂の後、ジョージに呼び出されて説教タイム。ソファーに座ってプリプリ怒ってるジョージ、その隣に座ってジョージにブラッシングしてもらう私、それを見ながら不服そうに突っ立ってるディオ様。

早く終わってくれるといいんだけど、ジョージの説教タイムは長いから色々と聞き流しながらやり過ごすのが一番だ。


「見損なったぞ、ディオくん!嫁入り前の御猫様と裸で抱き合うなんぞ、それでも紳士か!」

「ですが、偶然とはいえ、可愛い御猫様と……その、裸で……我慢出来る方が男としてどうかと思うのですが」

「むっ、……確かに。可愛い御猫様の裸を思春期絶好調の少年が見たら……まぁ、……暴走してもおかしくないな。理性もブッ飛ぶ可愛いさだものな、御猫様は」

『なにそれ褒めてんの?』

「そうだよ〜、御猫様は世界で一番可愛いから童貞には刺激が強すぎる〜って話をしてるんだよ〜」

『童貞キラー御猫様だね!』

「御猫様は人類キラーだよ。この可愛いネコは可愛さだけで人類を滅ぼしに侵略に来たのかな?おーよちよち可愛い可愛い。いや本当に実に可愛らしいネコだ。見てみろ、ディオくん。キミはこの世界で一番可愛いネコの頬にキスをしたんだぞ。誰にも汚されたことのない御猫様がキミによって汚されたのだ!御猫様が可愛すぎて耐えれないだと?そのくらい耐えろよ!耐えてみせろ!耐えてこその紳士だろうが!それを耐えまくっても全く報われないジョナサンはどうなる!不憫じゃあないか!同じ土俵……いや、ジョナサンの方が有利だったのに!何でお前が有利な状況になってるんだ!言っておくがな、御猫様だけは譲らんぞ!御猫様はジョースター家の守護神なんだ!ジョースター家以外の男にくれてやるつもりはない!分かったなら部屋から出ていきたまえ!私と御猫様の時間を邪魔するのは誰であろうと許さんぞ!」


ものすっごい何かを言いたそうなディオ様は渋々だけどジョージの部屋から退室してった。ご乱心したジョージはウザイ。何か言いたい気持ちは分からんでもないぞ。


『怒らなくてもいいのに』

「ん〜?怒ってないよ〜、私は御猫様が可愛いって褒めたんだよ〜」

『そうなの?今の褒め言葉なの?』

「もちろんさ!御猫様がどれだけ可愛いかをディオくんに教えてあげたんだよ」

『ぬ!?』


ちょいと待て。今のジョージの言葉が褒め言葉なら、もしかして次のステップ習得したんじゃね?そう思い、懐からメモ帳を出してステップを確認した。

【ステップ9、友達に協力してもらう】

あれだろ?友達使って自分の長所を褒めてもらったり、友達使って御猫様をアピールすればいはいんだろ?なーんだ、今のでクリアじゃん。

ジョージは友達じゃないけど、友達よりも言葉に深みがある。なんせジョースター家の当主だもの。その当主が褒めたんだ、間違いなく御猫様の株が上がってる。

何もせずに習得するとは、いやはや今日の御猫様ってば恋愛の神様に好かれてるかもしれないな、あはは。

よし、このまま次のステップへ移ろう。どうせまた簡単なやつだ。全部習得して寝てやるぜ!えっと、次のステップは【ステップ10、恋の駆け引きはし過ぎない】。


『散々してきたのに!?』

「今日も元気だねぇ、……ああー……このモフモフ尻尾……ほら、この尻尾で顔を叩いてくれてもいいんだよ。ファサッて」


尻尾に顔を埋めてるジョージの顔をファサッと叩きながら、【ステップ10、恋の駆け引きはし過ぎない】について考えてみることに。

今まで恋の駆け引きをしてきたのに、今度はするなってどういうことだ。いつも通りに戻ればいいの?

ちょっと待ってよ。ここまで頑張ったのに今さらあとは自分の努力次第みたいなオチとかやめて。自分の力じゃどうにもならんから【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】を実験してきたのに、これじゃ全然報われないんだけど。

いやでもある意味実験で良かった。これをジョナサンでやってたら間違いなく泣きを見る結果になってたと思う。最終的に努力次第とかムリだもの。努力でどうにかなるんならもう落としてるもの。

っていうか、今までのステップでディオ様は御猫様に落ちてくれたの?それともそれは神のみぞ知る的な?実験の結果がわからないと【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】がホンモノなのかもわからないよ。


『そうだ!本人に聞いてこよう!』

「ああ、尻尾が、尻尾がぁ……」


最後にジョージの顔をファサファサッと叩いて、部屋を出ていく。目指すは実験体であるディオ様の部屋。こーいう時は直接本人に聞いてみるのが一番!

ルンルン気分で歩いて目的地に到着。コンコンとノックしたら扉が開いた。ディオ様は私を見るなり驚いたけど、すぐにため息を吐いて「どうした?」と聞いてきた。


『聞きたいことがあって』

「聞きたいこと?」

『その、……ディオ様は……私のことどう思ってるのかなぁって……』

「……どうって?」

『んっと、……好きとか、嫌いとか?』

「……知りたいか?」

『うん!』

「じゃあ、部屋に入れよ。一晩かけてたっぷり教えてやる、この鈍感ネコ」


これで問題解決!と、ディオ様の部屋に足を踏み入れようとしたら、「うおおおおおお!!」というジョナサンの雄叫びが聞こえた。というか、コッチに向かって走ってきてる。


「ディオォォオオ!!それだけは許さんんん!!」

『うお!』


ジョナサンは、全力で走ってきたと思ったら、私の両頬に手を置いてムッチューとキスをしてきた。ディオ様の前で、それはもう何度も角度を変えてムッチューと。何が起きたのかサッパリな私とディオ様はポカーン状態。

でも、ジョナサンは、そんな私たちをよそにキスをやめて、今度はムッギューと抱きしめてきた。


「これは僕のだ!」


これってなんだ!御猫様はモノじゃあないぞ!って言ってやりたいけど、ムッチューからムッギューの流れでポカーン状態だからなされるがまま。「フンッ!」と鼻息が荒いジョナサンは私の手を引いて、ディオ様の部屋をあとにした。

「……よくも……この俺をバカにしやがって……」というディオ様の唸り声が聞こえたけど、今はそれよりもジョナサンが優先だ。

プリプリ怒ってるジョナサンは、ここから一番近い私の部屋へ。勝手に扉を開けて入っていく。レディの部屋なのに!紳士にあるまじき!と文句言う前に、ベッドに放り投げられた。

『何するの!?』と起き上がる前にジョナサンが上に乗っかってきて、また両頬に手を置いてじっと見つめてきた。めちゃくちゃ怒ってる。これもうフォロー出来ないくらいブチキレてるぅ。


「ディオとどこまでしたんだい?」

『シテナイよ!誤解!ディオ様と私は仲良しなだけでエッチなことをする仲じゃないの!』

「エッチなことをする仲じゃないのに、一緒にお風呂に入るんだね。さっきもディオの部屋に入ろうとした。襲われたい願望でもあるの?」

『ナイナイ!お風呂に関してはラッキースケベ的なやつで、さっきのは……その、気持ちを教えてくれるって流れで……』

「ディオに惚れた?ここ数日、ディオに付きっきりだったもんね」

『違う、違うの!』


とんでもねえ誤解が生まれている。このままじゃ【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】をジョナサンで実践する前に、報われない方程式が出来上がってしまう。いや、彼女がいる時点で報われない方程式なんだけど。

とにかく!今はディオ様との誤解を解かないと!ただえさえ報われない方程式がもっとややこしい方程式になってしまうぜ。


『あの、実は……これをやってて』


懐からメモ帳を取り出して、【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】のページをジョナサンに見せた。


「……ディオを落としたいの?」

『ううん、これがホンモノか実験してみようって思って実験してたの』

「………………なんだぁ、よかった……」


バタンッと隣に寝そべったジョナサン。誤解が解けたようで何よりだ。ネタバレしちゃったからジョナサンに使えないけど、誤解されっぱなしよりマシだ。


「おいで、可愛い御猫様。久しぶりにお話でもしよう」

『うん!』


両腕を広げたジョナサンにムギュッと抱きついて横になった。胸元に顔を擦り寄せるとそっと頭をナデナデしてくれる。大好きって気持ちが溢れて止まらないぜ!

でも、ジョナサンはネコとして私を好きなワケであって。さっきのキスも今の状況もネコにするのと変わらないのだ。同じ好きなのに、こうも意味が違うなんて……やっぱり恋って苦手だ。


「しかし、【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】をディオで実験ねぇ。こんなのしなくてもキミは十分魅力的なのに」

『でも、好きな人に振り向いてもらえないなら魅力的でも意味ないよ。どーせ私の片想いだし。相手彼女がいるし』

「そうなの?」

『うん』

「キミなら大丈夫だよ!こんなに可愛いんだ、片想いの相手もイチコロだよ!彼女なんて目じゃないって!」

『……ジョナサン……』


片想いの相手お前なんだけど。お前の為に実験してきたんだけど。その無神経さで恋も冷めちゃいそうだわ。何でここまで鈍感なの?頭悪いの?それともわざと?どれにしてもねーよ、今のはナイ。

やっぱり【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】をジョナサンで実践しなくてよかった。

人間とペット、主と従者、兄と妹みたいな仲良し関係が染み付いてるから、今さら報われるはずないんだ。それに、初恋の人とは結ばれないって何かの記事に載ってた。ジョナサンとはそんな運命だったんだと割り切ろう。


「ハル、大好きだよ!何があってもずっと一緒にいようね!」

『うん!主従関係ってやつでしょ?頑張ってお前に従っちゃう!』

「(……やっぱり……この関係が染み付いてるから……男として僕を好きになってくれないんだよなぁ。しかも好きな人いたんだ。初耳だよ。……ホント、報われないや。……諦めて次の恋にいって正解かも……トホホ)」


こうして、【御猫様の恋の駆け引き事件簿〜その1〜】が幕を閉じました。その成果ですが、次の日ディオ様が、

「ええい!もう俺に構うな!俺はあて馬でもお前の玩具でもない!嫌いだ!ネコなんて大嫌いだー!!」

って言ってたので、【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】は失敗したことになります。

ちなみに、大嫌いだと言われたので、その日から、ディオ様に話し掛けることも、目を合わせることも、構うことも、一切しませんでした。


「何でだよ!あんな引っ付いてきてたのにいきなり離れるとか!気紛れすぎるだろ!俺達は夫婦になる仲じゃあないのか!……はっ!まさかジョースター家の命令……クソッ、絶対にジョースター家の財産を手に入れて、俺があのネコを手にしてやる!あの子は俺の嫁だ!俺があの子を自由にしてやるのだ!」


なので、勘違いをしたままのディオ様を正すことなく、ディオ様人間止めたり消滅したり……まぁ、あれです。恋は身を滅ぼす、これを体現してくれました。

ありがとう、ディオ様。


【御猫様の恋の駆け引き事件簿〜その1〜】
〜完〜
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