番外編/短編/過去拍手文/
□御猫様の恋の駆け引き事件簿〜シリーズ2〜
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御猫様だけ波紋の修行を終えたので、残り三週間は暇になった。何をして過ごしていいのか分からないので、師匠であるリサリサ先生に相談することに。
「他にやりたいことは?」
『うーん』
「恋愛マスターを目指す、そうジョジョに聞いたけど、それはどうなったの?柱の男をメロメロにしたからって満足してないわよね?」
『でも、シーザー君が「あの柱の男をメロメロにしたから卒業だ」って言ってたよ』
「青臭いシーザーがそう言っただけでしょ。考えてもみなさい。何千年って眠ってたような少し知能の高い原始人よ。その原始人が目覚めてすぐに可愛い女の子を見たらそりゃもう子作りしたくてたまらない盛った猿になるのは当たり前。それをモテたって言わないでしょ。盛りとモテモテはイコールじゃないわ」
『確かに』
「もっと柱の男をメロメロに出来るように頑張りなさい」
『わかった!恋愛マスターになるために頑張る(O゚皿゚O)』
「(やだ何この子、アホで可愛いわね)」
ってことで、こんな感じで【御猫様の恋の駆け引き〜その2〜】が始まりました。
自室へ戻り、ベッドに寝転んでどうやって恋愛レベルを上げようかと考えてると、懐からマイメモ帳が落ちた。その拍子で開いたページに、【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】と書かれてる。これは約50年前にディオ様で実験したやつだ。
『これだ!』
前回は失敗しちゃったけど、恋愛マスターになるためにも避けて通れぬ道。今度こそ【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】を習得してやるぜ!
でも、今回の標的である柱の男達はここに居ないし、会うのは一ヶ月後だし、ジョセフやシーザー君を実験台にしてもイイコト無さそうだ。かといってオッサン二人相手にしたって誰得にもならないだろう。
そうだ!一ヶ月後に会うなら、今のうちにイメージしとけばいいんだ!イメトレ的なやつ!イメトレで浮かんだ妄想をメモしていって、んで、一ヶ月後に実践!これなら相手が居なくても出来る!やだ御猫様ったら頭良すぎてビックリしちゃう!
よしよし、今回こそ習得したるぞー!ってことで、【ステップ1、接する機会を増やす〜イメトレver】スタートッ!
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注意:御猫様のイメトレ(妄想)です。話の流れがいきなり変わったりします。ツッコミどころ満載です。キャラ崩れアリ。
でも、全て御猫様の妄想です。
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久しぶりに会ったカーズ様は相変わらずの生々しいおぱんてぃラインで御猫様をドキドキさせてくれた。あれを履きこなせるのはカーズ様しかいないと思う。素晴らしきかなケツ筋。
カーズ様は私をとある古城まで連れて行った。ここが柱の男達の住まいらしい。無職のクセに古城に住むとか。生物の頂点に君臨する方々はお金に困る生活をしていらっしゃらないみたいだ。羨ましいのでどうやってお金を手に入れてるのか後で聞いてみよう。
まぁ、そんな金銭事情は置いといて、今日から一緒に行動を共にするってことで、自己紹介をすることに。
『今日からカーズ様に飼われることになった御猫様です。よろしくお願いします』
「お〜、あんときのハーフアニマルじゃねーか。相変わらずのばか面だなぁ!」
「エシディシ、今度からコイツを侮辱したらこのカーズが黙ってないぞ。瞬殺だぞ」
「ジョーダンっすよ〜、ジョーダン」
「コイツの世話はワムウに任せよう。……ワムウはどこだ?」
「ミートパイ作ってるぜ」
「私は食わんぞ」
「いやネコの」
「んぅ」
何とも言えない顔のカーズ様は、私の手を引いてミートパイの匂いのする方へ案内した。着いた先はキッチン。扉を開けると、ガタイのイイ長身の男性がエプロンをつけて立っていた。服の構成上、裸エプロンに見えなくもない。けっこうキツイ。
何とも言えない微妙な空気が流れる中、ガタイのイイ長身の裸エプロンの男性が口を開いた。
「そ、その御方が御猫様!?……はわっ、想像以上にネコですね!」
「……お前に世話をと思ってたんだがやっぱりやめ「私に!?御猫様の世話を!?」……まぁ、……うん」
「ありがたき幸せ!このワムウ、命に代えても御猫様をお守りします!」
ワムウさんはその場にひざまずいてそう言った。何か変なのになつかれた気もしないでもないが、世話係が出来たと思えばいいだろ。
『あの、ワムウさん、……よろしくお願いします』
「はわわわ(慌)ちょっ、カーズ様!この子可愛すぎて……はわわわ(慌)」
「あのな、ワムウよ、カーズ寄りってことを忘れるなよ。ワムウ寄りじゃなくてカーズ寄りなんだ」
「分かっています。カーズ様になつくようにあの手この手で仕向ければいいのですよね?お任せ下さい、カーズ様」
お前ホントにわかってんの?って言いたそうなカーズ様はキッチンをあとにした。残されたのは、裸エプロン風なワムウさんと私。ワムウさんはエプロンのポケットから一枚のメモ紙を取り出してこう言った。
「【ステップ1、接する機会を増やす】ですね。これは毎日一緒に過ごしてれば勝手にクリアするので飛ばしましょう。はい次、【ステップ2、一秒だけ見つめて視線をそらす】。おお、これは中々難しいですね!」
『どうやってするの?』
「そうですねぇ、私が手本を見せましょう」
ワムウさんは目の高さに合わせると、じっと見つめてきた。と思えば、視線を右へ移動。と思えば、左へ移動。と思えば、斜め上……斜め上!?な、なんだと!?斜め上戦法があるのか!?と、驚く私をよそに、斜め下へ。
【ステップ2、一秒だけ見つめて視線をそらす】が眼球運動であることは確からしいが、まさか斜め上&斜め下戦法があるだなんて思ってもみなかった。
やはり自分の考えじゃなく、他人の考えも聞いてみることで、新しい戦法が生まれるんだな。ベンキョーになったよ、ワムウさん。
「大体こんな感じでやればカーズ様をイチコロに出来ますよ。試しに私でやってみますか?」
『わかった!』
↑視線を右へ。
「おお、イイですね」
『ホント?』
↑視線を左へ。
「その調子、その調子」
↑ワムウさん、手拍子開始。
『えへへ〜、恋愛マスターになれる?』
↑視線を斜め上へ。
「なれます、なれます、イイ感じです」
↑パンパン、パンパン←手拍子
『あらよっと』
↑視線を下へ。
「『イエーイ(ノ゚Д゚)八(゚Д゚ )ノ』」
我、【ステップ2、一秒だけ見つめて視線をそらす】を習得したナリ。前回と違う所は斜め上&斜め下戦法が増えた所か。しかしこれでカーズ様もイチコロよ。
これでイケる、今回こそ【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】を習得出来る気がする!
そう気合いをいれて、カーズ様の元へ旅立ちました。
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『これほどまでに完璧なイメトレがあっただろうか!』
イメトレ(妄想)の出来の高さに私は泣いてしまった。斜め上&斜め下戦法って!イメトレだけで生まれていいシロモノじゃあないぞ!素晴らしき戦法!無敵!
このメモを誰かに見せてやりたい。そして斜め上&斜め下戦法の素晴らしさを語り合いたい。そうだ!ジョセフならきっとわかってくれる!
そう思った私はジョセフの部屋へ。バンッ!と扉を蹴破って、寝てるジョセフの上に飛び乗った。
『ジョセフ、聞いて!斜め上&斜め下戦法について語ろう!』
「……もー……今何時だと思ってんの?夜中の二時よ、二時。また明日遊んでやっから寝かせてくれよ、マジで、切実に!」
『見て!これ考えたの!』
「知らね」
布団を頭から被って逃げようとするジョセフの頭にメモ張をグリグリ押し付けると、観念したらしく、布団から出てきた。
スッゲー睨んでくるジョセフにニコニコ笑顔でメモ張を渡すと、死んだ魚のような目でそれを読んでくれた。
早く感想チョーダイってニコニコ笑顔のキラキラ眼差しでジョセフを見つめてたら、チラッとこっちを見て、スゥと視線を逸らした。
『え?何?』
「べっつに」
『何なの?気になるじゃん』
「気になんの?」
ジョセフは私と目を合わせてきた。うんと頷くと、フッと笑って口を開いた。と思えば、「やっぱ言わね」と、スゥと目を逸らした。
『何で気になるようなことするの!?』
「どのくらい気になる?」
『眠れなくなるほど気になる!』
「はい、今のが【ステップ2、一秒だけ見つめて視線をそらす】の手本です」
『え?』
「お前な、眼球運動はないぜ。斜め上&斜め下戦法とか関係ないの。まず眼球運動がナシなの。間違ってんのよ、お前」
『な、なんと!』
「まぁ、一人でよく考えたと思うよ。眼球運動とか普通は発想出来ねーし。エライエライ、ムダだったけど頑張ったな〜」
【ステップ2、一秒だけ見つめて視線をそらす】イコール眼球運動が間違ってたなんて思いもしなかったけど、ジョセフはよしよしと頭を撫でて褒めてくれた。
色々と間違ってたけど、これはこれでベンキョーになったと思おう。そうすれば、50年前の実験もムダじゃなかったと思えるもの。
「つーかよぉ、なにこの柱の男達のキャラ崩れ。ヤバくな〜い?これ思い出してバトル中に笑ったらどぉ〜しよぉ〜」
『でも、っぽいでしょ?ワムウさんとかこんなっぽいじゃん』
「お前のそーいうところ嫌いじゃないよ〜ん。はーい、じゃ、今日は一緒に寝ましょうね〜ン」
布団をガバッと開けてきたジョセフ。モソモソと中へ入って向き合うように寝そべるとムギュっと抱きついてきた。
「そうだ、明日もイメトレやって、俺ン所にメモ張持ってこいよ。俺がお前の間違いを正してやる」
『プークスクス、恋愛レベル初歩中の初歩のジョセフが間違いを正せると思えないんだけど〜』
「眼球運動に初歩中の初歩とか言われたかねーんだけど!?」
『あーハイハイ、よい子は寝る時間ですよ〜』
「起こしたのお前だよね!?」
ギャーギャーやかましくなりそうなジョセフの頭に手を伸ばしてヨシヨシしたら、スッゲー不服そうだけど大人しくなった。
お利口さんの意味を込めて、私から腕まくらをして、ムギューとジョセフの頭部を抱きしめたら、腰に腕を回してギュッとしてきた。
胸元に顔を埋めてるジョセフが可愛くてチュッと頭にキスを落とす。すると、「はぁ」と深いため息をはいた。
『ダメ?』
「べっつにぃ〜。ナケナシの理性で遊ばれるの慣れてるしぃ〜」
『じゃあ、いっか!人肌堪能しちゃお。この大きさ、あの人みたいでスッゴク落ち着く〜』
「ったく、お前ホント小悪魔だわ。【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】とかベンキョーしなくても十分魅力的ですよン」
『ありがとう。……ねぇ、ジョセフ、背中に万年筆刺さってるよ?痛くないの?』
「ぎゃあああああ!!!?」
ってことで、明日は、【ステップ3、会話をするときは見つめながら「うんうん」と相づちをうつ】と【ステップ4、彼を真似して同じ言動をしてみる】の習得を頑張りたいと思います。